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池尻成二事務所 〒178-0063 練馬区東大泉5-6-9 03-5933-0108 ikesan.office@gmail.com

石神井駅前が“ビル風”通りに(その5)

“ビル風”のシミュレーションの詳細は明らかにされておらず、これがどこまで公正で精度の高いものかも判断はできませんが、その結果が事業者=再開発組合にとっても、また練馬区にとっても大変厳しいものであったことは明らかです。

もう一つのシミュレーション

実は、以前にも一度、事業者(当時は再開発準備組合)は風のシミュレーションをしたことがあります。その結果は、2019年11月、再開発事業に関連する都市計画「素案」の説明会の場で紹介されています。
    →説明会での事業者の説明資料は こちら

再開発のための都市計画変更を進める際には、風の問題を避けて通ることはできない──区も事業者も、そう考えたのでしょうが、しかし、このとき示された結果もまた、衝撃的なものでした。青のランク2が、4か所からビル建設後には23か所に急増することになっていたからです(下図)。

許容範囲はランク2まで、さらに影響を減らすよう…

当然、この「素案」説明会やそれに続く「原案」説明会でも、”ビル風”に関する質問や意見が多く出されました。それに対して、区は当時、こんな見解を明らかにしています。

『原案説明会開催結果報告』2020.9 練馬区西部地域まちづくり課発行

読みづらいかもしれませんので、テキストに起こしておきます。

Q6 風環境に関すること
・区が独自に評価し、データ・評価結果をホームページに公表してほしい。
・今も風が強いが、再開発ビルができると更に強くなるのではないか。
・お年寄りや小学生に対し、風による影響をどのようにケアしようとしているか。
・風環境のランク2とは、どの程度の風が起こることを想定しているのか。

A6 
風環境については、関係法令による規制値が設けられていないため、村上評価や風工学研究所方式などの評価基準に基づき、影響を評価する方法が広く用いられています。本事業では、石神井測定局の風速データに基づき村上評価を用いてコンピューターによるシミュレーションを行っており、住宅街等で許容されるランク2に収まる結果となっています。
村上評価でいう「ランク2」とは、1日の最大瞬間風速が 10m/s (ごみが舞い上がる等) を超える日が年間 80日、15m/s (自転車が倒れる等)を超える日が年間 13日、20m/s (風に吹き飛ばされそうになる)を超える日が年間2日以下となる風環境を指します。
今後は、建築物や外構 (植栽など) の詳細計画の段階で検証するとともに、少しでも影響を減らす工夫をし、地域の皆様にわかりやすく説明するよう、準備組合を指導していきます。

この回答は、都市計画原案に対する正式な手続きの中でもまったくそのまま繰り返されているのですが、ここで区は「住宅街等で許容されるランク2に収まる」かどうかを、風環境として是認できるかどうかの目安として取り扱っています。そして、「建築物や外構 (植栽など) の詳細計画の段階で検証する」とも言っています。

今回、新たなシミュレーション結果を公表したのは、区の言う「詳細計画の段階で検証」という流れに沿ったものだということなります。しかし、それにしても、この「検証」は練馬区に対してとても大きな宿題を課すものとなってしまいました。
第一に、「住宅街等」では許容されないランク3のポイントがたくさん出てきてしまったのです。
第二に、なぜ都市計画を決める前の説明よりも悪くなってしまうようなシミュレーションが、いよいよ着工かという段階で出てきたのでしょうか。それは、都市計画を決める際の大切な前提が誤っていたということにはならないでしょうか。(続く)

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