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池尻成二事務所 〒178-0063 練馬区東大泉5-6-9 03-5933-0108 ikesan.office@gmail.com

練馬城址公園の「段階的整備」を考える (その3)

整備計画はなぜ後回しに?

としまえんの区域全体が、都自身の計画に基づいて10年間で事業化すべき「優先整備区域」に指定されている。その優先整備区域内に、なぜ30年もの長期にわたって民間の営利事業が認められるのか。ここには納得しがたい矛盾がある。そんな趣旨で、実は10月の決算特別委員会で質疑をしました。こんなやりとりです。

池尻成二 西武鉄道が今後どういう事業展開を考えるかということについて、基本的には民間の一事業者の判断ではありますが、しかし、行政が口を出すことではないと言われると、そうでもないところがあると私は思っております。
 といいますのも、ハリー・ポッターの開発計画が動いている石神井川北側も含めて、としまえんの22ヘクタール全体が、今後10年間で事業化すべき区域に指定されておりますので、もしこの覚書がなければ、少なくとも30年という長期にわたって、新しい開発計画を進めることはできなかったであろうと私は考えます。
最初の質問ですけれども、優先整備区域の中に、30年間にわたって事業化を先送りする広大なエリアを認めることは、「都市計画公園・緑地の整備方針」の原則を自ら反故にすることになるのではないかと私は大変心配しています。その点について、区長はどういうお考えで覚書を交わされたか、お聞かせください。

◎企画課長 今年1月に、都は、区と土地所有者である西武鉄道に対して、優先整備区域に指定している練馬城址公園の事業化に着手する意向を示しています。同時に、西武鉄道は東京都に対し、新たな事業展開も検討したい旨の考え方を示しました。
 これを受けまして、6月に、水とみどり、にぎわい、防災の拠点となる公園の実現を目標に、関係者が連携協力するために覚書を取り交わしたところでございます。
 区は、スタジオツアー施設も含めまして、水とみどり、にぎわい、防災の拠点となる機能の実現に向けて、地元自治体として区の意向を踏まえた取組がなされるように覚書を取り交わしたところでございます。
 それから、優先整備区域に指定されている地域に、30年間ハリー・ポッターの施設がということですが、区としましては、委員のようなご意見が当然出るだろうと想定しまして、東京都に対して、優先整備区域は外したらいかがかと意見は述べさせていただきました。
 東京都からは、大規模な都立公園の整備は時間をかけて段階的に行っている、練馬城址公園についても整備計画を策定し、段階的に整備を進め、スタジオツアー施設の区域を含めて、将来的に全体を公園として整備する考えであるということから、平成23年、前の整備方針と同様に、今回の改定においても優先整備区域を設定していると聞いています。

区も、私と同じ疑問、懸念を持ったんですね。「東京都に対して、優先整備区域は外したらいかがかと意見は述べさせていただきました」と。しかし、都は区の意見に耳を傾けなかったようです。区によれば、都の見解は
「練馬城址公園についても整備計画を策定し、段階的に整備を進め、スタジオツアー施設の区域を含めて、将来的に全体を公園として整備する考えである」
というものだったとのこと。
う~む…答えになっていない。30年も先までスタジオ施設が続くのであれば、10年を単位とした優先整備区域からは外した方がいいのではないかと聞かれているのに、「整備計画を作り、将来的に全体を公園として整備する」から構わないのだ、と。整備計画があれば、実際の整備は30年以上先であってもよいと言うのなら、優先整備区域を指定した意味はどこにあるのでしょう。もしこんな理屈を振りかざすのなら、優先整備区域を指定することを主たる眼目とした『整備方針』など不要になってしまいます。『整備方針』は、この10年間にどこからどのように手を付けるか、そのことを明確にするための行政計画なのですから。

しかも、都が練馬城址公園の整備計画を取りまとめる前に、いやいや整備計画の検討すら始まっていない段階で、スタジオ・ツァー計画は動き出してしまいました。時系列で整理してみると….

  • 2月13日 『都市計画公園・緑地の整備方針』改定案公表
  • 6月12日 『都市計画練馬城址公園の整備にかかる覚書』締結
  • 6月30日 東京都公園審議会に「都市計画練馬城址公園の整備計画について」を諮問
  • 7月16日 『都市計画公園・緑地の整備方針(改定)』公表
  • 8月18日 西武鉄道、ワーナーブラザーズなどが開発計画を発表
  • 8月21日 まちづくり条例に基づく開発計画の届出
  • 8月27日 まちづくり条例に基づく標識の設置
  • 9月7,8日 まちづくり条例に基づく説明会
  • 12月18日 まちづくり条例に基づく協議申請書を提出
  • 2021年1月 公園審議会で『整備計画』に関する中間まとめ(予定)

この経過を見ると、『覚書』の締結を受けて開発計画は一気呵成に走り出したこと、都の公園整備計画の策定作業は後追い、後付けで進んできたことは明らかです。

しかし、これでは 順番が、逆 です。

①としまえんエリアも含めた都市計画区域全体の整備計画があり、
②その計画の中で、段階的整備の具体的なスケジュールやそれぞれの段階ごとのエリアが明示され、
③整備計画に定められた区域、期間、位置づけに基づいてスタジオ施設が整備される
というのであれば、まだわかります。それでも、最終的にはスタジオ施設エリアは優先整備区域からは外すべきでしたが、この順番であれば少なくとも公園を整備する都の判断、意思、公的な責任は辛うじて担保されるでしょう。しかし、実際に進んだのは逆立ちした動きでした。つまり
①まず、西武やワーナーのスタジオ計画があり、
②このスタジオ計画の適地と必要な事業期間が先に確保され、
③このスタジオ計画を可能にするための覚書が用意され、
④最後にスタジオ計画と齟齬(そご)のない形で公園整備計画をとりまとめる
こういう流れになってしまったのです。

もう一度、言います。順番が、逆です。

いやいや、『覚書』で公園の機能も確認され、またスタジオ施設もその機能に資するよう約束している。こんな反論が返ってくるかもしれません。確かに、覚書には「緑と水、広域防災拠点及びにぎわいの機能」が公園整備の目標として記されています。そして、第6条にはこう書かれています。 
「丙、丁及び戊は、開発事業区域において、この覚書の締結以降、他の関係者と誠実に協力して前項に定める取組を行う際、第4条に定める機能の実現の一翼を担うことに配慮する。」
丙、丁、戊はそれぞれ西武鉄道、ワーナーブラザーズ、伊藤忠商事です。「前項に定める取り組み」とはスタジオツァー施設の整備のことです。

しかし、『覚書』に書かれた機能、目標はごくごく抽象的なものでしかありません。具体的にどこに、どういう施設を配置し、公園区域をどうゾーニングすればこれらの機能が最善な形で担保できるかはまさに整備計画で定められるべきことですが、その整備計画はまだありません。しかも、丙、丁、戊はそれらの機能の実現を「担う」のではなく、「担うことに配慮する」と約束しているだけです。
これでは、内容的にも形式的にも、スタジオ計画が公園整備の一翼を担うものとはなっていないことは否定しようがありません。公園整備の目標や機能、ひいては公園整備という公益よりも、民間の開発事業の利益や便宜を優先されていると、私は強く感じています。そのことを具体的に見ていきたいと思います。(続く)

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