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「自治基本条例」(その5) ~かき回す?~

 間が空いてしまいましたが、練馬区の「自治基本条例」ならぬ「区政推進基本条例」骨子案の検討を続けます。
 「4 区民等の権利および責務」の部分では、もう一つ気になることがあります。それは、④項です。そこにはこう書かれています。

④ 区民等は、区政に参加・参画するにあたり、自らの発言と行動に責任を持つ。

 この項は、直前の委員会で出された「骨子案の考え方」の段階では含まれていませんでした。なぜ、最終段階で盛り込まれたのかもとても知りたいところですが、そもそも、この条文の趣旨は何か?委員会で、企画課長は私の問いにこう答えました。

 「区政にご参加頂くときに、参加をして、俗な言い方をするとその中でかき回すような行動を取られてしまうということではなくて、きちっと自分自身の考え方を定めたうえで発言なり行動をして頂きたいという趣旨で記載をさせていただいた。」

 みずからの行動と発言に責任を持つことは、区民として、人として、ある意味で当たり前の要請です。問題は、そのことをわざわざ条例に書き込むことの意味、意図、趣旨は何かということです。
 企画課長の答弁は、たいへん正直なものでした。「かき回してほしくない」からだ、と。しかし、ある行為、ある発言が鋭く、個性的なものであるのか、それとも「かき回す」ものなのか、いったいだれがどんな基準で判断するのでしょう。課長が判断する? とんでもない!という声がたくさん聞こえてきそうです。
 区から見て「かき回す」ものと写ったとしても、それは、他の区民から見ればそうではないかもしれないし、当人からすれば「自治」の主体、担い手としての信念と意欲の吐露かもしれない。あるいは、自治の経験と訓練がない中での至らなさかもしれない。そうした時に「責任を持て」と言うことは、要するに自制せよ、口をつぐめ、じっとしていろというメッセージにしかなりえないでしょう。
 「責務」として条例に書くということは、社会の規範として、公的な意志として、区が区民に従うように求めるということです。「かき回す」のをやめてほしいから、「責務」として条例に書くんだ――こうした発想はあまりに安易で、一つ間違えば行政の恣意を許し、「自治」とはおよそ正反対の思想や姿勢に道を開くことになりかねません。
 もちろん、区民が「自治」を担うに当たって様々な混乱やあつれきが生ずることはあるでしょう。しかし、そうした混乱やあつれきは、それ自体が自治のルールづくり、自治の発展と成熟の中で解決されるべきことです。必要なのは自治を深め高めていくという視点で区民の努力や自覚を促すことであり、行政が区民の行為を規制したり「かき回すな」と難ずることではないはずです。「自治」の担い手としての区民の力とその成熟の可能性を、区は本当には信じていないのかもしれない。“上から目線”という言葉があるようですが、どうもこの骨子案、そしてこの条項には区民に対する区の“上から”の目線が感じられてなりません。

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