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8月

 先日、元「中国残留孤児」の方のお話を聞く機会がありました。60台も半ばを過ぎ、それでも、フルタイムで昼夜を問わぬ肉体労働に日々、黙々と向かい合うかたわら、彼は今、日本政府を相手取った国家賠償訴訟のために奔走しています。
 もう、知り合って何年になるでしょう。いろんな場で、いろんな切り口で、お話は聞いてきたつもりでした。しかし、彼の言葉に、はっと胸を突かれました。
 

8月15日に、「孤児」たちがデモをする。なぜ、この日か。それは、この日に「残留孤児」が(その苦難や悲劇が)生まれたのだということを、なんとしても知ってもらいたかったから。

 61年前の8月15日が、一つの終わり、軍国主義の日本とその戦争の時代の終わりであったことは、私たちは知っています。この日がまた、一つの始まり、「民主主義」と「繁栄」の戦後の始まりであったことも、確かに知っています。しかし、8月15日は、あの戦争とどう向き合うか、どう総括しどう超えていくのかという大きな宿題を日本と日本人の前に突き出した日でもありました。そして、私たちは、いまだにこの宿題にきちんと答え切れないでいる。答えられないだけでなく、ネグレクトしようとさえしている。「残留孤児」の問題、被爆者の問題、アジアの人々への戦争責任の問題、そして「靖国」のこと。残された宿題は、そのまま今の私たちの道行きを危ういものにしています。
 忘れないでくれ。「孤児」たちの思いは、そんな私たちのぼんやりとした鈍感さ、うつろな思考を撃っています。
 私は、彼にカメラを向けていました。写真に写った彼の表情には、疲れと寂しさがひときわ大きく広がっているように感じられました。

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