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池尻成二事務所 〒178-0063 練馬区東大泉5-6-9 03-5933-0108 ikesan.office@gmail.com

「いじめ」とどう向き合うか ~大津市の経験と区議会の議論から~

11月3日の朝日新聞にこんな記事が掲載されていました。
『いじめ見逃しゼロへ「特命教員」 大津から各地で、働き過ぎ解消との両立も』
記事は、こんな一節から始まります。
「学校でのいじめ見逃しを防ごうと、いじめ対策の『特命教員』を置く動きが各地に広がっている。国が早期発見や報告を学校に求め、いじめ認知件数が最多を更新し続けるなか、先生の働き過ぎ解消との両立をめざす。」
     →記事全文は こちら から

この「特命教員」配置の取り組みは、滋賀県大津市から始まったとのこと。この記事を読んで、10年前のことを鮮やかに思い出しました。大津市では、2011年、中学2年生の男子がいじめが原因で自殺、全国的にも大きな関心を呼ぶ事件となります。事件を受けて教育委員会は当初は隠ぺいに動いてしまったのですが、厳しい社会的な批判に直面して姿勢を改め、市として≪大津市立中学校におけるいじめに関する第三者調査委員会≫を設置しました。委員会は翌々年、2013年1月に調査報告書を取りまとめます。報告書は、今も市の公式サイトに掲載されていますが、この報告書を受けた対応の中で生まれたのが「いじめ対策担当教員」でした。

『大津市の「いじめ対策担当教員」って?』 (毎日新聞2018.11.14)
→『大津市立中学校におけるいじめに関する第三者調査委員会の調査報告書』は こちら

大津市の事件は間もなくいじめ防止対策推進法へと結実していくのですが、報告書が公表された直後、2月の区議会予算特別委員会で、私はこの報告書のことを取り上げました。入手するのもずいぶん苦労しましたが、議会事務局にも尽力してもらい大津市から提供を受け、丹念に読み込んでの質疑でした。当時、私は生活者ネットの3人、そしてかとうぎ議員と計5人の共同会派を作っていました。会派の人数によって質問時間が決まる予算審査。5人の会派ではたぶん25分くらい時間があったと思います。この時間を全部使っての質疑は、私の議員生活の中でももっとも力の入ったもののひとつとなりました。
質疑は、日本語講師の待遇・身分の問題から入り、学校生活支援員、そして「いじめ」問題へと展開します。それらは一つのテーマ、「学校が痩(や)せている」という問題意識に発したものであり、それはまた、大津市の事件に発した「いじめ」対策の方向性とも関連していくテーマでもありました。少し長いですが、質疑の全文を再掲します。読んでいただければ嬉しいです。


◆池尻成二委員 よろしくお願いします。
 子どもたち、ひいてはこの国と社会の未来を育むべき学校がやせてきているのではないだろうかと、そういう問題意識で今日は伺いたいと思います。
 最初に、237ページ、帰国、外国籍児童生徒等指導経費から伺います。

日本語講師の報酬が半分に

 小中学校に在籍する外国籍の児童・生徒は、昨年4月時点で300人になるそうです。なかなかの数だと思います。このほかに、国籍は日本であっても異言語を母語とする子どもたちが数多くいると思われます。
 こうした子どもたちが区立の小中学校にスムーズに就学できるよう、日本語講師を派遣する事業を練馬区の教育委員会は長くやってくださっているわけです。
 資料をいただきました。2010年の決算では1,959万円だったのですが、翌2011年度の決算では823万円と半分以下に、急激に決算額が下がっております。
 いろいろ理由はあるのでしょうが、最も大きな理由は、講師の方への報酬単価がそれまで4,000円だったものを2,000円に引き下げた。いきなり半分ということ。
 まずお聞きしますが、何を根拠に、また何のために、この大幅な引き下げを行ったのかお聞かせください。

