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「遅れている」のはどっちだろう? ~都市計画道路と前川区政~ (その2)

前の記事で紹介した、都市計画道路の整備率のグラフを見ながらのお話です。

「区内の整備率は23区の平均を大きく下回っております」(副区長)とまで言われると、そりゃまずかろうと思うのが人情です。でも、こうして23区の数字を並べてみると、おや?と思いませんか。いくつかの突出した区を除けば、だいたい50~60%あたりに並んでいます。練馬区は50%。単純に並べると23区中19番目で整備率が低い方であることは確かですが、隣接する中野、杉並、あるいは同じ周辺区である世田谷などはむしろ練馬よりも低くなっています。この数字を眺めていると、少なくとも練馬が際立って遅れているという印象は一変します。

大まかに言って、都心区や下町地区は整備率が高くなっています。大規模な開発を基本として街が形成されてきた都心。戦災で大きな被害を受け、したがって体系的な街づくりが必要でも可能でもあった下町地区。こうしたエリアで、都市計画道路がまちづくりの先導的な役割を担ったことは容易に想像が付きます。
しかし、練馬はもともと交通や産業の集積地ではありません。そして、自然発生的な宅地化の中で、都市計画の絵や線とは違った形で交通網が広がってきた半世紀の歴史があります。この練馬で都市計画道路が担う役割や重みは、決して同じではないでしょう。それぞれの地区・地域の特性やまちづくりの歴史的な経緯を抜きして、単純に平均よりもずっと整備が遅れていると主張することに、どれほどの意味があるのか。まして、都心区などわずかな区で達成されているだけの「8割」という整備率をこの練馬の目標にするなど、理解しがたいことです。

もう少し23区全体の数字を見てみましょう。実は、ここには整備中の区間が出てきません。事業認可も受け、買収や工事が進んでいる区間は、実際には全体の8%もあるのですが、「未整備」に含まれてしまっています。また、「概成」区間は都市計画道路の「機能をおおむね満たす」とされているものですが、これが23区全体で都市計画道路の13%にもなります。

「概成」道路
●都市計画道路のうち、計画幅員までは完成していないが、ある程度の車線数は有するなどによりおおむね機能を満たしている道路
●区部…計画幅員15m 以上の場合、現況幅員が計画の60%以上又は18m 以上
●計画幅員15m 未満の場合、現況幅員が8m 以上の道路
●概成区間は「おおむね機能を満たしている」道路とされる。区内では大泉学園通り、千川通り(笹目以西)などが該当

つまり、23区全体でみると

整備済み+整備中+概成=85%!
にもなるのです。もともと、半世紀ほど前の都市計画策定時に比べれば、人口もモータリゼーションの見通しも、なにかもが劇的に変化しています。その都市計画道路の85%が、すでに事実上、出来上がっている。遅れている、遅れていると何度も聞かされた都市計画道路事業ですが、それでもここまで進んできたのです。85%という数字をはじいて、改めて思います。これ以上、23区に新しい道路がどれほど必要なのか?と。    (続く)

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