「歩行喫煙」と「路上喫煙」。似ているけれど、ずいぶん違う。どこが違うかわかりますか?
今、議会で「歩行喫煙等の防止に関する条例」案が審議されています。そこには、こんな条文があります。
第2条(定義)
(6) 歩行喫煙 公共の場所において、歩行中および自転車等で移動中に喫煙することをいう。
ここでいう「公共の場所」とは、「道路、公園その他の公共の用に供する場所(屋外に限る。)」とされています。そして第3条ではこうなっています。
第3条 区民等は、次に掲げる行為をしてはならない。
(1)歩行喫煙
(2)たばこのポイ捨て
というわけで、この条例案では、禁止されるのは「路上喫煙」ではありません。あくまで、歩きながら、あるいは自転車などに乗りながらのたばこだけです。言い換えれば、公道や公園などの公共の場所であっても、立ち止まっての、あるいはしゃがんだり座ってのたばこはこの条例が規制するところではありません。いや、むしろ次の条文を見ると、公共の場所は喫煙を公に認められた場所でさえあります。
第5条2
区民等は、吸い殻入れが備え付けられていない公共の場所で喫煙するときは、携帯用吸い殻入れを携帯し、これを使用しなければならない。
公共の場所では、吸い殻入れを携帯していれば、つまりはポイ捨てをしなければ、たばこを吸ってもよい。これがこの条例の基本の作りです。例外として、区長が「喫煙等禁止地区」として指定した地域に限っては、「歩行喫煙」だけでなく喫煙全般が禁じられることになっていますが、この禁止地区はいくつかの大きな駅周辺に限られる見通しで、しかも禁止地区の中にわざわざ区の責任で喫煙場所を設置するという念の入れようです。
これでいいのかなぁ…。歩きたばこは歩きたばこで確かにいやだし、何より危ないけれど、でも横断歩道の信号待ちでのたばこ、コンビニ前の歩道でのたばこ、小さな子どもたちが遊んでいる公園でのたばこ…この条例では規制するどころかむしろ公認してしまうこうした喫煙についても、不快に思う人、あるいは健康の不安を感じる人は少なくないのでは?
「受動喫煙」、言い換えればたばこによる健康への害という視点からすれば、歩いていようが止まっていようが、本質的には変わらないはず。受動喫煙を防止することが大きな課題になっている中で、むしろ路上喫煙全般を規制してもおかしくありません。罰則を適用するのは「禁止地区」に限り、公道上や公園での禁煙を規範として示すだけでも意味はあったはずです。
議論の中で、所管の部長さん、「この条例案は、受動喫煙防止とは明確に一線を画しているのです!」とおっしゃいました。胸張って言うようなことではないと思うけれど、なるほど、だからあくまで「歩行喫煙防止」なんだ…。でも、これで区民の期待に答えられるんでしょうか。
条例案は、「喫煙者にも配慮する」(第4条)という条文もあります。こうした配慮規定を置いた条例は、練馬が初めてだそうです。喫煙する方の立場にも配慮することは一般的には理解できますが、しかし、たばこはお家に帰って、あるいは分煙した場所で、のんびりと吸ってください。せめて、人通りの少ない公共の場所に限って喫煙場所を明示して喫煙を認めるのはそこだけにするとか、せめて公園は禁煙にするとか、そのくらいのことはきちんとした姿勢を示してほしかったと、残念でなりません。行き過ぎた配慮は、区の姿勢を疑わせかねません。
コメント