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「外出自粛」の危うさ ~「新型コロナ」”リスク対話”(番外)~

今日は土曜日。都知事の「外出自粛要請」の日。私は、調べものもあり、議会の控室に出ています。本庁舎内の区民事務所は今日も窓口を開いており、たくさんの区民が訪れています。年度当初だし、住民登録など大切な手続きをしなければならない人は多いのでしょう。咳をする人はいないようだし、マスクをしている人も多いし、皆、話もほとんどせず静かです。人数自体は多いけれど、その中に感染者がいる可能性、そして感染するリスクがそれほど高いという印象はありません。区民事務所を閉じるべきとは、少なくとも今は思いません。

しかし、私には不思議なことがあります。区民事務所は開いているのに、なぜ図書館は開かないのでしょう。図書館も、土日は全面休館です。本の貸し出しもできません。また、区民向けの貸出施設はすべて休館です。使うつもりでいた、利用承認を受けていた利用も、すべて「取り消し」処分になります。住民登録の手続きも大事だけれど、区の施設を使って大切な会議を予定していた人もいるんじゃないだろうか。一つ一つの事情を無視して、一律・機械的に休館にするのはなぜだろう。

この手の疑問は、本当に尽きません。「外出自粛」と言いますが、例えば屋外に散歩に出るのも外出です。親戚と会うのも外出。大切な仕事の打ち合わせに出るのも外出。自粛を求めているのは「不要不急」な場合だと言われるかもしれませんが、何が「不要不急」かは人によって、場合によって、きわめて多様であり得ます。たとえば、障害者や要介護高齢者の通所の場は「不要不急」なのか。とても難しく、個別性も高く、また大切な問題です。図書館の本一つにしても、それを今日、借りることがとても切実だという事情があり得ないとは決して言えないでしょう。
それだけではありません。一言で「外出」といっても、ご近所なのか、遠くなのか。公共交通機関を使うのか、自転車なのか。少人数の場なのか、人混みなのか。特定のグループなのか、不特定なのか。長時間か、短時間か。出かける場所の感染対策はどうなっているのか…。いろんな事情で、その感染リスクには雲泥の差が生まれるはずです。

「不要不急」はやめよというなら、その考え方、判断の基準についても責任をもって語るべきです。そして、それだけでなく、こんな形の場所、こんな出かけ方、こんな状況になる会合、こんなふうな人との接触の仕方は避けましょう、と語りかけ、対話をすべきです。
とにかく”Stay Home”。
抽象的で一律に「外出自粛」と言われれば、外に出ること自体が感染リスクそのものだというイメージをどうしても作り出してしまいます。ほとんど思考停止に等しいこうした呼びかけは、漠然とした恐怖感に拍車をかけ、合理的具体的にリスクを評価し、リスク対策と社会生活の課題の折り合いをつけていこうという努力自体を否定することにつながりかねません。思考停止の反面は、無関心です。

これから「緊急事態」や「ロックアウト」といったことが進んていくかもしれません。その中でも、維持しなければならない社会生活や経済活動は必ず残ります。その一つ一つについて、主体的・自主的に評価し判断できる力や材料を、市民に提供すべきです。

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