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大泉第二中をどうする? ~その9~

報告書が検討していないことが二つある、と前回、書きました。一つは教育環境に対する道路の影響。そしてもう一つは、道路事業見直しに伴う課題です。
100ページを超す報告書ですが、その大半は、道路を前提にして、いかにすれば学校の物理的な「再建」は可能か?ということの検討に充てられています。道路が子どもたちの教育環境、生活環境にどのような影響を及ぼすかということについては、「環境対策の検討」という章が一応は建てられていますが、たった3ページ。しかもその内容たるや、環境影響の定量的な評価もまったくなく、対策として書かれていることもごくごく常識的なメニューを列挙したのみ。申し訳ないが、およそ「調査」の名に値するものではありません。しかし、こんな「環境対策」で済むほど、事はそう簡単ではありません。

まずは、「再建」されたのちの道路と学校のイメージを描いたパースを見てください。

なかなか美しいパースです。しかし、この絵には232号線は描かれていません。232号線ができると、左手・校舎と校舎の間に挟まれた緑のテニスコートのあたりは道路になってしまいます。体育館下側に引かれた陸上の直線コースも道路で削り取られてしまいます。こう考えただけでも、虚しさが漂うパースです。
もちろん、何はともあれ施設が新しくなることはそれだけでどこかわくわくするところがあるのも事実です。道路の計画がなくてもそう遠くない時期に建て替えはあるのですが、いずれにせよ新しい教室、きれいな建物、便利な設備は悪い話ではありません。しかし、ちょっと想像力を働かせてみれば、この「再建」案が子どもたちの教育・生活環境として致命的な欠陥を持っていることは容易に見て取ることができます。
何より道路、しかも交差する2本の道路で串刺しにされることがもたらす負荷やリスクは容易ならざるものです。実は、東京都は232と135号の両路線を「優先整備路線」に指定する際に、予測交通量を算出しています。区を通して確認をしたところ、135号の予測交通量は1日2万2千台でした。これは実は大変な数字です。現在の学芸大通りの通行量が約9,000台ですから、そのなんと2.5倍。ピーク時には、たぶん1時間で1,500台は走ろうかという数字です。これだけの車がどこから集まってくるか、都の推計自体の根拠も知りたいところではありますが、とにかくこれだけの車が通ると推定しているのであればそれに伴う騒音、排ガス、事故等についてもっと真剣に検討すべきです。校舎の窓を開けると、目の前に幹線道路。なかなか厳しい環境になりそうです。
学校生活という点で考えたとき、さらに気になるのは「渡り廊下」です。135号で分断された二つの敷地には、それぞれ校舎と体育館などの運動施設が分かれて建っています。実は、校舎も232号の両側に分かれてしまいます。つまり、道路を横断しない限り、子どもたちは校舎と校舎、校舎と体育館の間を渡り廊下で行き来するしかないのです。渡り廊下は3階です…
「s」さんからこんなコメントが届いています。

 道路を挟んだ学校の危険性について検討されていないことにも不安を感じます。学校では短い休憩時間にトイレ、体育の着替え、給食の準備など、娘の通う中学校はチャイムの音に追い立てられて走る子供の姿で溢れています。図面の中にある校舎と校庭の間を串刺しにする道路を見ていると、そこを必死に走って渡ろうとする娘の姿が見えるようで動悸がしてきます。このような学校が子供の命を守れるのでしょうか。

地べたを通っても行き来できる、でも2階、3階で直接、行き来できるほうが便利だから、渡り廊下も作る。これなら話はわかりますし、実際にこうした作りの学校もあります。しかし、地べたでは行き来できない、行き来は3階まで上り下りして…こんな学校は聞いたことがありません。子どもの行動パターンや学校生活の実態を知っている人なら、とても安心できる計画ではありません。(続)

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