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「気候危機」、感じてる? ~点検・前川『アクションプラン』⑥~

地球環境の「危機」にどう向き合うか。それが最優先の政治課題の一つであることは、もう誰も否定しないでしょう。地球環境の異変、危機の最たる表れである「温暖化」に対しては、CO2をはじめとした温暖化ガスの削減が急務となり、2050年までに“脱炭素”(カーボンニュートラル)を実現すること、その決定的な一歩として2030年までにはCO2排出量を半分にするための努力を加速化することが、昨年末に開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)でも再確認されたところです。

“脱炭素”への挑戦

今や“脱炭素”は、人類と地球に対する共通の責務として、世界でも日本でも政治の大目標として掲げられるようになりました。環境省によると、2050年のCO2排出実質ゼロを表明したいわゆるゼロカーボンシティは、今年1月31日現在で534自治体(40都道府県、319市、15特別区、134町、26村)に上るそうです。
東京都は2019年12月、「気候危機行動宣言」として『ゼロエミッション東京戦略』を取りまとめました。政府も昨年10月、当時の菅総理が「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言。ようやく重い腰を上げました。さぁ、真剣に、精力的に、地球の未来のための努力を!

「ゼロカーボンシティ」を宣言した自治体数の推移 (環境省サイトより)
で、練馬区は??

ところで、東京23区中、ゼロカーボンシティを宣言しているのは15区とのこと。残念ながら、練馬区はその中には入っていません。練馬区は、“脱炭素”に向けて何をするのか。どう向き合うのか。実は、前川区長の『アクションプラン』改定作業は、まさにその試金石だったと言えます。

『アクションプラン』改定素案では、21ある「戦略計画」のうち二つが修正されたこと、そのうちの一つが“脱炭素”に関連したものであることは先に紹介しました。改定前の戦略計画 15『住宅都市にふさわしい⾃⽴分散型エネルギー社会へ』が、素案では『脱炭素社会の実現に向けた総合的な環境施策の展開』に変更されたのです。
「総合的な環境施策の展開」…立派なタイトルですが、しかし、中身は本当に寒々しい。挙げられた事業は次の通りです。

  • 新たな環境基本計画の策定
  • 再生可能エネルギー・省エネルギー設備の設置補助の充実
  • 区民・事業者等との協働による環境教育・啓発の推進
  • 地域コジェネレーションの導入・運用
  • 超高効率燃料電池導入効果検証
  • 公用車の電動化の拡大
  • 環境に配慮した電力調達の拡大
  • 区立施設へ太陽光発電設備と蓄電池をセットで導入
  • 不燃ごみ資源化
  • プラスチック資源の分別回収・資源化

10ある事業のうち、新規と言えるのは「超高効率燃料電池導入効果検証」くらい。あとは、既存の事業の継続・充実です。『環境基本計画』の改定が盛り込まれたのはよいことですが、しかし、現在の基本計画は2020年3月に策定されたばかりです。そのときは、もう東京都は「ゼロエミッション」を大々的に打ち出していましたが、2020年された今の『環境基本計画』は地球環境の将来への危機感も、脱炭素への決意も伝わらないものになってしまいました。

都が『ゼロエミッション東京戦略』を公表した直後、練馬区の『環境基本計画』の策定作業が最終的な詰めに入っていた2020年2月、本会議の一般質問で、私は「気候危機」に対する区の基本的な認識と姿勢を問いました。質疑と環境部長の答弁を採録します。

