中村哲医師を30年にわたって支えてきたペシャワール会(公式Hpはこちら)の事務局から、完成したばかりのDVD『アフガニスタン 干ばつの大地に用水路を拓く』を贈呈頂きました。前作『アフガンに命の水を』に続く第2弾ということになります。
さっそく封を切り、見ました。とてもよかった。何より美しい。クナール川の水の青さや用水路のほとりに立つ柳の緑、そしてガンベリ砂漠にいまや広がる稲穂の黄金が、文字どおりの意味で美しい。でも、それだけでなく、そこに浮かび上がる人々の汗と想いが本当に美しい。中村哲のたたかいが、ここまで昇華されたのか。そう感じられる映像が続きます。
今回のDVDは、「治水技術7年の記録」という副題がついています。用水路を拓くためには、信念と理想だけでは足りません。そこには、実際に水を制し、あるいは岩を撃つ技術が必要です。しかし、技術は実は、とても人間味のあるものなんですね。技術は自然と人が向き合う、その形です。そして、技術のありようは、人と自然がどう向き合い、どう対立し、あるいはどう共存しようとしているかを本当に具体的に、目に見える形で示してくれます。原発とつるはし、コンクリートと「蛇かご」、戦闘ヘリの爆音と収穫の歓声…生産性の低さや生産力としての乏しさは事実としても、しかし、そこには人と人、人と自然の全く違った向き合い方がはっきりと顔をのぞかせています。言葉や理念ではなく、むしろ技術にこだわることで、このDVDは3.11後の時代と社会に対するとてもしっかりとしたメッセージにもなっています。
DVDの中、菅原文太さんの朗読で、中村さんの言葉が紹介されています。その中に、こんな一節があります。
作業地の上空を盛んに米軍のヘリコプターが過ぎてゆく。
彼らは殺すために空を飛び、我々は生きるために地面を掘る。
彼らはいかめしい重装備、我々は埃だらけのシャツ一枚だ。
彼らに分からぬ幸せと喜びが、地上にはある。
乾いた大地で水を得て、狂喜する者の気持ちを我々は知っている。
水辺で遊ぶ子供たちの笑顔に、はちきれるような生命の躍動を読み取れるのは、我々の特権だ。そして、これらが平和の基礎である。
朗読の背景には、中村哲みずから土のうを担いで歩く映像が続きます。この一節には、アフガンでの30年にわたる文字どおり地べたを這うたたかいの中から生まれた強さ、すでに何ごとをも突き抜けたかのような強さがあります。そう、中村さんの話がたくさんの人を引き付けてやまない、その秘密を教える強さです。
このDVDを見ていて、もう中村哲は「医師」ではないと改めて感じます。「医師」が聴診器を置き、図面を引き、土を耕し、重機を動かす…といった意味だけでなく、一人の人間として、「人・中村哲」としてくっきりとした輪郭を見せたと感じます。間違いなく大きな姿です。小柄なんですけどね…
企画はペシャワール会ですが、制作はアフガン現地にずっと関わり続けている日本電波ニュース。今回はCGも駆使して、映像技術という点でもとても優れた仕上がりになっています。ぜひご覧ください。
お問い合わせはペシャワール会事務局TEL:092-731-2372 FAX:092-731-2373
■E-mail peshawar@kkh.biglobe.ne.jp へ。市民の声ねりま事務所でも取り扱っています
コメント
[…] ➡前2作を紹介したこのブログの記事 ・『アフガニスタン 干ばつの大地に用水路を拓く』 ・『アフガンに命の水を ペシャワール会26年の闘い』 […]
[…] ➡前2作を紹介したこのブログの記事 ・『アフガニスタン 干ばつの大地に用水路を拓く』 ・『アフガンに命の水を […]