◎教育指導課長 この日本語指導というのも非常に重要な事業でございまして、そういった事業を展開する中で、非常にニーズが増えてきたということがございます。
 また、人的支援ということに関しては、この事業だけではなく、さまざまな人的支援をしております。
 どの事業も非常に必要ということで、全体の支援のバランスをとる中で、この事業については1回の額を2,000円にして事業展開をしたということでございます。

◆池尻成二委員 いろいろな意味で適宜見直しをしていくことそのものは否定しませんが、いきなり半分というのは、一体それまでの額は何だったのかも含めて、非常に乱暴です。
 この講師の皆さんが今後も熱意を持ち、しっかりとした準備をして仕事を続けられるように、報酬額については適切に見直しをしていただきたい。まずこれを要望したいと思います。
 教育要覧にこの事業の趣旨が書いてあります。これまでずっと、「日常会話ができ、平仮名が書ける程度の指導を行っています」という記載だったのですが、今年度の教育要覧から、この部分の記載が削除されております。
 削除の意味をお聞かせください。

◎教育指導課長 要覧の中では削除になっておりますが、基本的には、この事業は以前から継続しておりまして、簡単な日常会話、あるいは日本の生活習慣や文化等、簡単な文章の読み書きができるように指導するということで、現在も行っているということでございます。

◆池尻成二委員 それは驚くべきご答弁なのですが。
 要覧の記載を意識的に変えることがあるのに、そういう説明ですか。私は、もう少し違った意味合いを込めて20年来続いてきた記載を変えられたのだと思っていたのですが。
 実は、この日本語講師の派遣事業は、日常会話ができ、平仮名が書ける程度の指導では、とても学校に適応できないという課題は長く指摘されてきました。
 現在の派遣形態は、基本的には40回で、回数も一定の制限がある。目的としても、初歩的な日本語のレベルという枠があったわけですが、本当に小中学生含めて適応を促す、学校の受け入れを進めるためには、回数なり派遣のあり方、それから、これまでは原則取り出しですが、取り出しだけではなく、いわゆる入り込みの指導、そういった指導形態についても工夫が必要ではないかというのは、現場の講師の方から、私もたびたび聞いております。
 そういう意味で、ぜひ事業の充実を考えていただきたい。
 昨年、うちの会派の一般質問に対して、教育長からは、「児童・生徒、一人ひとりの学校生活への適応を第一に考え、派遣回数を増やすなど柔軟に運用」していくというご答弁をいただいた。そういう意味で、私は教育要覧の記載の変更は意味があると思っておりましたので、ぜひ事業の充実を念頭に検証していっていただきたい。まずこの点は要望したいと思います。

特別支援教育と「財政の制約」

 それから、239ページ、学校生活支援員経費。
 これも同じ、「人」の問題です。特別支援教育を支える人材ということで、直接の支援が必要なお子さんへの支援だけではなく、配慮が必要な子どもがいるクラスあるいは学級集団を改善していくというか、そういう意味でも大きな役割があるわけです。非常勤と臨時の方がいらっしゃる。
 配付された補正の予算で見ますと、臨時の方の賃金が、今年度、当初の5,940万円から2,530万円と、ほぼ5割方アップしております。
 この臨時の学校生活支援員の賃金増の理由をお聞かせください。

◎学務課長 学校生活支援員ですが、非常勤職員が年度の途中で退職したときには、当然それを補うために臨時職員の配置を原則として行っております。
 また、年度当初には見られなかった学級の様子、障害を持ったお子さんの新たな転入、また通常級から特別支援学級への転学等で、特別支援学級の児童・生徒数増という、さまざまな理由がございます。
 そういった中で、私どもは、真に必要な支援ということで、学校生活支援については精査をしながら対応してきたところでございます。それがその結果ということで、ご理解願えればと思います。

◆池尻成二委員 今のご答弁ですと、現場の必要を精査しながら配置してきた結果の補正ということです。
 ところが、これだけの補正をしたのですが、新年度の当初予算では、また補正前の額に戻ってしまっているのです。先ほど、他の会派からは、しっかり配置していただいているという評価もあったのですが、今の学務課長のご説明だと、現場の必要に応えて補正を組んでまで臨時職員を配置してきた。にもかかわらず、新年度でまた予算をもとに戻すというのは、私には理解できません。
 なぜきちんと財政的な措置をしなかったのか、お聞かせいただければと思います。

