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池尻成二事務所 〒178-0063 練馬区東大泉5-6-9 03-5933-0108 ikesan.office@gmail.com

「多文化共生」に、今だからこだわる

 開催中の区議会に、「練馬区立文化交流ひろば条例」が提案されています。この「文化交流ひろば」、どんな施設だと思いますか?
 実は、この施設はもともとは<文化芸術振興・多文化共生支援施設>として検討・計画されたものです。「文化芸術振興」と「多文化共生」、趣旨も対象もずいぶんと異なる二つの性格を持った施設を一つの条例でつくってしまおうということ自体、なかなか乱暴な話に思えるのですが、どうもこの施設(「ひろば」)、多文化共生の拠点としての位置づけがずいぶんとあいまいになってしまっています。
 そもそも、「多文化共生」とは何か。国や練馬区はこう言っています。

多文化共生とは・・・
国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的ちがいを認め合い、対等な関係を築こうとしながら、地域社会の構成員として共に生きていくこと。

(平成18 年3 月総務省「多文化共生の推進に関する研究会報告書」より抜粋)
2 多文化共生の基本理念
外国人区民と日本人区民が、互いの文化的違いを認め合い、対等な関係を築こうとしながら、地域社会の構成員として共に生きていくことにより、新たな文化の創造や地域活動の活性化を図り、誰もが住みたいと思う地域社会を築く。

(練馬区国際交流・多文化共生基本方針)

 「多文化共生」の本質は、①国籍あるいは民族による文化の違いをふまえ、②異なる文化的背景を持った人々の相互理解と尊重、「共生」を図ることです。しかし、今回の条例を見ると、少なくとも名称と目的には「多文化共生」のこうした本質を規定した部分はありません。
 まずは名前です。「文化交流ひろば」と聞いて、そこに「多文化共生」の問題意識を読みとることは困難です。「文化」と「交流」の言葉が書かれていますが、誰のどんな文化か、誰と誰の交流かはまったくわかりません。外国籍の区民、あるいは国籍は日本だけれども民族的背景の異なる区民は、練馬には万の単位でいます。そうした人たちが、この施設を自分たちのための施設として実感することができるか。名称を見る限り、とても難しいと言わざるを得ません。
 さらに目的です。目的はこう書かれています。

目的
第1条 この条例は、練馬区立文化交流ひろばの設置、管理および利用について必要な事項を定めることにより、青少年をはじめとする区民の文化芸術活動および多様な文化を尊重した区民の地域活動の推進ならびに区民相互の交流を図り、もって区民文化の発展に寄与することを目的とする。

 「多様な文化を尊重した区民の地域活動」というところに、多文化共生の意味合いが込められているということなのでしょうか? しかし、「多文化共生」という言葉、理念が意味するのは、決して一般的な「文化的多様性」ではありません。国籍や民族、さらには言語の違いを背景とした文化的多様性――この基本が、条例案には書かれていません。
 練馬区は、ここに来てようやく「国際交流・多文化共生基本方針」を取りまとめるなど、「多文化共生」を施策として位置付ける作業を進めてきましたが、練馬に暮らす外国籍の区民、異民族・異文化の隣人と真剣に向き合う努力は、まだまだ始まったばかりです。だからこそ、条例案のあいまいさはたいへん気になります。条例が、外国籍の皆さんなどに対する明確で率直な「共生」のメッセージとなるよう、条例案の修正を求めていきたいと思っています。

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