Access
池尻成二事務所 〒178-0063 練馬区東大泉5-6-9 03-5933-0108 ikesan.office@gmail.com

学校「統廃合」、第二段階へ ~『第二次適正配置基本方針』~

前川区政の新しいビジョンや施設管理の計画とセットで、『第二次区立小・中学校および区立幼稚園の適正配置基本方針(素案)』も公表されています。今回の一連の行政計画の中で、もしかしたらもっとも区民生活への影響が大きいものかもしれません。
ここでは、小中学校の「統廃合」に焦点を当てて、基本方針の内容を確認してみます。

20年ぶりの『基本方針』

最初の『適正配置基本方針』は、2002年4月に策定されました。もう20年以上前になります。この基本方針に基づいて、2008年に「区立学校適正配置第一次実施計画」、12年に「区立幼稚園適正配置実施計画」、17年に「練馬区立光が丘第四中学校適正配置実施計画」が策定され、光が丘地区の8つの小学校が4つに統合され、光が丘第四中学校が廃止されました。光が丘地区の4つの区立幼稚園も、2園に統廃合されました。

この間の「適正配置」、実際には学校の統廃合は、光が丘地区を基本としたものでした。第一次基本方針を受けて取りとまめられた2008年の『第一次実施計画』の時点では、「過小規模」とされる小学校が14校、中学校が16校ありましたが、光が丘地区を除いては、統廃合による「適正配置」は行われないまま20年が過ぎました。1980年代に短期間に整備された大規模団地である光が丘地区には、区内でも特に急速に年小人口の減少が進み、また光が丘病院の建て替えなど統廃合後の跡地活用への思惑が交錯しており、こうした状況に対応することが優先されたからでもありますが、それだけではありません。統廃合が地域の関係者をはじめとして強い反発を受け、区議会も含めて激しく揺さぶられたからでもあります。光が丘四中では、歴代のPTA会長が連名で学校存続を求める事態となり、光が丘地区以外で初めて統廃合を企図した旭丘の小中一貫校の設置は、小竹小の統廃合方針を事実上、棚に上げざるを得ませんでした。

「統廃合」の加速化、全区展開へ

しかし、今回明らかになった第二次の基本方針は違います。これは、まさに本格的な統廃合方針、廃合の加速化と全区展開のための方針です。

■「統廃合」の対象範囲が広がった■

第二次基本方針では、統廃合の対象となる学校の範囲を、第一次よりもさらに広げました。

①標準の学校規模の見直し

【第一次基本方針】 小学校12~18学級 中学校11~18学級
【第二次基本方針】 小学校12~18学級 中学校12~18学級

中学校が過小規模とされる範囲が、これまでの10学級以下から11学級以下に引き上げられます。この新しい標準で「過小規模」となる学校は、現在の学級数に基づけば以下の各校になります。このうち、※印を付けた学校は11学級です。

小学校──旭丘、豊玉第二、春日、光が丘第八、大泉第一、橋戸
中学校──旭丘、豊玉、豊玉第二、北町※、練馬東、豊渓、光が丘第一、光が丘第二、石神井南、上石神井、 南が丘、大泉北、大泉学園桜、八坂

②児童・生徒数推計時点の見直し

学級規模は、当然ながら、将来の児童・生徒数に左右されます。この将来推計の考え方も、今回、大きく変更されました。

【第一次基本方針】 5年先の児童数を推計する東京都教育人口推計に基づいて算出
【第二次基本方針】 学校別の児童・生徒数に人口増減率を掛け合わせ、20 年後の学校規模を算出

人口増減率は、練馬区の人口推計に基づくことになりました。5年の単位でも大きく推計が外れることのある人口推計。20年後の確かな推計ができる保証などありませんが、この推計では、20年後には小学生年代で6.5%、中学生年代で8.0%、人口が減少する見込みとなっており、これを前提に学級数は推計されます。「過小規模」で統廃合の対象となる学校はさらに増えることになります。

各学校の学級数を推計する方法。各学級の定員は35人

③敷地面積不足も統廃合に
また、学級規模は「標準」を満たしていても、他の条件次第では統廃合の対象となる場合が出てきました。基本方針には、こう書かれています。

「敷地面積が狭い学校は、改築を行う際に十分な教育環境を確保できない恐れがあります。改築後に望ましい運動場面積を確保できない可能性のある学校も、適正配置を検討することとします」

