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「地震」と想像力

 先週の日曜日、光が丘のある団地自治会が主催する防災イベントに参加してきました。何かと気になりながら、でもなかなかしっかりと考える機会がないテーマの一つが「防災」。とくに、地震にどう備えるかは喫緊のテーマなのに、決して関心が広がり深まっているとは言えません。
 よい機会と、あらためて練馬区の地域防災計画や避難拠点の手引きなどを読み返してみました。しっかりと、いろんなことが書いてあります。改訂を重ねるごとに充実し、補われてきたに違いありません。でも、どうもリアリティを持って響いてこない。マニュアルの類は、それだけ読めば整合性も系統性もあるものですが、しかし、現実はマニュアルの想定をはるかに超えて多様で複雑であるというただその一点だけからも、マニュアル依存は禁忌です。やっぱり、もし自分が、この家が、この家族が、この町が、この時間に、この場所で地震にあったらどうしよう? そんな想像力を大いに働かせることがまずは肝心です。
 と、あれこれ言っていますが、当の防災イベントでもそのことを実感する機会がいろいろとありました。ひとつ例を挙げます。
 光が丘の団地には、10階から20階にもなる高層の住宅棟がたくさんあります。10階だと、高さは35m程度でしょうか。20階だと、ほとんど50mです。イベントには、消防署からはしご車が来ていました。子どもたちがはしごの先のケージに乗せてもらっている横で、署員の方に聞きました――高さ何mくらいまで届くんですか?と。答えは「せいぜい30m」。ということは、上の方の階には届かない…火事で逃げ場を失ったり、地震でエレベーターも止まりドアも開かなくなったりしたら、どうするんだろう?
 署員がていねいに答えてくれました。「よく見てください。各階のいちばん端のお宅のベランダの天井に四角い穴がついているでしょう。いざという時はあそこから吊りはしごを垂らして1階ずつ降りていくんです」。なるほど…ん?端っこの部屋はそれでもいいけれど、それ以外の部屋は? 「ベランダの敷居をけ破って、端っこの部屋まで行ってもらうんですね」。
 確かに、避難の仕組みはできています。しかし、たとえば体の不自由な高齢者、不自由でなくとも力の弱った人が、はしごを伝って降りていけるだろうか。高さ30mを超す高所、怖くて足がすくまないだろうか、私は無理だ、高所恐怖症だ…。け破って隣に移るというけれど、そんな訓練できるわけではありません。はしごを降りるというけれど、人が住んでいる部屋に入り込んでそんな訓練ができるとも思えません。
 住民の方に聞きました。どうしていますか?と。「そういえば、ときどきはしごの掃除だけはしてもらっているなぁ。でも、使ってみたことはない」…
 ほかにも、きっといろんなことがあるでしょう。こんな事態になったらどうしよう?と、思いっきり想像力を働かせ、一つひとつどうするかを確かめていく作業が必要なんだと、あらためて思いました。ちなみに、10階に住んでいるという知人に、「エレベーターが止まったらどうしますか?」と聞くと、「足が悪いから降りられないわ。いいの、私はその時は死ぬから」と。防災、これからです。

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