◎学務課長 当初予算では平成24年度と同等ということで、今の委員のご指摘かと思いますが、子どもたちの状況は年ごとに異なっております。また、学級の状態も、その時々の人数ですとか、障害をお持ちのお子さんの構成等によって変わってきます。これは特別支援学級においても通常級についても同様だと思っております。
 私どもは、学校生活支援員については、子どもたち一人ひとりの教育ニーズに応えるということで、これまでも充実を図り、適正な対応を図ってまいりました。一方で、厳しい財政状況もございます。そういった中で、学校にも理解をいただき、また必要な支援をしていくということで対応を図ってまいりました。
 今年度の補正予算の増と、来年度の当初予算の金額に隔たりがあるというご指摘でございますが、私どもは適正に対応を行ってきているということでご理解願えればと思います。

◆池尻成二委員 先ほどの日本語指導もそうですが、財政的な配慮の中で適切な人の配置がなかなか進んでいないという面があるだろうと私は感じます。そのこと自身は大変残念です。
 実は、今二つ取り上げたのは、どちらも非常勤、あるいは講師の方ですが、正規の職員が、今どんどん減っております。給食調理や用務の委託化が進み、事務職員も非常勤化がどんどん進められまして、区費の正規職員が学校に一人もいないという学校も次々生まれていく事態になっております。
 都費の正規職員について見ても、ベテランが相次いで離職するうえに、短期間での異動を繰り返す中で、果たして、人の面から見て、このまま学校が多様な課題を抱えた子どもたちとしっかり向き合えるのか、私は大変不安を感じます。
 「学校がやせてきている」と私が最初に申し上げたのは、人の問題だけではなくて、ほかの面でもそういう面があろうと思います。

 251ページ、学校営繕費。
 学校施設の日常的な補修や小規模工事に充てられる経費は、一部は工事請負費として各学校に配当され、残りは教育委員会に留保されて小破修繕経費として支出されております。子どもたちにとっては、日々の教育環境の、いわば肌ざわりを決める大切な予算です。
 予算ですが、資料をいただきました。2009年度の決算で、小中学校あわせて7億円を超えていたものが、2013年度の予算では5億7,000万円強。4年の間に1億2,000万円も減っております。なぜこんなに急激に減ったのか、これで現場に影響はないのか。
 簡潔にお答えいただければと思います。

◎施設給食課長 学校に配当している予算、あるいは課に留保している小破修繕の予算でございますが、学校に配当している金額は、確かに財政状況を見ながら減額させていただいている部分はございます。それでも学校の状況に応じまして、使う学校、使わない学校がございますので、年明けごろに毎年、再配分という形をさせていただいて、必要な工事については実施できるようにしているところでございます。

◆池尻成二委員 人にしても、今の修繕にしても、適宜、ぜひ財政的な手当をしていただきたいということはお願いしたいのです。
 人も減っていく、日常的な支出も減らすと、そうしたことに追われる中で、学校がどうなっていくのかという姿が見えないという実感を、どうしても持ちます。そういう中で、深刻ないじめの問題にしても、どうやって対応していくのか、なかなか重い課題だろうと思います。

「いじめ」とどう向き合うか

238ページのいじめ防止事業経費に関連して伺います。
 いじめとどう向き合うか、この問題が国を挙げての課題として意識されることになった直接のきっかけは、大津市のいじめ自殺事件です。
 教育長は、大津市の第三者調査委員会がまとめた報告書をお読みになったでしょうか。
 また、教育委員会としてこの事件をどう受けとめ、また何が一番の課題として意識されたかをお聞かせいただけますか。

