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顧みられぬ教育環境 ~大二中「再建」問題で説明会~

光が丘病院問題の記事が続いていますが、並行して、さまざまな問題が区政、区議会の場で動いています。その一つが、大泉第二中問題です。2本の都市計画道路が校庭を分断するという例の話、教育委員会が昨年度、1000万円近い予算を投じて行った「都市計画道路と学校施設の整備に関する検討業務」の報告書がまとまったことはすでに書きましたが、この報告書についての説明会が昨日、大二中で開催されました。扇風機も回らない暑い体育館には、地域の皆さんが100人はいらっしゃっていたでしょうか。短い時間でしたが、とても活発な質疑が行われました。
中でも、質疑の中で私が注目したのは二人の課長の立ち位置のズレ、とでもいうべきものです。説明会には、教育委員会の施設給食課長と土木部の計画課長が出席していました。二人の課長は、「道路は必要」と言う点では見事に一致しており、「教育委員会は主体性はないのか」「道路の是非も含め、きちんと検討すべきだ」という厳しい批判を浴びていたのですが、しかし、いったいどのようにして学校と道路を折り合わせるのか、“共存”させるのかという点では、2人の言い分はずいぶんと違いました。
例えば施設給食課長は、報告書がこれしかないという案(報告書のA’またはB’案――詳しくはこちらを)に対して、「これ以外のもっといい解決がないかも検討している」と繰り返し明言していました。この報告書はあくまで「一つのシミュレーション」でしかない、教育委員会としては何も決めていない、「もっといい解決」を探している、と。この「もっといい解決」がいったいどういうものなのか、結局、最後まで聞けずじまいでしたが、しかしはっきりしたことがあります。それは、教育委員会にとってこの報告書の示した方向は好ましいものではない、“better”な案を見つけるべきものだということです。
まぁ、いくらかでも子どもの教育環境を大切に思う視点を持っていれば、報告書の案は問題だらけであることはすぐわかります。いくらなんでもこんな案で「問題ない」と言うとしたら、少なくとも教育委員会としては落第です。しかし、驚いたのは計画課長の発言でした。課長はこう言ったのです。

 現時点で、(道路整備によって)安全を確保しながら、かつ教育環境も整備できる案ということで、最善のものが提案されたと受け止めております。

私は、わが耳を疑いました。「最善のもの」…???!!! いや、聞き違いであってほしい…録音していた方がいたので、レコーダーをお借りして聞いてみましたが、やはり「最善のもの」と言っています。もしこれが聞き間違いでないらば、土木部は(道路サイドは)、この報告書の案で行け、と判断しているということになります。「もっといい解決」を探そうとする教育委員会と、「これが最善」という土木部。このギャップ、矛盾はなかなかに深刻です。長期計画でスケジュールまで枠をはめられ、しかも「道路は必要」とみずから大きな声で宣言しなければならない立場に立たされ、土木部はこれで行け、と突っついてくる。さて、教育委員会はいったいどうする?
質疑の最後に、この問題に取り組んできた会の代表の方が「報告書は差し戻しにせよ!」と強く主張しましたが、教育委員会はともかく、土木部の中ではこの報告書は間違いなく“生きて”います。地域の住環境や自然環境、そして何よりも子どもたちの教育環境を守るという立場から、報告書とそのプランを反故にするために、今は正念場であるとも言えそうです。

そのほか、説明会ではこんな話も出ました。
■計画課長:学芸大通りは区としても歩道部分を拡幅する計画がある ➠ 住民:だったら、そちらを優先してやったらどうか
■施設給食課長:校庭は現在、10639㎡ ➠ 住民:大二中の“売り”は部活。校庭を7600㎡(A’案)にまで削るなんてとんでもない!
■計画課長:都市計画道路は平成15年に「再評価」した ➠ 住民:その内容を明らかにせよ
■住民:渡り廊下でしか校庭に行けないのに、地震の時はどうやって避難するのか ➠ 施設給食課長:校舎の間の232号予定地(テニスコートとして暫定利用)を避難場所にするかもしれない

いずれも、とても大切な論点に触れるものです。また、今回の調査が土木部からの依頼を受けて行われたことも明らかになりました。結局、内容、手続きいずれから見ても、始めから終わりまで道路サイドのイニシアティブで事態が動かされているのです。教育と教育環境に対する教育委員会、そして練馬区民の見識と判断が鋭く問われています。

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