区は、関越自動車道の高架下を｢活用｣するための計画素案を取りまとめ、22日と24日に説明会を開催しました。
素案は、関越道の大泉ジャンクション以西、大泉学園通りの西200m地点までの全長約1㎞を対象に、倉庫や駐車場、広場などのほかに、公園管理事務所さらには高齢者センターやリサイクルセンターといった区民施設を整備するというものです。高齢者センターとリサイクルセンターは、区の計画で大泉地域にそれぞれ1ヶ所整備することになっていたのですが、候補地が定まらないままになっていました。それを、この高速道路の高架下に持ってこようというわけです。
なんであれ、活かされていないもの、眠っているもの、死んでいるものを上手に｢活用｣するのは悪いことではありません。しかし、この素案、率直に言っていただけない。24日の説明会を聞いていて、その感はいよいよ強くなってしまいました。
まず第一に、倉庫や空地ならともかく、区民が集い憩うような施設が高架下でよいのか、いや高架下でなければならないのか。疑問です。高架下は、桁下が5.1～8ｍ程度だそうです。当然、建設するとしても1階建てです。他方、高架下ですから、何本もの生活道路が縦断しているだけでなく、当然ながら約20ｍおきに橋脚があり、｢活用｣はこの20ｍ感覚の区画ごとに考えるしかありません。高齢者センターやリサイクルセンターはとても1区画には収まりませんから、橋脚の間を抜ける渡り廊下か何かでつなぐのでしょうか。建物としても、ずいぶんいびつな形状です。いや、それより何より、すぐ頭の上を万の単位の車が休みなく行きかう道路下、いくら対策が講じられているとはいっても騒音や排気ガスの影響を常時、間近に受けざるを得ない道路下に区民施設、というのはどうしても納得がいきません。
日が当たり、緑に囲まれ、中庭に出て背伸びの一つもしたくなるような、そんな施設であってほしいと思いませんか？リサイクルセンターなら、堆肥化でもしてみたい、水循環のモデルを設置したい、星や大気を観測したい、いろんなアイデアが出てくるでしょう。確か春日町のリサイクルセンターには太陽光や風力の発電機がありましたし、関のセンターでは緑のカーテンを整備したり堆肥化の取り組みが活発に行われていたはずです。これらのどれもが、高架下ではとてもできそうにありません…。高齢者センターにしても、豊玉では屋上を使って園芸活動に取り組むグループがありました。だいたい、高齢者の皆さんに高架下に集まってもらうという発想の、なんとも貧しく寒々しいこと、この上もありません。
繁華街のど真ん中に高速道路が走っていて、高架下以外には空地が探しても見つからないというのなら、まだわかります。でも、大泉です。まだまだ宅地化されていない土地も多くあります。区有地や区の施設だって、たくさんあります。高架下｢活用｣という発想は、そこしか場所がないからではなくて、そこだと安上がりにつくれるから。そうとしか思えません。誰がこんな発想を引っ張り出してきたのか…。
しかし、もうひとつ大事なこと、とくに高架下と接して暮らしている住民の皆さんにとって大事なことがあります。それは、｢高架下｣は、決して｢活用｣されていない空間、無駄に放置されている空間ではないということです。とくにハッとさせられたのは、関越道が整備される際に、もともとは土盛り構造であったものを高架下に変えさせてきた経過があったという事実です。いちばんのポイントは、地域の分断だったようです。分断、というのは、単に人の行き来だけでなく、空気、風、さらには光の分断でもあります。高速道路の下が広く抜けていることで初めて、人も空気も光も、いくらかでも自由に行き来することが可能になります。高速道路という、それ自体は間違いなく大きな環境負荷を伴う施設ができるにあたって、せめて道路下は高架にという住民の思いが大変強かったであろうことは、あらためてよくよく頭に入れるべきです。
ところが、説明会では、区の担当者はこの経過、つまり土盛りが高架に変わった経過とその背景にあった事情について｢知らなかった｣と答えたのです。こりゃ、重大問題だ…「高架下｣の空間が無駄で活用されていなかったのではなく、むしろ何もない空間としてこそ活用されてきたということになれば、視点も評価も、180度転換してしまうからです。
光が丘の学校跡施設にしても、練馬駅北口の区有地にしても、区(企画部)はまるで追い立てられているかのように性急かつ強引に｢活用｣計画を進めようとしています。関越高架下も、同じ構図になりかかっています。よくないことです。ここはしっかり姿勢を改めてもらいたい。そして、区みずから区民に約束してきたリサイクルセンターや高齢者センターについては、高架下とは別に、責任を持って早期の整備計画をまとめてもらいたい。そう思います。
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