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『アフガニスタン 用水路が運ぶ恵みと平和』 ~中村哲医師DVD No.3~

「アフガニスタンの大地から水が消え、多くの命が奪われていきました。それから15年、大地はよみがえり、再び人々の営みが始まっています。それを支えた一本の用水路は、現地の農民と日本人の手で作られました。完成を前に、アフガニスタンから届いたメッセージです。遠く離れた私たちとアフガニスタンの人々、その間に見えた一つの輝きとはどのようなものだったのでしょうか。」
 
幕開けは、吉永小百合さんの朗読でした。中村哲医師のたたかいを伝える新しいDVDです。『アフガニスタン 用水路が運ぶ恵みと平和』。通算3作目の記録動画になります。
 

2001年、米英などのアフガン空爆の下で決死の食糧支援に取り組んだ中村医師らは、その後、農業の再建に全力を集中していきます。鍵となるのは「用水路」。乾き切った大地に大河クナールから水を引き入れる。激流に堰を積み上げ、荒れた砂漠に長大な水路を築く。一見して無謀。なにしろ率いるのは、土木にはシロウトの日本人医師。重機も、コンクリートも、鋼も、専門的な技術者すらも用意できない中で、どうして用水路を造ることができるのか。
しかし、崩壊する農業の再建がなければ、飢饉と戦乱から命を守り平和を取り戻すことはできない、そんな固い信念で中村医師とペシャワール会、そしてアフガンの農民たちの格闘が始まります。名付けて《緑の大地計画》。今回のDVDは、灌漑(用水路建設)事業に焦点を当てながら、この緑の大地計画に取り組んできた15年近い日々を振り返るものです。
 
それにしても、この15年は何という闘いだったことか。ガンベリ砂漠に広がる豊かな緑とたわわな実りは、圧倒的です。
DVDは、「本編・緑の大地計画の記録」と「技術編・PMSの灌漑方式」に分かれています。あえて技術編を置いたところに、もしかしたらこの作品に込められた意図、思いがよく現れているのかもしれません。今回の作品は、現地の格闘の記録を総括すると同時に、それが次の時代、アフガンの人々自身の自立した力と努力に受け継がれるべきことを強く意識して作られたものです。
どんな思いも、どんな熱意も、どんな覚悟も、地に足の着いた技術に支えられなければ農業を――暮らしと命を支えることはできない。強い倫理観と固い使命感に支えられた中村医師の実践の根っこに、技術への強い関心と信頼があることを改めて知らされます。“哲さん”の頭の中ではある種の技術論、技術史が形を取りつつあるのではないかとさえ、感じます。ただしそれは、自然を征服しようとするのではなく自然の前に謙虚に折り合いをつけ、権力や特権を支えるのではなく人々の自治と結びつくことのできる、流行りの言葉でいえば持続可能な技術です。
ぜひご覧になってみてください。
 
     ➡前2作を紹介したこのブログの記事
  

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