大津市の「報告書」

◎教育指導課長 大変膨大な資料でございまして、私どもも手に入れて、読ませていただきました。
 学校現場でいじめというのは、この数年で始まったことではなくて、以前から、大きな事件が起きるたびに、学校でどうする、教育委員会でどうするということで対応を続けてきたところでございます。
 ただ、今回の事件を見ますと、改めて、子どもは、本当に心配をかけたくない人には言わない、例えば、学校の担任の先生、あるいは親にも言わない。本当のことは言えない。そういった状況が記録の中からも見えてまいります。
 そういったことを踏まえまして、本区においても、まず教員にそういう目を持って指導に当たることを徹底してきているところでございます。

◆池尻成二委員 私も事務局にご尽力いただいて、報告書を取り寄せて、見ました。
 一人の少年がみずから死を選ぶまでに追いつめられていく過程というのは、大変すさまじい、ショッキングな中身がたくさんあります。
 と同時に、その少年の死を真剣に受けとめようとする調査委員会の決意や視野の広さについて、私は新鮮な驚きを感じました。
 報告書は二つの姿勢を特に重視しております。
 一つは、徹底して事実から出発すること。特に、加害したとされる生徒の視点をしっかりと受けとめることを当初から柱の一つに据えて、丁寧な事実の掘り起こしを行っております。これは大変な努力です。
 二つ目は、徹底して教育的であろうとしていると、私には見えます。
 つまり、いじめを犯罪として、あるいは懲罰の課題としてだけでなく、加害少年も含めた、関係する子どもたちの再生と気づきのプロセスとして捉え返そうとする姿勢が、報告書の随所に私には読み取れると感じられてなりません。

いじめる側といじめられる側

 大津市のケースでは、いじめの事実を直視し、あるいは制止することができなかった教員や学校長の対応について、しばしば指摘されてきましたが、それだけではない。
 実は、読んでおりますと、いじめが深刻化するのに先立って、クラスが荒れて、学級集団が既に崩壊していた。被害者が加害者ととても親しいグループに属しており、最後まで加害者を突き放すことができなかった。
 こうした事実を知りますと、いじめは直接の当事者の加害・被害の関係だけでは、防いだり、あるいは理解することもなかなか難しいということを痛感いたします。
 教育委員会は、いじめ問題対策方針をまとめられました。
 この中で、いじめる側に立った子どもに対してどう向き合うか。あるいは、いじめを防ぐために、いじめる側に回らないようにするために、どんな指導が必要とお考えか、お聞かせください。

◎教育指導課長 当然、まずは被害の側に寄り添って対応することが前提にあるわけですが、当然、加害の側の指導も大事なことであります。
 もちろんケース・バイ・ケースでありますが、加害の児童・生徒に対して、その本人、あるいは保護者への指導をしていくということが基本にはあると思います。
 ただ、どうしても暴力行為がある場合には、また家庭との協力が得られない場合には、警察との連携も当然あろうかと思います。
 しかし、そういった中でも忘れてはならないのは、今おっしゃいましたように、この加害の児童・生徒が次に向かって歩み出せるように、そういったことが大事だと思います。
 もう一つは、子どもたちの加害と被害の関係だけではなく、学級あるいは学年の集団をどうつくるかという指導がとても大事なことだと思います。子どもたちの集団づくりをいじめの防止の根底に置いて、これからは取り組んでいかなければいけないと考えているところでございます。

◆池尻成二委員 丁寧なご答弁をありがとうございます。
 実は、対策方針を読みまして、率直に申し上げて、この方針を見る限りは、懲罰的な対応と道徳的な意識づけという側面の対応にどうしても傾いているような印象を持ちます。
 例えば、「いじめる側の幼児・児童・生徒への実効性のある指導」の第1に書いてあるのは、毅然とした指導の徹底。内容としては、「全教職員が毅然とした態度で一丸となって臨み、状況が改善しない場合には別室指導等にて個別に働きかけを行う。また暴行や恐喝の事例に関しては警察と連携して対応します。」ということです。
 これは今、教育指導課長がおっしゃったことの一つです。
 私も、こういう対応が必要でないと申し上げるつもりはありませんが、教育者として、あるいは学校として、加害をする側に回った子どもに対してどう向き合うかという点では、もっと幅広い視点が必要だろうと。
 実は、これも報告書の中にあるのですが、象徴的な内容なので、少し長くなりますが、ご紹介します。
 この大津の当該校は、道徳教育実践研究事業の推進指定校になっていたそうです。いじめのない学校づくりを宣言していた。このことに報告書は触れております。

