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問われる事業の“公益性” ~石神井公園駅前「再開発」(続)~

石神井庁舎の“移転”が前提

事業計画には、保留床の処分金として約134億円が見込まれています。「保留床」というのは、旧来の地権者が持っている権利を超えて、再開発事業で新たに生み出される「床」のことです。市街地再開発事業では、さまざまな規制緩和なども活用して大幅に建物の容積を増すのが一般的です。この追加された床を販売しその収益で建築費をねん出する、これが基本のパターンになります。今回の再開発で言えば、おおむね3階以上はこの保留床ということになります。

保留床をだれが買うのか。最大かつ大半の購入者はディベロッパー、今回で言えば参加組合員として事業主体に加わった野村不動産ということになります。野村不動産は、再開発で生まれる大量の保留床を購入し、それを分譲マンションとして再販売することで収益を上げていくことになります。
しかし、保留床の購入者は野村不動産だけではありません。実は、練馬区も大どころの床購入者として予定されています。事業計画では、建物の3~5階は「公益施設」が入ることになっています。この公益施設については、練馬区が石神井庁舎の主要な機能移転させる意志を表明しており、その経費は約30億円と見積もられています。

再開発事業全体で見ると、この30億円はきわめて重要な意味を持っています。3~5階という、住宅としてもオフィスとしても決して販売しやすいとは言えないフロアを、しかも安定性抜群の行政が購入してくれるのです。事業者からすればありがたい話です。
しかし、30億円もの税金を使ってこの再開発ビルに石神井庁舎の機能を移すことが、本当に区民にとって好ましく必要なことかはまったく別の問題です。この点もあらためて触れますが、再開発事業が石神井庁舎の“移転”を不可欠の前提としていること、そしてこの庁舎の“移転”については、区議会での手続きはまったく済んでいないことをここでは確認をしておきます。

区議選の大争点に

石神井公園駅南の再開発事業は、これまで主として「まちづくり」の視点からさまざまな議論が繰り広げられてきました。しかし、事業計画が明らかとなった今、財政上の問題——130億円近い税金を投入しなければ成り立たない事業であることの是非が大きな争点となっています。補助金の支出も、石神井庁舎の扱いも、本格的な議論はこれからです。来春の区議会議員選挙での大きな争点の一つであり、ぜひともそうしていかなければなりません。

石神井庁舎。区は大半の機能を再開発ビルに移そうとしている

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