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『覚書』から『協定書』へ ~練馬城址公園~ (中)

『都市計画練馬城址公園に関連する事業の進め方について(協議)』で枠組みを定めたのち、東京都と西武鉄道は『施行協定書』と『令和3年度協定書』を交わし、あわせて物件補償の条件を確認しました。それらはお互いに深く関連しているので、その内容を整理しながら紹介していきます。

協定期間は2022年度まで

協定の対象となる期間は、2023年3月31日まで。つまり、今年度と来年度、二か年間に関する協定です。公園整備計画との関連で言えば、当初開園エリア(A-Cゾーン)の開園まではこの協定に沿って事業を進める、そんな意味合いになっています。この間は土地の権原の整理が動いている期間であり、通常の公園整備のように都が自ら責任を負い、請負契約等を結んで整備するという形が取れない中で『協定』事業というやり方を取ったということかと思われます。

土地の取得・貸借は協議中

公園整備の大前提は、土地の権原(土地を利活用するための根拠となる権限)の取得です。原則は土地の購入。ただ、土地を借りて整備するということもないわけではありません。『施行協定書』によると、練馬城址公園の事業認可区域の土地の整理はこうなっています。

  1. 当初開園エリア(2023年度開園)については、「都市計画道路補助第133号線と重複する区域を除き、都が貴社と別途、用地取得の協議を行い、それ以外の区域の公園整備(設計)着手までに用地取得を行う。」
  2. 「当初開園を予定する区域以外の区域の土地についても、都が着実な用地取得に努める。」
  3. 「撤去・整備工事着手から都が用地取得するまでの間、別途土地使用貸借契約を締結し、以降は当初開園を予定する区域以外に存する建築物等は都が管理のうえ撤去する。」
  4. 「当初開園を予定する区域と都市計画道路補助第133号線が重複する区域については、都市計画道路事業により用地取得するまでの間、別途土地使用貸借契約を締結する。」

わかりにくいですね。でも、頑張って整理してみます。まず、①「当初開園エリア」については土地貸借契約を交わし、次の整備エリアの設計に着手するまでに土地を購入する。次のエリアというのは、前の記事で紹介した2029(R11)年度に概成予定のエリア、Dゾーンです。そして、②当初開園エリア以外の部分の土地については「着実な用地取得」に努める。いつまでに、どのような手順で取得していくかは『協定』の中には書き込まれていません。最後に、事業区域の西北端、都市計画道路補助133号線と練馬城址公園の都市計画が重なっているエリアについては、とりあえず都が土地を借りることとする。こんな流れです。現時点で「当初開園エリア」に関する土地貸借契約は交わされていないとのことです。

プールや“古城”は?

土地の取り扱いと並んで大切な問題が、旧としまえんの建物・工作物等をどうするかということです。スタジオツアー施設のエリアでは、としまえんの思い出いっぱいの遊具や施設はすでに撤去されてしまいましたが、都が公園を整備することになっている川の南側はまだ基本的にそのままです。「公園整備のためには更地にする」——これが都の立場ですが、小さなところでは正門や入検札ゲート、そして“古城”やプールまで、まだ解体撤去はされていません。これらの施設はどうするのか?
『都市計画練馬城址公園の用地取得に伴う物件補償について』では、こう整理されました。

  1. 「当初開園エリア」にある施設のうち、西北のAゾーンにある倉庫、としまえん正門周辺のBゾーンにある検札1棟、改札8棟、店舗1棟は、土地の貸借契約締結前に西武鉄道が解体撤去する。都は、解体撤去に関する費に加えてこれら11棟の「物件移転補償費」を支払う
  2. 1.に書いた建物等を除く施設、具体的にはプールや“古城”などについては、「都が引き渡しを受けたうえで管理及び撤去」する

この協定の整理に基づいて、としまえんの入園ゲートを形作っていた建物類は、土地の貸借契約を交わす以前に西武鉄道が解体撤去を行うことになりました。前の記事に掲載した写真の通り、10月20日から正門の周囲に工事用の仮囲いを設置するという掲示が出されましたが、これはその解体撤去工事の一部だと思われます。
一方、プールや“古城”など当初開園以外のエリアにある建物等は、土地の貸借契約が交わされたのちに東京都の管理に移り、そののち都の責任において解体撤去に当たることになっています。都の担当は「年度内にせめて解体の準備工事に入りたい、それまでに何とか貸借契約を」と言っていますが、少なくともいったんは都の管理下に入るということは大きなポイントです。プールにしても“古城”にしても、存続を残す声はなお根強くあります。どちらも整備計画には位置づけがなされませんでしたが、みずからの管理のもとに移る以上、改めて都は解体撤去の適否、要否について判断をすることになります。

解体・整備は誰がやるのか

解体・撤去が済めば、次は新たな公園の設計と整備です。『協定書』は、この整備・設計についても大切なことを約束しています。それは、「当初開園エリア」の整備・設計を西武鉄道に随意で、つまりあらかじめ特定して「委託」するという約束です。
都が西武鉄道に対して「委託」する事業はこのように書かれています(『令和3年度協定書』)。

  1. 実施計画案の作成
  2. 対象範囲の施設の解体撤去設計
  3. 対象範囲の公園整備、河川管理用通路整備設計
  4. 対象範囲の施設の解体撤去工事
  5. 対象範囲の公園整備、河川管理用通路整備工事
  6. 対象範囲の維持管理
  7. 対象範囲の各種調査

1の実施計画案は、何とまだ協議中。これがないのに設計や工事だけ進んていくというのはどう考えても変ですが…。2と4の解体関係では、「対象範囲」は今回の事業認可区域全域です。ただ、上で見たように当初開園エリアとその他では解体の主体が違っています。当初開園部分は、西武鉄道がみずから解体する。その他のエリアは、都が「みずから管理、撤去」する。ただし、実際は一つの設計、一連の解体工事として実施することになっています。土地の貸借契約の前後で、解体対象の物件の取り扱いが異なってくるということです。

3と5の公園・河川管理通路の整備と設計については、西武鉄道に委託するのは当初開園エリアのみとなっています。その後のエリアに関する整備・設計は、西武鉄道にお願いすると決まっているわけではない――これが都の所管の説明です。 (続く)

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