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池尻成二事務所 〒178-0063 練馬区東大泉5-6-9 03-5933-0108 ikesan.office@gmail.com

「長寿」の実相

 100歳を超えるような長寿の高齢者の中に、住民登録地に居住しておらず、行方の知れない人があちこちにいる…このニュースが一気に広まり、各自治体はマスコミの取材に追われる中、該当する高齢者の所在確認に走り回っています。
 それにしても、この話、どう受け止めればよいのでしょう。まずは、住民登録というものが決して「完璧」ではなく、登録地と実際の居所が異なるケースが珍しくないという事実。これは、知る人ぞ知ること、高齢者に限らずしばしば見受けられることであり、申請に基づいて作成される住民登録の性格上、避けられないところもある話です。しかし、もう少し踏み込んで考えれば、住民登録を適切に行っていなければ、少なくとも居住地での行政サービスの多くは利用できないことになりかねません。意図してか意図せざるかはともかく、住民登録上の“行方知らず”が実は少なからずいるという事実は、生活や福祉の基盤を失った人がそれだけいるという意味では結構、深刻な話です。
 しかし、“行方知らず”のお年寄りの中には、自らの意志ではない形で遺棄されたり、家族からも忘れられたりした人がいるかもしれないとなると、深刻さは一気に増します。病院や施設に入れられ、あるいは一人暮らしとなり、そのまま忘れられたのか、文字どおり街にさまよい出たのか…いずれにしても、こうしたケースの多くは本来なら「措置」の対象として行政のかかわりが予定されていたはずのものです。しかし、行政は全く見ることも接することもできないまま、たとえば年金を支払い続け、あるいは長寿の祝いを届け続けてきた…。
 どこか寒々とした世界が、思わぬ形でぱっくりと開いた隙間から顔をのぞかせた。そんな感覚にとらわれます。ちなみに、練馬区に住所地を登録している100歳以上の高齢者は190人。男性が31人、女性が159人。最高齢は109歳の女性で、今回のことがあってのち区の担当者がお宅に伺ってお会いしたそうです。そのほかの方についても、居所の確認を進めているとのこと。状況がはっきりしたところで、あらためて落ち着いて考えてみなければならないテーマです。

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