Access
池尻成二事務所 〒178-0063 練馬区東大泉5-6-9 03-5933-0108 ikesan.office@gmail.com

懸念と疑問 ~としまえん後の「ハリー・ポッター」施設~

としまえん閉園を前に、跡地に整備するという“ハリー・ポッターのスタジオ・ツァー”計画が一気に動き出そうとしています。今日27日から、周辺の地域に『としまえん関連施設解体工事ならびに土地利用計画について』という資料が配布され、9月に入れば説明会も開催されるとのこと。この説明会は練馬区のまちづくり条例で定められた手続きで、説明会のあと区との開発協議に入り、協議を終えれば次は建物の建築という流れです。何ともあわただしい。

地域に配布されるものと同様の資料を使った区議会議員向けの情報提供の場が、今週の月曜日に議長の呼びかけで持たれました。話を一通り聞き、そして資料を見て、私がまず感じたのは期待よりも懸念と疑問でした。まず、資料を基にどんな計画なのかをそのままお伝えします。

①事業者について
● 事業主 伊藤忠商事株式会社、西武鉄道株式会社(土地所有者)
●運営者 ワーナーブラザーズジャパン合同会社
②事業区域について
●現在のとしまえんの区域のうち、石神井川の北側
●開発区域面積 117,665.10㎡(約12ha)。そのうちスタジオ・ツァー施設の建設敷地は約9ha
③スタジオ・ツァー施設の概要について
●本体建物 建築面積約30,000㎡。高さ19m、2階建て
●立体駐車場(メイン・サブの2棟) 建築面積約8,000㎡。高さ14m、2階建て
④工事工程について
●解体工事の工期 2020年9月15日~2021年4月30日(予定)
●スタジオ・ツァー整備工事 2021年3月1日~2023年2月末日(予定)

「スタジオ・ツァー」という言葉は聞き慣れないものですが、要するに映画を撮影したスタジオを再現した空間をめぐる施設ということのようです。今はイギリスにしかないとのことで、説明に立ったワーナーブラザーズの方の説明にも力が入っていました。このスタジオ・ツァー自体については受け止めも評価も様々だと思いますし、ここでは触れません。問題は、としまえん跡地、都の練馬城址公園の優先整備区域の中で、こうした内容、こうしたやり方でこの計画を進めることをどう考えるかです。

資料の中には、スタジオ・ツァー施設の配置図があります。こんな図面です。

私は、この図を見て正直、愕然としました。頭に浮かんだ懸念、疑問を思いつくままに書いておきます。

  1. 石神井川の北側、現在のとしまえんの利用区域全体を使った計画。としまえん全体の面積は22haなので事業区域はほぼ半分を占める。現在のとしまえん西口の西側、上の図の白い一角はスタジオ・ツァー施設としては使わないようだが、それでも9ha、全体の4割を占めることに。残った区域は10~12ha程度。石神井公園の半分、光が丘公園の6分の1にしかならない。これで、防災の中枢拠点としての機能、さらには区・区議会からも強く出されている緑や水辺環境、賑わいの拠点といった複合的な公園機能は確保できるのか
  2. 本来なら10年以内に着手すべき優先整備区域に指定し、緊急性の高い大規模防災公園として整備すると都は言ってきたのに、30年間にもわたってこれだけ広大なエリアを公園整備から切り離すことは都市計画事業の在り方として正しいのか
  3. そもそも、東京都が公園整備計画を取りまとめる作業を始めたばかりであり、公園全体のゾーニング、関連すると思われる防災施設の機能や規模、形状、石神井川の再整備の考え方などが全く整理も決定もされていない段階で、なぜこのように区域を確定し、詳細な施設配置等に踏み込んだ計画が公にされるのか。東京都や練馬区は、この計画を了承しているのか
  4. スタジオ・ツァー整備予定区域では、既存の遊具・設備等は原則的に全部撤去され、整備に支障のある樹木等も取り除かれる。事業者は、緑に囲まれたスタジオ・ツァーを整備すると話しているが、現存の緑はどの程度保全できるのか
  5. 図を見ると、石神井川ぎりぎりまで施設が迫っているが、河川整備やそれと合わせた水辺環境の創出といったコンセプトの実現は担保されるのか
  6. 現在のとしまえんの遊具施設はすべて解体・撤去される。区議会からもあらためて存続の要望を出しているカルーセル・エルドラドはどうするのか

まだまだいろいろ出てくるかもしれません。いや、ぜひどんどん議論をし疑問を出してもらいたい。ことは、幅広い区民の思い出とともにあったとしまえんの「次」に関わること。そして、都立公園の整備という、公共性が極めて高い事業の在り方に関わることです。
説明会は、条例に基づく近隣住民を対象に行われることになります。大規模な建築物かつ集客施設ということで、近隣住民の範囲は敷地境界から100mまでとかなり広くはなっています。しかし、決して「近隣」だけの問題にとどめるわけにはいきません。区民全体、議会全体の課題、関心事として、このスタジオツァー計画についてもしっかりと検証をしていきたいものです。

コメント

  1. Saburou より:

    カルーセルエルドラドが注目を浴びていますが、入口左側にそびえる古城(木馬の会事務所)も注目すべき建造物です。ほぼ開園当初からあり、模擬城とはいえ、既に94年。当時の「遊園地」に求められたものを物語る遺構でもあります。耐震補強できれば、テーマパークとも共存できそうですし。
    『日本近代建築総覧』(1980年技報堂出版、1983年新版)にも日銀グラウンドのクラブハウス(解体されて現存せず)とともに掲載されています。
    樹々も一日にして成らず。あの豊かな緑をどう継承していくか、注目しています。