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池尻成二事務所 〒178-0063 練馬区東大泉5-6-9 03-5933-0108 ikesan.office@gmail.com

ハリー・ポッター施設への意見書 ~大店法届出にあたって~

としまえんの跡地に建設中の、ハリー・ポッターのスタジオ・ツァー施設。開設に向けたいくつかの法定手続きのおそらくは最後のものとして、大規模小売店舗立地法(大店立地法)に基づく公告縦覧が行われています。大店立地法は、大規模な小売店舗が地域環境に大きな影響を及ぼす可能性があることを踏まえ、事業化にあたり様々な配慮事項を定めるとともに、地元自治体や住民などの意見を求め、地域との調整・協議を図るための手続きを定めたものです。スタジオ・ツァー施設については、11月に説明会が行われ、今は関係者の意見募集の期間になります。私も意見書を提出しましたので、報告します。

(仮称)スタジオツアー計画に対する意見ならびに理由について

大規模小売店舗立地法にもとづき、表記計画事業について意見ならびにその理由を記させて頂きます。


意見

1. 早宮中央通り(練馬主要区道20号線)を来退店経路に設定することは再考すべきである
2. 防災対策への協力について具体的に示すべきである

理由
  1. について

『大規模小売店舗を設置する者が配慮すべき事項に関する指針』(以下『指針』)は、二-1-(1)-⑥として、適切な来退店経路の設定等を求めています。

事業者である伊藤忠商事株式会社は、2022年10月17日に開催された説明会において、説明会資料をもとに、想定される来退店経路の説明を行いました。それによると、目白通り・千川通り~豊島園通りの南側経路に加え、環状八号線~補助172号線~早宮中央通り練馬主要区道20号線)を利用する北側からの経路を用いることとされています。

当該事業は大型バスを利用した観光客の誘致、とりわけインバウンド需要に経営上も大きなウェイトを置いており、その来退店経路をどのように設定するかは、交通管理上も、また地域への影響という点でも大きな課題でした。この点は、練馬区まちづくり条例に基づく住民協議の中でもしばしば指摘されてきたところですが、早宮中央通りを経路として設定するという説明は今回、初めてなされたものです。
しかし、同通りの今回、来退店経路とされた区間は、幅員はもっとも狭いところでは6.7mしかなく(練馬区の資料による)、もちろん車道と分離された歩道は一切ありません。路線バスも通っていないはずです。大型バスが日常的に往来することはそもそも無理・無茶な道路です。

早宮中央通り

当該事業地への来退店にあたっては、豊島園通り北側からの右折入場は認められないという交通管理者の従来からの見解が伝えられていました。もっぱら南側方向の来退店経路のみで交通処理を行うことが困難である中で、事業者は早宮中央通りを経由する経路を持ち出してきたものと思われます。しかし、同区道はこの間、練馬区まちづくり条例等の協議・説明の中でもまったく示されていなかった経路であり、きわめて唐突であるだけでなく、地域の生活環境への大きな影響が懸念されます。
『指針』では、「駐車場への経路が住宅地の生活道路や沿道に療養施設、社会福祉施設等が設置されている道路等静穏が要求されるような道路や歩道と車道が明確に区分されていない学校等への登下校ルートとなる道路や狭隘な道路を回避するようにすること」とされています。この『指針』の趣旨に照らしても、少なくとも早宮中央通りについては来退店経路から外すべきです。

なお、説明会の場で、事業者は早宮中央通りについてこのような説明を行っています。

「バス、大型車両は基本的には豊島園通りを右折して南下して帰ってもらう。早宮中央通りをまったく通らないかというとそうではないが、積極的にそこを通ってくれということではない。」

実際にどの程度の台数が通ると想定しているかについては、説明会の場では具体的な数字は示されませんでした。しかし、届出書本書を確認したところ、来場車両全体の31%が北側・早宮中央通りを経由するという想定をしていることがわかりました。大型・小型の内訳が示されていないのも問題ですが、北側経路を利用する車両は、常磐道、東北道、外環道を経由するものが多いと思われ、その中には少なくない観光バスが含まれるはずです。少なくとも「基本的に南側を通る」という説明会での説明は届け出内容とは大きく異なっていると言わざるを得ません。遺憾です。

  1. について

説明会の場では、「店舗または施設として、広域防災拠点の機能にどのように貢献、協力することを想定しているか。」という質問をさせて頂きましたが、これに対する事業者側の回答は「大店立地法の説明会とは違った内容になるので別途」という無責任なものでした。『指針』によれば、「防災・防犯対策への協力」は事業者が配慮すべき項目の一つとされ、次のように記載されています。

「大規模小売店舗は生活空間から一定の範囲に設置され、かつ比較的広大な敷地を有する施設であることから、設置者は、大規模小売店舗の所在する地方公共団体から災害時の避難場所として駐車場等敷地の一部の使用若しくは店舗で扱っている範囲の物資の緊急時における提供を行うための協定等について締結要請があった場合、必要な協力を行うこととする。」

しかも、当該施設については、練馬城址公園の未開園部分で事業を行うこととなった経過から、開設にあたって事業者が東京都、練馬区などと『覚書』を交わし、その中で事業者は練馬城址公園が果たすべき広域防災拠点としての機能の実現に協力することを約束しています。
とりわけ広域避難場所としての機能を確保するために、(仮称)スタジオツアー施設の協力が欠かせないことは、東京都も練馬区も繰り返し認めてきたところです。

さらに驚いたことに、事業者の届け出書類を確認したところ、防災協定等の締結は「有」とされ、その内容として「避難場所の指定」が明記されています。
防災機能は、当該事業の前提ともなるきわめて重要なテーマであり、届け出書ではここまで記載しているにもかかわらず、なぜ説明会の場での説明を拒んだのか、理解しがたいことです。先の交通経路の件とあわせ、住民説明の姿勢が問われる問題であると指摘しておきます。

広域防災拠点としての機能に対する協力、貢献が具体的にどのような内容になり、またどのような形で担保されるか、事業者は責任をもって説明すべきです。

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