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外環で区が「要望(案)」

 国と都が外環の「対応の方針(素案)」を出したことについては、以前、このブログでも触れました。この素案に対して区が要望を出すことになり、その案が9日の交通対策特別委員会に示されました。
 いろんなことを感じます。もともとは、大深度地下方式に都市計画を改める際に区は33項目の条件を付して同意したのですが、それ以来、地域課題検討会などがあり、議会での議論もあり、国の動きもあり、そしていよいよ事業化目前という段階まで来た中で、区が今、何を言うか、何にこだわるかは、きわめて重要な問題です。この点では、要望(案)は言うべきことが語られず、言うべきでないことが語られていると強く感じさせるものとなってしまっています。
 語られていないこと。たとえば、青梅街道インターチェンジについて設置の是非も含めた話し合いを求めている住民に対してどう向き合うのかということです。同インタ周辺では地域課題検討会すらスタートしていない中で、インタ設置を前提に事業化に向けて走り出す国や都の動きは、住民を切り捨て対話の道をみずから閉ざすものと言われても仕方ありません。区は、それでよいのか? 残念ながら、要望(案)からは、国や都の動きに対する異論も留保も、地元住民への配慮も、ほとんど伝わってこないのです。
 そして、大泉ジャンクション周辺の環境悪化に対して、区自身がどこまで真剣に憂慮し、こだわろうとしているのかということもなかなか伝わってきません。以前から言っていた換気所の「縮小化」や「脱硝装置」の設置を求める姿勢は捨てていませんが、換気所だけでなく地域交通量の増大による環境悪化はアセスですら予測しているところなのに、そのことを区は是認するのかという肝心かなめの点にはまったく答えていないものですから、何とも腰が据わらない。
 一方で、語るべきではなかったこと。その最たるものは、「外環の2」に関する記述です。たとえば、こんなくだりがあります。

 「区内には、大深度地下以浅の区間があり、…早期の生活再建見通しを立たせるためにも、都として用地の先行取得を含めた対応について検討することを要望する」

 「外環の2について」という項目で、なぜ「大深度以浅」の話が出てくるのか。そして、「大深度以浅」のエリアでなぜ地上の土地の先行取得の話になるのか。「大深度以浅」は区分地上権が発生しますが、しかし、それに対しては「地下の使用権を取得させて頂く」というのが国の説明であり、地上部の買収という話はまったく出ていないのです。しかし、答弁を聞いてわかりました。つまり、「大深度以浅」の部分について外環の2 の計画線内にある土地の先行買収を認めよ、という趣旨だと言うのです。要するに、外環の2の先行取得に踏み込めという要望です。これに該当するエリアはどこかといえば、まずは上石神井駅の北側、ちょうど今、外環の2と絡めて「まちづくり」の議論が進められているエリアです。
 外環の2については、都も、今のところは本線と切り離し、都市計画の廃止も含めてその在り方を検討すると言っている段階です。区としては外環の2は必要だと判断していることは私もよく承知していますが、しかし、この地上部の道路については、住環境に及ぼす影響は甚大であり、計画エリア周辺の住民はもちろん、全区民レベルでも整備に向けた合意ができているとはとうてい言えません。なのに、特定のエリアのまちづくりを念頭に置いてか置かずか、いわばなし崩しに用地買収に踏み込むようなやり方は決してほめられたものではありません。
 全体に「外環のまちづくりへの貢献」を強く意識した要望(案)であり、住民から出されてきた様々な懸念や異論の解決・解消に責任をもってあたるという姿勢がすっかり後退してしまっているのはとても残念です。委員会での意見なども踏まえて要望書が整理され、近々に国と都に対して提出される見込みです。あらためて、区に熟慮を求めます。

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