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石神井駅前が“ビル風”通りに(その6=終)

ランク3の“ビル風”は、話が違う!

4年ほど前、再開発を進めるための都市計画の手続きを始めるにあたって、事業者は“ビル風”のシミュレーションをしました。そして、区はその結果について、ランク2に収まるから許容できるといい、それでも風への懸念を訴える声に対しては、「少しでも影響を減らす工夫」をすると語ってきました。
ところが、いよいよ解体工事が始まろうかという段階で行われた今回のシミュレーションでは、「住宅街」の風環境とはとうてい言えないランク3が出てきた、それも4か所も…これは、とても深刻な事態です。
そもそも、“ビル風”がランク2までに収まるということが、再開発を進めるにあたっての最低限の条件、事実上の前提となっていました。その条件、前提が崩れてしまったのです。

2019年のシミュレーションと、今回のシミュレーションを並べてみました。左が前回のシミュレーション結果、右が今回の工事説明会で示された結果です。2019年の時は青・ランク2だったポイントの中のいくつかは今回、緑のランク1になっていますが、なんといっても、黄色のランク3が4つも出てきてしまったのは決定的です。

左は2019年、都市計画素案説明会での資料。右が今回の工事説明会での資料

4年前の説明は何だったのでしょう。「住宅街等で許容される」範囲に収まるから、と不安を訴える区民を黙らせようとしてきた区の説明は、なんだったのでしょう。
“話が違う”とは、まさにこのことです。

「植栽」シミュレーションに救われた?

このままでよいわけはありません。そこで割り込んできたのが「植栽」です。

今回のシミュレーションでは、「建設前」「建設後(植栽なし)」とあわせて、「建設後(植栽反映)」というパターンが加わっています。それがこれです。

建物の南北の歩道部分に高さ6mを中心とした高木を30本ほども配置をし、それによって風の影響を抑えようというものです。その結果、この図によれば、黄色のランク3は消え、青のランク2も全部で10か所にまで減っています。植栽の効果あり、ということでしょうか。

もっとも、ビル建設前はランク2は3か所だけです。それが3倍以上に増えるのですから“ビル風”が深刻であることには変わりはありません。しかも、植栽が“ビル風”にどの程度の効果があるのか、私たちには検証の手立てもありません。
植えられるのは落葉樹なのか、常緑樹なのか。成木なのか、若木なのか。北側では幅2.5mしかない歩行者空間にどんな植栽枡(ます)ができるのか。それは、高木の成長に十分なのか。歩行者の安全に支障は出ないのか。これらの点も、きわめて断片的にしか説明されていません。まさか、高木に成長するまで5年も10年もかかるなどということはないのか。木々はしっかり根付き、期待通りの樹冠を広げてくれるのか。強風で樹木自体が育たない、あるいは枯死してしまうといった話も聞こえてきます。まして、線路側は日当たりのまったく期待できないビル北側です。

だいたい、再開発ビル周辺の植栽で、なぜ遠く離れた線路北側・ピアレスビル前のランク2のポイントが解消されるのでしょう?? いやいや、全く不思議な話です。植栽が本当にこれだけ“ビル風”を抑える効果があるのか。事業者も区も、詳しく、また明確に説明すべきです。

“ビル風”は、超高層ビルには付き物です。付き物であるだけでなく、超高層ビルが地域にもたらす負荷、危険性の最たるものとして、大きな社会問題となっています。その“ビル風”が、一気に深刻さを増す。植栽がなければ、とんでもない事態になる。植栽があっても、間違いなく深刻さは増す。そして、植栽の効果自体がどこまで信頼できるか、誰にも分らない──こんな状況で、再開発ビルの建設に入るのは間違っています。住民が、そして議会が納得できる説明を求めます。(終)

第5回

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