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池尻成二事務所 〒178-0063 練馬区東大泉5-6-9 03-5933-0108 ikesan.office@gmail.com

『覚書』から『協定書』へ ~練馬城址公園~ (上)

旧としまえん正門には「仮囲い」設置の掲示が出され、いよいよ入園ゲートなどの解体撤去へ。これも「協定」の一部

2020年8月に閉園したとしまえん跡地では、石神井川の北側ほぼ全域約9haを使ってハリー・ポッターのスタジオツアー施設の建設工事が続いています。一方、それ以外のエリアを範囲とした都立公園「練馬城址公園」の整備事業は5月に事業認可が出され、事業期間は2034(R16)年3月31日までとなっています。都がまとめた整備計画では2023(R5)年度に「当初開園」、2029(R11)年度に「概成」とされており、『庭の湯』の部分がその後、整備されるという流れです。整備計画で示されたイメージはこんな感じです。このうちBエリアの右側、白く抜けている部分が『庭の湯』のあるエリアで、事業認可の次点ではこの部分も公園として整備されることになりました。

東京都の『都市計画公園・緑地の整備方針』では、本来なら10年以内に旧としまえんの全域で公園整備に着手するはずでした。しかし、昨年6月に交わされた『都市計画練馬城址公園の整備にかかる覚書』で「運営開始日からの30年間」に渡るスタジオツアー施設の開設運営が認められ、このエリアで都立公園の整備が始まるのは2050年を過ぎた、遠い将来の話になってしまいました。
この『覚書』については、その正当性、適法性という視点から検証を求める都議会陳情が出されており、その議論の成り行きをしっかり見守りたいと思っていますが、都は『覚書』を受けて具体的にどのように練馬城址公園を整備していくか、公園予定地の現在の土地所有者である西武鉄道と協議をしてきました。その取りまとめとして、今年の7月にはいくつかの協定書が交わされています。その内容を少し紹介していきます。まずは簡単に経過を振り返ってみます。

  • 2020.6.12 『都市計画練馬城址公園の整備にかかる覚書』
  • 2021.9.7 スタジオツアー施設の、練馬区まちづくり条例に基づく説明会
  • 2021.5.12 スタジオツアー施設の建築確認
  • 2021.5.20 国土交通大臣が練馬城址公園整備事業を認可(告示は6月8日)
  • 2021.6.22 東京都建設局長名で『都市計画練馬城址公園に関連する事業の進め方について(協議)』を提示、25日、西武鉄道社長名で応諾の回答
  • 2021.6.30 都建設局公園緑地部長名で『都市計画練馬城址公園の用地取得に伴う物件補償について(照会)』。7月6日、西武鉄道より確認した旨の回答
  • 2021.7.7 都市計画練馬城址公開事業に関する施行協定書ならびに令和3年度協定書の締結

このうち今年6月22日から7月にかけてやり取りされた文書を、開示請求で入手しました。実務的な協議自体はもっと早くから進められていたはずですが、事業認可を待って正式な協定等の形にしたということだろうと思われます。
協議の核心は①土地の購入もしくは貸借など、公園整備の前提となる土地の権原(土地を利活用するための根拠となる権限)をどう取得していくか、②既存施設の解体から公園整備を進める過程で土地所有者である西武鉄道はどのように関与すべきか、③それぞれにかかわる費用の負担、支払いの枠組みをどうするか、の3つです。まず、大枠を決めた最初の文書『都市計画練馬城址公園に関連する事業の進め方について(協議)』の全文を採録しておきます。

都市計画練馬城址公園に関連する事業の進め方について(協議)

3建公計第124号
令和3年6月22日
西武鉄道株式会社
代表取締役社長 喜多村樹美男 様

東京都 建設局長
中島 高志

 時下、ますます御清祥のこととお喜び申し上げます。
 また、日頃から東京都の公園行政に御協力を賜り、感謝申し上げます。
 都市計画練馬城址公園(以下、「本公園」という)の整備につきましては、令和2年6月12日付「都市計画練馬城址公園の整備にかかる覚書」に基づき、関係者間で相互に連携、協力し、進めることとなっております。
 都は本公園の早期整備、開園に向け、令和3年6月8日に貴社所有の土地の一部において事業認可を取得いたしました。
 つきましては、別紙の事業範囲における本公園の関連事業について、下記のとおり協議いたします。

1.都市計画練馬城址公園の整備
 早期の整備、開園に向け、貴社と連携して既存施設の撤去設計・工事や公園の新規整備の設計・工事等を進めるため、別途協定を締結する。
2.都市計画練馬城址公園の土地の取扱い
 事業範囲内の貴社所有地において、当初開園を予定する区域(別紙のとおり)の土地については、都市計画道路補助第133号線と重複する区域を除き、都が貴社と別途、用地取得の協議を行い、それ以外の区域の公園整備(設計)着手までに用地取得を行う。当初開園を予定する区域以外の区域の土地についても、都が着実な用地取得に努める。
 撤去・整備工事着手から都が用地取得するまでの間、別途土地使用貸借契約を締結し、以降は当初開園を予定する区域以外に存する建築物等は都が管理のうえ撤去する。
3.都市計画河川第5号石神井川の整備
 都市計画河川第5号石神井川左岸の河川管理用通路については、当初開園を予定する区域と隣接し、公園と一体的に整備する必要があり、貴社と連携して整備を行うため、別途協定を締結する(1と同協定)。
4.都市計画道路補助第133号線の土地の取扱い
 当初開園を予定する区域と都市計画道路補助第133号線が重複する区域については、都市計画道路事業により用地取得するまでの間、別途土地使用貸借契約を締結する。

添付された図面も採録しておきます。 (続く)

■細い線で囲まれたエリアが都市計画区域の全体
■太い線で囲まれたエリア「事業範囲」は、今回、事業認可を受けた練馬城址公園の整備区域。
■「当初開園を予定する区域」は、2023(R5)年度までに開園する区域
■石神井川北側の薄い網掛けの部分は河川管理用の敷地(国有地)

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