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「みどり」も「景観」もどこに行った? ~松の風文化公園条例~

 区議会第2回定例会最終日、私の会派から二つの議案に対して反対討論に立ちました。ひとつは、「区民・産業プラザ条例」。もう一つは「石神井松の風文化公園条例」です。
 石神井松の風文化公園というのは、旧・日銀石神井運動場のことです。国と都から財源を確保したとはいえ、区が80億円を超す公費を投入して購入したのち、現在は改修工事が進んでおり、来年4月の開園に向けて改めてこの公園の位置づけや利用・管理の在り方を定めるために条例を置こうというものです。
 せっかくみどりや水や景観を守るために購入を決断したこの公園、なぜ条例に反対したのか? それは、条例案に、この公園の核心となる価値や意義が全くと言ってよいほど書き込まれていないからです。
 反対討論は、私が担当しました。ちょっと長くなりますが、討論の全文を掲載します。

 議案67号「練馬区立石神井松の風公園条例」に対し、反対の立場から討論を行います。
 私たちは、旧日本銀行石神井運動場を練馬区が取得することを支持し評価してきました。それにもかかわらず、なぜこの条例に反対するのか。それは、この公園の第一の価値、区がこの公園を区立公園として整備する決断をした第一の理由が、条例のどこにも書かれていないからです。


 条例は、「練馬区立石神井松の風公園の管理及び利用について必要な事項を定める」ものとされ、同公園の目的や事業、指定管理に関する規定などが置かれています。
 言うまでもなく、この公園の最大の魅力は、その豊かな自然環境、みどりの美しさや風格を伝える景観、素晴らしいたたずまい、です。区がまとめた「基本計画」はこう述べています。
 「この素晴らしいたたずまいをそのまま活かし、区民にとって四季を通じてより魅力ある公園としていくことを基本方針とします。そのためには、隣接する三宝寺池の水環境を守る上でも重要な立地であることから、この自然環境を確実に保全し、区民の財産として継承することを本計画の基調とします。」
 また、区として購入を決断した経緯について、区長は2008年の第1回定例会でこう所信を述べています。
「当地は、国指定天然記念物である三宝寺池沼沢植物群落の涵養地でもあり、開発されれば、みどりの消失だけでなく、区民の宝でもある沼沢植物群落にも危機が迫る可能性があります。私は、その事態だけは絶対に回避しなければならないと考え、区としての取得を決断いたしました。」
 これだけ明確な位置づけの中で土地を買い、公園の整備にみずから踏み出したにもかかわらず、なぜ条例の中にはみどりや自然環境や「風格あるたたずまい」を守り生かしていく自覚や決意が一言も書かれていないのでしょうか?
 たとえば、第2条で公園事業としてあげられているのは
(1)スポーツおよびレクリエーションの場の提供に関する事業
(2)文化芸術活動および生涯学習活動の場の提供に関する事業
この2つだけです。
 第3条はこの公園に設けるべき施設を定めたものですが、ここにも、広場やスポーツ施設、管理棟が並ぶばかりで、そこには、肝心の植栽も、景観も、基本計画が「主要施設」の第一に挙げた雨水浸透施設もありません。都市公園法では、植栽や芝生、水流や池も、立派な公園施設なのです。
 この公園は、都市公園の中でもとくに風致公園として位置付けられ、石神井公園と一体となって豊かな自然環境や景観を保全することを第一の目的とした公園です。その緑や景観は、スポーツ施設等々の単なる付属物では絶対にありません。こうした公園の管理及び利用の原則を定めるべき条例にもかかわらず、みどり、生態系、水循環、景観等にまったくと言ってよいほど注意が払われていないのは、信じがたいことです。
 この条例案には、松の風文化公園のみどりや自然環境に対する区の安易な姿勢が浮き出ています。まるでスポーツ施設や文化施設のためではないかと思える条例では、豊かな自然環境も、風格あるたたずまいも、決して守り抜くことはできないでしょう。
 そもそも、この公園の意義と取得の目的を踏まえれば、公園の設置はもとより管理についても、基本的には環境やみどりのセクション、環境まちづくり事業本部として引き受けるべきです。それがなぜスポーツ振興課、地域文化部なのか?
 区は、この公園の管理を指定管理者にゆだねることとしています。指定管理者の選定も、指導も、直接はスポーツ振興課がやることになります。これでみどりがしっかりと守れるのか。区は、指定管理者の選定にあたって造園業者とのジョイントを求め、万全を期すと説明しています。しかし、地方自治法は、公の施設の管理を指定管理者にゆだねる場合、その業務の範囲を条例で定めなければならないとしています。ところが、事業を定めた第2条や管理すべき施設を定めた第3条には、すでに述べたように、肝心のみどりや景観、自然環境の維持・保全にかかわる条項がないのです。これで、指定管理者は、みどりや自然環境を責任をもって管理できるのでしょうか?
 公園の本来的な意義からしても、また指定管理の原則からしても、この条例案は松の風文化公園にふさわしいものではないと言わざるを得ません。都市公園条例の改正によって、公園の設置と開設自体の根拠は整います。この公園の管理と利用のルール、原則、さらに指定管理の在り方については、議案を撤回し、公園本来の意義と目的に立ち返って修正・再提案すべきことを強く主張し討論とします。

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