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池尻成二事務所 〒178-0063 練馬区東大泉5-6-9 03-5933-0108 ikesan.office@gmail.com

なぜ「補正予算」に反対したか ~一人でも、理由がある~

13日、長かった区議会第3回定例会が終わりました。報告すべきことはたくさんありそうですが、とりあえず昨日の本会議から。

最終日の本会議は、議案の議決が行われます。議案は、基本的には委員会に付託して審議されることになっており、本会議では、委員会の審査結果の報告通りに了承されるものが大半になります。ただ、それぞれの議員・会派が改めて議員全員の意志を確認しておくべきと判断したものについては、本会議で討論と採決が行われます。
昨日、討論・採決となったのは
2022年度決算(一般会計、国保・介護・後期高齢者医療特別会計)
・2023年度補正予算(一般会計)
・陳情 核兵器禁止条約、インボイス制度、美術館再整備など計6本

です。採決の結果は、表のとおりです。

自=自民、公=公明、立=立憲、共=共産、練=練馬会議、イ=インクル、維=維新、生=生活ネット、参=参政党、れ=れいわ

このうち、私は①2022年度決算、②一般会計補正予算には反対の立場で、また美術館の陳情には賛成の立場で、討論を行いました。採決の結果は、決算と補正予算は認定(可決)、陳情はすべて不採択(否決)。特に、補正予算は私以外の49人が賛成ということで、とても残念な結果になりました。まさか一人だけになるとは想定していなかったのですが、でも、私なりの信念を持っての反対です。討論の全文を掲載しますので、ぜひご覧ください。


反対の理由① 美術館「再整備」経費

一般会計補正予算に対し、反対の立場から討論を行います。

私が反対する理由は、大きく3つあります。
第一に、美術館再整備のための経費の、増額補正を行うものであることです。
補正予算案では、債務負担行為 (※1) の補正として、美術館再整備実施設計委託の増額が盛り込まれました。当初予算では2億4800万円余であったものを、2億7200万円近くまで引き上げるというものです。
補正の結果、実施設計の経費は、今年度支出分を加えると3億2千万円を超え、基本設計とあわせた設計総額は4憶6千万円にもなります。ちなみに、旭丘小中一貫校の設計費用は約2億2千万円です。これと比較すると、美術館は床面積では半分しかないのに、設計経費は倍以上。異例な額です。美術館再整備は、本当に“金食い虫”の事業です。
私は、美術館の再整備計画自体に反対です。債務負担の増額補正ではなく、むしろ債務負担から外すことこそが必要です。
設計費増額の理由は、設計労務単価 (※2) の引き上げです。建設業界における労働力のひっ迫や資材の高騰を見れば、今後、本体工事の経費が区の示した上限を大きく超える可能性は、極めて高いと言わざるを得ません。経費の面からも、改めて再整備の是非そのものが問われるべきであり、だからこそこの補正にはきっぱりと反対するものです。

※1 複数年度にわたって支出しなければならない経費を、あらかじめ予定しておくこと。美術館の実施設計委託は、2022年度と2023年度以降に分けて支払うことになっているため、総額が債務負担行為として定められる
※2 公共工事の経費の見積もりの基準として、国土交通省が定める単価。毎年2月に更新される。2023年度は全国全職種単純平均で前年度比5.2%の引き上げとなった

反対の理由② 給食費「無償化」、第一子を除外

補正予算に反対する第二の理由は、喫緊の課題であった第一子からの給食費「無償化」に踏み出す、今年度、最後のタイミングを失ったことです。
23区のうち練馬を除く22区が、第一子からの給食費「無償化」の方針を示しているといいます。機械的・一律に第一子だけを除外する区の施策は、子育て支援という点からも、生活支援という視点からも、とても理にかなったものとは言えません。
未確定であった財政調整交付金も、ようやく都区の協議が整い、間を置かず追加交付されます。その額も、区の試算では170億円。当初予算で区が想定していた交付額を、さらに90億円ほども上回る額です。
第一子からの「無償化」は、区議会の幅広い会派の共通の要求となっています。11月議会で新たな事業を組むことは時間的にも事実上、不可能です。財源が十分に見通せる以上、とりあえず基金を取り崩してでも、この9月補正で、年度後半の第一子からの無償化に踏み出すべきでした。

反対の理由③ 児童相談所区移管と区長

第三の理由は、都区の財政調整協議が整わず、9月の補正予算編成が大きな制約を受けたことに対する、区長の責任です。
財調協議における都区の対立点は、児童相談所区移管に伴う財源配分割合の見直しでした。
区長会は、都に対して「特別区における児童相談所の設置・運営が円滑に行えるよう」、財源移譲を求めています。しかし、前川区長は、こうした23区の統一的な方針を否定するような主張を、いまだに繰り返しています。
決算審査の中で、区長は「区児相はいずれ困難に直面する」。人材確保は「必ず行き詰まる」とあえて明言しました。もし区長の言う通りならば、区児相の定着・広がりを想定した財源配分など必要ないし、すべきでないということになるでしょう。区長会の副会長ともあろう人がこうした主張を公然と繰り返していれば、23区は足並みがそろっていないと見透かされるに決まっています。
区長、いつまでこうした発言を繰り返すのですか。そもそも、児相を設置した各区は、様々な困難に直面しながらも、実務的に、また意欲をもって課題の解決に取り組んでいます。児相は都にしか運営できないという信念を持つのはご自由ですが、しかし、おおやけの場で、他区の判断と努力を否定するようなことを言う資格は断じてありません。都区協議を速やかに打開するためにも、強く自省を求めます。

補正予算は、主として計数処理を目的とする場合、あるいは当初予算に対して評価できる見直しを趣旨とする場合には、賛成もしてきました。しかし、今回の補正は、区政の懸案に対する議会や区民の声に背を向けるものであり、とうてい賛成することはできません。美術館の問題も、給食費の問題も、多くの会派、議員の皆さんが取り上げてきた課題です。ともに、補正予算に反対の意思を示してくださることを期待し、反対討論とします。

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