 この道徳実践が全く無意味であったとは思えないが、本件のようないじめの事案を防がなかったという事実を教員たちは真摯に受け入れなければならない。いじめの解決は決して容易なものではない。社会は、ますます競争原理と効率を求める方向に進んでおり、大人たちの多くはこの原理に浸った結果、職場でのパワハラ・セクハラが社会問題となり、あるいは従業員に対するメンタルケアが緊急の課題となっている。
 子どもたちも、こうした社会の価値原理から無縁であることはできず、また学校間格差、受験競争の中で、子どもたちもストレスを受けている。現代の子どものいじめは、社会のあり方と根深いところでつながっているがゆえに、いじめ発生の土壌が存在するとともに、いじめ解決の困難さが理解される。
 この点について、教員に自覚してほしい。道徳教育や命の教育の限界についても認識を持ち、むしろ学校の現場で教員が一丸となった、さまざまな創造的な実践こそが必要なのではないかと考える。」

 こうやって、報告書がそこで書いているのは、まさに教育指導課長がおっしゃった、学級集団づくりです。学級集団の意味についても書いております。ぜひお聞きいただきたい。

 集団づくりとは、一人ひとり違った個性や生活を持った子どもたちを丁寧に「つないでいく」ことである。また集団づくりの目標は、子どもたちに集団の中での他者とのかかわりを通じて、自分という存在に自信を持ち、自己肯定感を育むことである。
 そして、人間への信頼感を育て、「友達が好き」「友達とかかわることが楽しい」と言えるような、「人とかかわる力」「人とつながる力」を身につけさせ、対等な関係を結ぶ力を育てることが重要である。
 集団が形成されていく過程においては、けんかあり、トラブルあり、泣きも涙も笑いもある。その一つひとつを教員が丁寧に拾い上げ、学級の集団に返しながら子どもたちにしっかりと考えさせていく、この営みこそが教育であろう。

 直接のいじめの対応をどうするかという議論と、いじめを本当になくしていく、いじめのない学級をつくっていくという課題は、両方非常にしっかりと考えていかなければいけません。
 今、私が紹介したこの報告書のような考え方は、先ほど少し触れられましたが、改めて、どのように受けとめられるかお聞かせいただければと思います。

◎教育指導課長 こういった大きな事件の記録等々を読んで、一番大事にしなければいけない、あるいは考えなければいけないのは、子どもの教育は理念で終わってはいけないということだと思います。
 理念はもちろん大事ですが、では、実際に実生活の中で学んだことをどう生かしていくのか。そういう意味では、先ほど、ソーシャルスキルトレーニングというお話もしました。
 最近の子どもたちの状況を見ますと、核家族化の中でさまざまな人と触れ合う機会がどうしても少ない。そういう人とのかかわり方を家庭教育に任せるだけではなく、学校教育が引っ張っていかなければいけない部分があります。
 こういったことも含めて、学校教育の中で、理念はもちろん大事にしつつ、実学的というのでしょうか、実践的な部分についても学校教育で力を入れていかなければいけないと考えております。

「教員の多忙化」解消こそ緊急の課題

◆池尻成二委員 今の報告書の問題意識は、実は具体的な提言なり投げかけの素地になっております。
 報告書は提言としてもまとまっているのですが、中身を読みますと、さまざまな具体的な提起、あるいは課題の表明があります。
 例えば、こういうことが書いてあります。今、まさに教育指導課長がおっしゃったように、理念としてだけでなく、実際に実践として、実学として人とのかかわり合いを学んでいくということは非常に大事なことですが、そのために欠かすことのできない条件はいろいろあるわけです。この報告書が真っ先に言っているのはこういうことです。