池尻成二 現在、日本政府は2030年度のCO2削減目標を、2013年度比で26.0%減とする目標を掲げています。しかし、この数字はCOP25の議論のレベルからははるかにおくれており、しかも、この目標自体、達成は危うい状況です。練馬区も国と同等の削減目標を掲げていますが、このままではこの目標の到達も容易ではないと思われます。東京都は昨年12月「ゼロエミッション東京戦略~気候危機に立ち向かう行動宣言~」を公表しました。2050年にCO2排出実質ゼロに貢献するゼロエミッション東京を実現する、東京の脱炭素化の出発点、そう位置づけられた計画です。
 日本政府ならびにそれに準じた練馬区の温暖化効果ガス削減計画の進捗状況、そして東京都のゼロエミッション戦略に対する評価をお聞かせください。また、区としても目標設定を見直し、2050年のCO2排出ゼロに向けて気候非常事態宣言を発するなど、取り組みを抜本的に強化すべきと考えますが、いかがでしょうか
 また、都は東京戦略の一環としてプラスチック削減プログラムを掲げ、その中で、廃プラスチック焼却量40%削減の目標を打ち出しました。都内の廃棄物由来の温室効果ガス排出量は175万トン、そのうち23区清掃工場の排出量は130万トンを超えていますが、その多くはプラスチック類の焼却によるものと思われます。都は、プラスチックの焼却、熱回収からの転換の方向を明言しています。安易な焼却、中途半端な熱回収からの脱却は、今や温暖化対策としても急務です。
 一般廃棄物の中間処理におけるプラスチック焼却を大胆に縮小していくための目標を、策定中の一部事務組合の次期処理計画に盛り込むよう、区としても働きかけるべきではないでしょうか。お答えください。

環境部長 ゼロエミッション東京戦略は、エネルギー、インフラ、資源循環の各分野における温室効果ガス排出量の削減と気候変動対策を総合的に展開するものと認識しています。区の環境基本計画2020(素案)においても、エネルギー、みどり、清掃リサイクル、地域環境の4分野の施策を総合的に推進します。温暖化対策に加え、新たに気候変動対策を計画に位置づけました。現在掲げている目標の達成に向け、区民、事業者の皆様とともに、地道に着実に取り組んでまいります。
 次に、廃プラスチックの焼却についてです。
 23区は、一般廃棄物の最終処分量を削減し、最終処分場の延命を図るために検討を重ね、平成17年に廃プラの発生抑制と資源化の推進を前提に、20年度からのサーマルリサイクルの実施を決定しました。現在、清掃一部事務組合の一般廃棄物処理基本計画の改定に向け、清掃一組、23区、都が議論を行っています。廃プラの焼却に係る方針決定に向けては、23区全体の合意が必要であり、丁寧な議論を重ねてまいります。

なんと臆病な、腰の引けた答弁か…。「2050年の排出ゼロの目標を掲げよう」と問うと、「現在掲げている目標」でよい、それを「地道に着実に」取り組んでいく、としか言わない。「廃プラ焼却をなくしていこう」と問うと、 「23区の合意が必要」と逃げる。その後の国際的な議論の流れ、そして国内各自治体間の動向を見れば、この練馬区の姿勢がどれほど後ろ向きで時代の趨勢に遅れているものであったかは今や明らかです。

「気候非常事態宣言」と「気候市民会議」を!

『アクションプラン』の改定は、残り計画期間2年間に限ったものです。このわずかな期間に新たに盛り込むことのできる事業は、もともとそう多くはないかもしれません。しかし、”脱炭素”への強い意志と区・区民をあげて地球環境のために行動する決意を示すことはいくらでもできたはずです。少なくとも、「気候非常事態宣言」と「気候市民会議」はぜひとも盛り込んでほしかった。前者は、遅ればせながら、練馬区がこの問題に真剣に取り組む意思を固めたことの証左として。そして後者は、社会の仕組みから個人のライフスタイルまで、広範な変化と努力を必須とするこの取組に区民の大胆で主体的な参加を得るために欠かせないツールとして。

とにかく、前川区政の「環境危機」問題への取り組み、対応は一貫して消極的で保守的なものであり続けてきました。改定『アクションプラン』でも、その本質は全く変わりません。それは、前川区政の致命的な弱点、欠陥の一つです。
明日の地球と次の世代のために行動しようとしない練馬区政に、ピリオドを。

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