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自治基本条例(その4) ~権利と責務~

 さて、「4 区民等の権利および責務」の部分です。この部分がしっかりと書き込まれない限り、「区民のための、区民による区政」という基本理念は絵空事に終わります。条例の枢要な部分です。
 骨子案ではこう書かれています。

① 区民等は、区とともに練馬区の自治を担い、育むよう努める。
② 区民等は、区政に参加・参画するとともに、地域コミュニティの活動に関わり、協働することができる。
③ 区民等は、区が管理する情報を知ることができる。
④ 区民等は、区政に参加・参画するにあたり、自らの発言と行動に責任を持つ。

 この部分、どうも練度が低い。たとえば、「自治を担う」ことが、なぜ権利でなく、責務なのか。なぜ、「権利と責務」の規定が、権利ではなく責務から始まるのか。
 ちなみに、近隣自治体の条例での同種の規定を引いてみます。

杉並区自治基本条例
(区民の権利)
第四条 区民は、区政に参画する権利及び区政に関する情報を知る権利を有する。
2 区民は、…行政サービスを等しく受ける権利、選挙権、被選挙権、条例の制定改廃請求権、事務の監査請求権、議会の解散請求権並びに議員及び長等の解職請求権等を有するほか、第二十七条で定める住民投票を請求する権利を有する。
(区民の義務)
第五条 区民は、行政サービスに伴う納税等の負担を分任する義務を果たすとともに、区と協働し、地域社会の発展に寄与するよう努めるものとする。
「文の京」自治基本条例
(区民の権利)
第八条 区民は、地域社会の一員として協働・協治の社会の実現に参画する権利を有する。
2 区民は、地域の課題を解決するための活動に関する情報を求めることができる。
(区民の責務)
第九条 区民は、地域の課題を解決するための活動に自主的な判断により参画する。
2 区民は、自主的・自律的な活動を行うとともに、自らの発言及び行動に責任を持つ。

 他に、たとえば豊島区や多摩市の条例でも、①権利規定と責務・義務の規定を、条を分けて置く、②権利規定を先に置く、という点では共通です。そしてそれは、この種の条例の性格からしても、権利規定を含む条例の一般的なあり方からしても、ごくごく当然のことです。
 ところが、練馬区の条例(骨子案)ではそうではない。自治を担うことは区民が「務める」、つまり責務として行うべきこととされ、一度として「権利」として確言されていないのです。もちろん、続く条文で区民は区政に「参加・参画する」こと、そして「区が管理する情報を知ること」が「できる」とは、書いてあります。しかし、それらは自治を担う責務を果たすための手段としてしか位置付けられていない、少なくともそう読める構成になってしまっています。
 もちろん、区民は自治を担うよう「努める」べきでしょう。しかし、それは、条例が、つまり直接には区が責務として求めるからではなく、それが区民の根源的な権利であり、かつ、この権利を適切かつ有効に行使することが地域社会と自治体の発展のにつながるからです。
 以前、自治基本条例に盛り込むべき事項等を検討するために設置された<(仮称)練馬区自治基本条例を考える区民懇談会>がまとめた提言では、こう書かれていました。

5-1 区民の権利 区民は、自治を担い、区政を創造する権利を有します
5-2 区民の知る権利 区民は、練馬区に関する情報を知る権利を有します
5-3 区民の責務 区民は、自治を育むよう努めます

 提言のこの表現がそのまま適当かどうかはともかく、まずは区民の権利として「自治」を語るという筋ははっきりしていました。今回の骨子案では、権利から責務へ、位置づけは大きく変質し主客はすっかり転倒してしまっています。提言と骨子案は他にもずいぶんと違ったところがありますが、とりわけこの部分は気になります。
 この「4 区民等の権利および責務」の部分も、ぜひ精査し整理をしてもらいたいものです。

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