 教員の多忙化は克服すべき緊急の課題である。彼らの負担を軽減して、子どもたちと向き合えるようにするための改革を最優先に進めるべきである。

 たびたび言われたことでありますが、私は、これはある意味で基本的な真理だろうと思います。学校の先生が非常に多忙である、いろいろな意味で多忙である。その中で、こういったいじめに対する対応のおくれ、あるいはいじめを防ぐことができないという事態が生まれていることは、間接的・直接的にいろんな形で指摘されていることで、こういう意味で、私は教員の配置、あるいは教員も含めた学校の人的配置を、改めて腰を据えて考えるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

◎教育指導課長 基本には、教員が子どもたちにきちんと向き合うことができるような環境をつくるということは、とても大事なことだと思います。
 学校の中でいえば、学校組織というものが20年前からあまり変わっていない部分があります。そういう組織のつくり方、あるいは会議の持ち方、それから、これは教育委員会の問題でもありますが、教員に必要以上に調査が行っていないか、こういう部分の見直しも大事だと思います。
 そういったことを含めて、教育委員会としてできることとして、先ほど来話題になっています人的支援ということで、練馬区では学力向上支援、生活支援員、あるいは心のふれあい相談員について、各学校に人を配置して、教員のフォローをしているということでございます。
 今後もそういった人的支援のバランスをとりながら、学校教育のフォローをしていきたいと考えております。

◆池尻成二委員 今日、私が最初からいくつか取り上げたテーマは、すべてここにかかわっていると私は思っているのですが、確かに、多様な人的な支援ということを教育委員会なりに工夫なさっていることは、よく承知しております。
 ただ他方で、先ほどの学校生活支援員の問題にしても、日本語講師の問題にしても、本当に現場からの声、現場からの要請と、財政的フレームとのぶつかりの中で、いつもある意味で右往左往なさっているという実感が、どうしてもしてしまいます。
 本当に必要なところに必要な人をつけるという腰を据えた構えがなかなかできていないという印象は避けられません。
 しかも、肝心な正規の職員が本当にいなくなっている事態は、とても深刻だと思います。非常勤の職員や、あるいはボランティアの方も含めて、いろんな人がかかわればかかわるほど、核になる正規の職員はどうしても必要だと思うのですが、その正規の職員がいなくなってしまう。
 これは、私は学校経営、学校管理の基本のところで、教育委員会は少し立ち位置を間違えているのではないか思えてなりません。学校における人の配置をどうすべきかということについては、ぜひ改めて考えていただきたい。
 そのほか、報告書には、例えばこういうことが書いてあります。スクールカウンセラー全校配置というご答弁が先ほどありましたが、スクールカウンセラーについても、「学校からの独立性をしっかり担保する必要がある。これが今回の教訓だ」ということが書いてあります。それから、「学校外に子どもみずからが救済を求めることができる第三者機関が是が非でも必要である」ということも書いてある。
 私は、子どもが亡くなるという本当に痛ましい事件から、これだけ真剣に格闘をして教訓を得ようとして努力をなさっているわけですから、ぜひ練馬区の教育委員会も、こういう努力を共有して、これまでの区のあり方、学校のあり方を考えていただきたい。
 もちろん、財源がない中で何もかもはできません。それはよく承知しております。
 ただ、私は、もしかしたら新しい施設や立派な設備を求めることをしばらく我慢してでも、何よりも人をしっかりつけて、それよりも何よりも、これからの学校をどうつくるかというデザインを教育委員会にしっかり示していただきたい。
 この点で、ぜひ今後の練馬区の学校のあり方を教育長からお聞きして、終わりたいと思います。

◎教育総務課長 これまでも、人的な部分、それから設備的な部分につきまして、さまざまにいただいたところでございます。
 私どもといたしましても、教育現場での課題は十分認識しているところでございます。限られた財源の中で、あるべき教育の姿を今後も模索していきたいと考えております。

最後まで教育長自身の言葉が聞けなかったのはとても残念なことでしたが、「いじめ」そして学校教育が抱える構造的な課題に対する基本的な視座はしっかりと示すことができました。読み返してみて、よい質疑だったと思います。

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