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大泉第二中をどうする? ~その6~

用途地域の変更、建築規制の緩和を前提にして初めて必要な校舎面積が確保できる――こういう展開を、教育委員会や土木部の所管が予想していたのかどうかはわかりません。しかし、とにかく、それしかないというのが「報告書」の柱です。校庭を分断する道路は学校にとっては疫病神のようなものだったのですが、その道路に、用途地域の緩和というもう一つの疫病神を連れてきてもらわなければ、学校が再建できない…こんな話になってしまったのです。

もっとも、用途地域の緩和は「疫病神」なんかじゃない、大歓迎だという声もあるかもしれません。
もともと135,232両路線の整備とともに沿道の用途地域を緩和することは、区の考え方としてありました。例えば、区がいつも持ち出す「都市計画マスタープラン」では、135号沿いは沿道利用地区に色分けされているのですが、これは「幹線道路の沿道で、土地の高度利用を進め、商業・業務施設の利用を進める地区」とされています。「沿道環境に配慮しつつ、中層の集合住宅や沿道型の商業・業務施設の利用を増進」する地区です。同じマスタープランによれば、「一般的に低層は1. ~3階建、中層は4~7階建程度、高層はそれを超え る階数の建物をいう」というのが用語の定義ですから、135号沿道に「利用を増進する」とされる「中層の集合住宅」とは4~7階、高さにして15m~20mが目安でしょう。実際に、同じような都市計画道路の沿道では17mまで高さが緩和されています。

しかし、これは、135や232号計画地の現在の住環境、自然環境からすれば、劇的と言ってよい変化を意味します。考えてみてください、まったく現道がないところに幅16mの道路が忽然と姿を現し、さらにその両側それぞれ20mの幅で高さ17mのマンションや商業施設が立ち並ぶ…地域の中でこうした町の将来像がしっかりと合意されていたとはとうてい思えません。大泉学園駅の周辺ならともかく、そこから南、富士街道を挟んだエリアは練馬区内でももっとも緑や水辺、おちついた住環境に恵まれた地域でもあるからです。
先に触れたように、都が示している用途地域指定の指針では、道路沿道の路線式用途地域の設定は地区計画を策定することが前提になります。地区計画とは「都市計画法に基づき、比較的小規模な地区を対象に、それぞれの区域の特性にふさわしい良好な環境の各街区を整備し、保全するために建築物の形態、公共施設の配置などを定める都市計画」です(練馬区ホームページより)。しかし、135,232沿道に地区計画をかけることについては、そもそものエリアの設定すらできておらず、内容だけでなく手続き的にもこの地域に地区計画をかけるための合意形成はほとんど進んでいないのが現状です。2005年から、区は富士街道までの「大泉学園駅南側地区」を対象に地域に入り、事業化に先立って「まちづくりのあり方について検討」するとアナウンスはしてきましたが、その中でも「地区計画」策定の方針は示されておらず、長期計画実施計画にも道路事業しか掲載されていません。大二中エリアを含む地区計画を前提にして道路整備を進めるつもりは、少なくともこれまでは区にはなかったのでしょう。

大二中の再建は、道路沿道の用途地域緩和を含むまちづくりについての住民合意と地区計画の策定という、たいへん大きな課題を抱え込むことになってしまいました。道路は自明の前提、あとは教育委員会で知恵を出せ。そんな話で進んできた大二中の再建問題は、元々の道路整備の必要性に加え、ここにきて「まちづくりの道筋はつくのかどうか?」という容易ならざるハードルを区(区長)に課す羽目に陥ってしまったのです。(続く)

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