Access
池尻成二事務所 〒178-0063 練馬区東大泉5-6-9 03-5933-0108 ikesan.office@gmail.com

定まらない跡利用の方針 ~石神井庁舎をどうする? その2 ~

前川区政と「再開発」が流れを変えた

前川区政の誕生と石神井公園駅南口西地区の「再開発」は、見事に符合しながら進んできました。改めて時系列で確認をしておきます。

2014年3月 再開発準備組合発足
2014年4月 前川区政スタート
2015年3月 前川区政最初の行政計画『みどりの風吹くまちビジョン』で「石神井公園駅南口西地区市街地再開発事業施行への支援」を明記
2015年12月 練馬区、庁内関係部署で「石神井公園駅南口西地区第一種市街地再開発事業推進会議」を設置
2016年11月 区の政策経営会議で「再開発」ビルへの移転についての資料説明
2017年2月~2018年10月 石神井公園駅南口西地区市街地再開発事業検討状況報告会を3回、開催。「移転」を盛り込んだ資料を初めて区民に提示
2019年12月 地区計画の変更や市街地再課開発事業などの都市計画決定
2022年9月 東京都、石神井公園駅南口西地区市街地再開発組合の設立を認可
2023年3月 練馬区と再開発組合、『石神井公園駅南口西地区第一種市街地再開発事業に係る公益施設の整備に関する覚書』を手交

よく記憶していますが、2017年2月の「検討状況報告会」で石神井庁舎の移転方針が姿を現した時、さすがに驚きました。私自身も、石神井庁舎は当然、現地で建て替えられるものと思い込んていましたし、それまで地域で重ねられてきた様々な話し合いの中でも、庁舎の「移転」は全く出てきていなかったからです。
しかし、よく考えれば、これは大いにありうる話ではありました。前川区政は「再開発」を明確に支援する姿勢でしたし、この手の「再開発」事業にとっては、特に中層階に公益施設を入れることは事業の安定性という点でもしばしば用いられる”便法”であったからです。

その後、区は「再開発」事業の進捗に合わせ、庁舎「移転」に向けた手を様々に打ってきました。実際に石神井庁舎が移転となるのは、早くても2028年の予定です。移転のためには再開発ビルの床を買うための多額の支出を議会が認める手続きが必要ですが、この手続きもまだまだ先です。それでも、区は急いでいます。なぜなら「再開発」事業の次のステップーー「権利変換計画」の策定の際には、計画の中に区が3-5階を購入することを書き込まねばならないからです。
そして、この拙速ともいえる大方針転換の一方で、「移転」することで何がよくなるのか、「移転」したとして土地を買い増してきた現庁舎の建物や敷地はこれからどうするのかなど、要するに「移転」は本当に必要で望ましいことなのかという肝心な点で、本格的な議論と検証は事実上、置き去りにされたままなのです。

跡地は「民間」主導で”再開発”!?

「移転」後の庁舎跡施設と土地をどうするのかについては、区は今はごく抽象的にこういう方針を示しているだけです。

「石神井庁舎の建物・敷地は、区民が活動・交流できる機能への転換など、有効活用に向けて、改修・改築や民間活力の活用等を検討します。」(『公共施設等総合管理計画〔実施計画〕』)

改修なのか、改築なのか。「活動・交流できる場」とは具体的に何なのか。新しい施設なのか、それとも既存の施設の移転・集約なのか。「民間活力の活用」とはどんなものなのか、土地の貸付か、それとも区が後押ししての再開発か。議会の場でも全く説明もなく、もちろん議論も深まっていません。駅前の新しい再開発ビルに庁舎を移すことだけは決まっているが、跡の土地・建物をどうするかはこれから…本末転倒も甚だしい話ですが、要するに再開発事業に間に合わせることが最優先されているのです。

そんな中、今年度に入って区は『石神井庁舎活用検討調査』を委託発注しました。「石神井庁舎の建物・敷地において、区民が活動・交流できる機能への転換など、有効活用に向けて、改修・改築や民間活力の活用等を検討するため、必要なデータの収集・整理、調査分析、資料作成等」を行うことを内容とした調査です。期間わずか1年のこの調査で詳細が固まるとはとても思えませんが、今年度中にごく粗々でも跡施設・跡地の活用方針を文字にしたいということのようです。ちょうど新しい行政計画や公共施設管理り計画を定めるタイミングでもあります。
委託業者を選定するためのプロポーザルに応じたのは2社。そのうち選定されたパシフィックコンサルタンツ株式会社がプロポーザルの中で示した提案書を見ると、①改修よりも改築、②公共施設でなく官民連携もしくは民間主導の施設、③営利事業としての採算性を重視した事業形態、④具体的には大規模マンションあるいはホテルなどを複合した建物…こんなイメージが浮かんできます。実際に具体的な方向が定まるのはこれからですが、しかし、この提案書をもとに事業者が選ばれたことを考えれば、区が期待している方向もそう違わないのかもしれません。

駅前の「再開発」事業に引きずられるようにして、なし崩しに進む石神井庁舎の「移転」計画。そして、せっかく購入してきた拡張用地を使って、これまたなし崩しに進められようとしている、いわばもう一つの「再開発」計画…。区西部の中核的な行政拠点、そして区民の福祉を支える大切な拠点としての石神井庁舎の取り扱いとしては、あまりにずさんに感じるのは私だけでしょうか。
いや、それどころではありません。そもそも駅前の「再開発」ビルに移ることで、いったい区民はどんな利益を得るのか。どんな点で区民の利便性やサービスが向上するのか。この肝心な点すら本当にあいまいなままなのです。

続く

コメント