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池尻成二事務所 〒178-0063 練馬区東大泉5-6-9 03-5933-0108 ikesan.office@gmail.com

「高架下」は、やっぱりまずい…

 関越道高架下に高齢者センターやリサイクルセンターなどの区民施設を整備するという区の「活用」計画については、この間、このブログでも何度か触れてきました。

     ■「高架下」の居心地は… 2010.3.28
     ■中央道の「高架下」 その1 2010.4.26
     ■中央道の「高架下」 その2 2010.4.28
     ■「高架下」 ~関越の場合~ 20105.3
     ■「高架下」余話… 2010.11.30

 この計画に関連して、区は昨年度末に「環境影響調査」を行いました。環境が悪い、心配だ。こんな住民の声を受け“念のため”に急きょ実施されたものですが、その結果が先日の企画総務委員会で報告されました。調査されたのは大気環境、騒音、振動など。調査報告の結論は、「すべての調査項目において、環境基準を下回っていた」というもので、これを受けて区も、またこの計画を推進してきた地元の議員からも「安心した」「計画を進めることは問題ない」という声が出されたのですが、本当にそうなのか? 特に騒音の問題を取り上げて、私は強く反論しました。
 騒音の調査結果は、こうでした。

地点1 昼間63dB/夜間58dB 地点2 昼間62dB/夜間56dB
環境基準 昼間70dB/夜間65dB 

 なるほど、これだけ見れば環境基準はクリアしています。しかし…しかし、です。この環境基準はいったいどんな場所に適用されるものなのか? 工場地帯、住宅地帯、あるいは道路沿いで、騒音の環境基準は異なる値が設定されています。昼間70、夜65というのはどんな場所での基準なのか。
 実は、この基準は「幹線交通を担う道路に近接する空間」での基準なのです(東京都「騒音に関する環境基準」)。「幹線交通を担う道路」とは、高速自動車国道、一般国道、都道府県道及び市町村道(4車線以上の区間に限る)などです。つまり、高速道路沿いのエリアに特別に適用される基準を持ち出し、その基準を満たしているということをこの報告書は言っているにすぎません。しかし、そんなことなら今さら言うようなことではありません。関越道の高架下で高速道沿道の環境基準すら守られていないとしたら、それこそ違法状態になるからです。
 たくさんの区民が、また議会の私たちが知りたかったことは、こんな当たり前の結論ではありません。いったい「高架下」の環境はどの程度のものなのか、「高架下」の騒音はたとえば住宅街などと比べてどうなのか。そのことをきちんと比較検証することこそが必要なことでした。そして、こうした視点から見ると、「高架下」の騒音はやっぱりひどいのです。
 都の「騒音に関する環境基準」によれば、住居専用地域の環境基準はこんな具合です。

第一種低層住居専用地域 昼50dB/夜40dB
第一種中高層住居専用地域 昼60dB/夜55dB

 「活用」計画の対象となっている地域の周辺一帯は第一種低層住居専用地域に指定され、関越道の近接部分にかぎって第一種中高層住居専用地域になっています。つまり、一低層、一中高のいずれにしても、今回の調査結果はこの地域の一般的な環境基準を明らかに満たしていないのであり、ただ、高速道沿道ということで特別に緩められた基準を満たしているにすぎないのです。
 こうしたことは、調べればすぐわかることです。せめて、さまざまな地域の環境基準も比較対照できるような資料を区はなぜ用意しなかったのか。満たしているという環境基準が高速道沿道の「特例」でしかないことを、なぜきちんと伝えようとしなかったのか。意図したものでないとしても、あまりに問題意識が薄っぺらだと言わざるを得ません。
 区は、この報告書をもとに、「高架下」の利用は環境上も問題ないと言おうとしていたのですが、むしろ、調査ははからずもこの高架下の環境が大いに課題あるものだということを再確認するものとなりました。「高架下」は、やっぱりまずい。

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