「望ましい運動場面積」については、こんな図を示しています。直線走路とトラックがこの距離だけ確保できなければ、学級規模の標準は満たしていても、統廃合の対象になるということです。

■「統廃合」を、やりやすく■

学校の「標準規模」を変更し、前提となる児童・生徒数の推計方法を変えて、統廃合の対象となる学校の範囲を広げただけではありません。第一次の基本方針と比較すると、統廃合を進める際の手続きや条件についても、大きな変更が盛り込まれています。

①統合後の通学距離条件の緩和

学校の統廃合が行われると、当然、子どもたちの通学時間は全体としては伸びてしまいます。学校が遠くなる…これは、なかなか大きな課題です。この点についても、第二次基本方針は第一次の方針に重大な修正を加えました。

「これまで、教育委員会では通学距離の目安を小学校1km、中学校1.5km としていましたが、学区域が広い学校では目安の距離を超えて通学しているなど、各校で実態は大きく異なります。今後は、概ね30 分程度を目安とし、小学校1.5km、中学校2km 程度を目安とします。」

小学校で1kmが1.5kmに、50%も伸びてしまいました。小学校1年生が、1.5kmの距離を通う。通学に「概ね30分」かかってしまう。そう考えると、これは重大な改悪です。

②統廃合の方法の見直し

統廃合の方法、手続きについても、第一次基本方針と比べて重大な変更が加えられました。まず、第一次方針では2校の”対等合併”、そして統合新校の開設を原則としてきたのですが、今回の方針では、過小規模校の一方的な廃校という方法も公認されました。

【第一次基本方針】 原則として、統合の対象校をいずれも 廃止し、新しい名称の新校として設置します。
【第二次基本方針】 統合・再編は、以下のいずれかの方法により行い、概ね2年間の準備期間を設けたうえで実施します。
①統合対象としたいずれの学校も廃止し、新校を設置する方法
②対象の過小規模校のみを廃止し、近隣校の学区域に編入する方法

“対等合併”=新校開設というやり方の場合は、過小規模校でない方の学校も無くなる形になるため、その学校の関係者の理解・協力を得るために大きな努力が必要になります。新校開設も、学校名から組織の在り方まで、ゼロからの議論になるために大仕事です。過小規模校のみを廃止するやり方を取れば、こうした手続き上の負担は大きく減じられます。

もうひとつ、地味ですが、実際に統廃合を進める際には大きな意味を持つだろう変更も加えられました。第一次基本方針では、事実上、2校の”対等合併”だけが考えられていました。ところが、第二次の方針では、「統合・再編は1対1を原則としつつ、過小規模校については、最大2校への分散も検討する」とされています。過小規模とされた方の学校の子どもたちも保護者も、まとまった集団として新たな学校に移るのではなく、二つにバラバラにしてもよいということです。

子どもたちや保護者の姿は、見えているか

統廃合の対象となる学校の範囲を広げる。統廃合をやりやすくする。
第一次基本方針からの数多くの、そして重大な変更は、すべて統廃合をいかにしてやりやすくするかという視点から考えられたものであり、そこには子どもたち──とりわけ過小規模校として廃止・統合される側の学校の子どもたちや保護者・関係者の思いや立場への配慮、気遣いを見て取ることは困難です。いよいよ本格的に、いや強引なまでに、区は小中学校の統廃合に踏み出した──それが、今回の基本方針です。

『第二次適正配置基本方針』には、区民の反発や批判など意に介さないという、前川区政ならではの姿勢、意志が顔をのぞかせているように思えてなりません。しかし、小中学校の統廃合は、教育環境はどうあるべきかという点はもちろん、地域における学校の役割は何か、そして統廃合後にどんなまちの姿を描くのかといった深く広い問題も含め、大きな議論が避けがたいテーマです。子どもたちや保護者、地域の皆さんの意見や思いにじっくりと耳を傾けることは、とても大切なはずです。

前川区政三期目と向き合う一大焦点として、しっかりと取り組んで行きます。

コメント