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あまりに、遅い ~練馬区の「自宅療養」支援事業~

練馬区が、自宅療養者の療養を支援するための事業を始めます。
  →『自宅療養者への医療提供体制の更なる強化』(報道発表資料)は こちら
内容は、
1 かかりつけ医等による健康観察(早期介入)
2 電話診療を中心とした在宅における医療支援
3 練馬区酸素ステーションの設置

の3つです。

よいことです。必要な事業です。でも、率直に言って、遅すぎます。

「自宅療養」の問題は、今に始まったことではありません。昨年暮れからの第3波でも、春先の第4波でも、深刻な問題として繰り返し報道されてきました。本来なら原則、入院。入院先を確保するのが行政の一義的な責任。「自宅療養」とは、実は「自宅放置」、医療提供責任の放棄だという指摘は間違っていません。それでも、自宅療養はこの5波で信じられないほど膨れ上がり、入院できないままになくなるケースが相次ぐ事態となりました。そして、入院が困難な状況の中でどうやって自宅療養の患者さんを支えるかは、保健所を設置している自治体、つまり練馬区にとっても喫緊の、重い責任を伴う課題であり続けてきました。
しかし、練馬区の姿勢は、一貫して消極的で自らの責任を直視しないものでした。例えば、2月の区議会本会議で、私はこんな質疑をしました。

 感染者の急増で入院隔離の原則がなし崩しになる中で、今や感染者の最大多数は自宅にいます。自宅療養者が適切な感染拡大防止対策を取ることができているか。そして、必要な医学的な管理や療養の支援がなされているか。危惧される状況です。
 施設もしくは自宅療養か、入院かを判別するのは誰の責任なのか。法令上、制度上、入院しない人への医療は、誰が、何に基づいて提供するのか。お答えください。
 保健所は、検査や感染者の入院隔離を図る機関ではあっても、本来、医療の適否・要否を判断したり、医療そのものを提供する役割は負っていません。しかも、新規感染への対応に追われ、国が求める定期的な安否確認もままならないと言います。自宅で療養する感染者は、実は医療と感染隔離の谷間に置かれているのが実情です。地域の診療所や訪問看護事業所などの支援を仰ぎながら、自宅療養者に対する医学的管理と療養支援の取組を早急に始めるべきです。所見をお聞かせください。

保健所長の答弁は、こうでした。

 新型コロナウイルス感染症は、現在、感染症法に基づく指定感染症に位置づけられており、法令上は、陽性と診断された方は全て入院することになっています。しかし、現状では全ての方を入院させることができないことから、軽症者等については宿泊施設での療養または自宅療養という対応が取られています。医療の必要性の判断は、診断した医師が行うものであり、入院しない方の解熱剤等の処方等についても、基本的には診断医が行うものと考えています。
 本来、症状のある方については、入院または宿泊療養をしていただくことが望ましいと考えています。様々な事情でやむなく自宅療養となる方に対しては、食料品等の配送により療養の支援を行っています。必要に応じてパルスオキシメーターの貸与を行い、万が一、悪化の兆しが見られるような場合には、速やかに入院していただく対策を取っています。

自宅療養者に対する薬の処方や療養の管理は、PCR陽性と判断した「診断医」の責任。区の仕事は、食料品の配送やせいぜいパルス・オキシメーターの貸し出しまで。こんな答弁です。
診療所などで検査を受け、陽性と診断される方はとても多くなっています。しかし、いったん陽性と確認されたらその患者さんは保健所の管理下に入り、療養方法や療養先、感染対策や指導なども保健所の仕事になります。患者さんがどこに入院したか、しなかったか。そんな情報すらもともとの「診断医」には入りません。この質疑のあとの予算特別委員会でも紹介しましたが、現場のドクターからはこんな声が届いていました。

「保健所に発生届を提出した瞬間から、保健所の管轄になるのです。入院させるかどうかを決めているのは保健所ではないですか。その後のフォローアップを診療所に頼みたいなら、その時点で改めて連絡をしてくるべきです。入院したのかホテルに行ったのかさえ連絡は来ません」。

自宅療養者に対する処方や療養の指導等を「診断医」が行うべき、行えるという答弁は、あまりに無責任で実態を見ないものでした。結局、練馬区はこの半年以上の間、「入院が原則」「入院は都の仕事」、そんな建前にこだわるままに半年が過ぎてしまったのです。
もしあの時、しっかりとした対応の準備を始めていたら、この5波での悲惨はいくらかでも避けられたかもしれません。

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