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「緑のために」は本当か? ~外環の2「意見を聴く会」から~

 このところ、道路事業を進めようとする際にとても不思議な理屈が持ち出されます。それは、道路をつくることが「緑」の保全や「防災」に資する、だから道路が必要だという“論理”です。外環の2(地上部街路)についても同様です。例えば、東京都が「意見を聴く会」で配布したパンフレット。地上部街路の必要性のところで真っ先に出てくるのは「環境」であり、道路を整備すれば「緑のネットワークが形成される」、「良好な景観が形成される」、こんな見解です。「環境」の次が「防災」。道路にとって本来的で一義的な課題であるはずの「交通」は、やっとその次に出てきます。
 確かに、とくに外環の2のように広幅員の都市計画区域を持つ道路を整備すれば、環境施設帯は「緑」を増やす空間に使えるし、道路が延焼遮断帯の機能を併せ持つことは確かでしょう。しかし、ここには大きなごまかしがあります。それは、「緑」や「防災」のために最も効果的で効率的な選択肢は果たして道路なのか?という逆の検証がまったくなされていないことです。道路に付随して得られる「緑」や「防災」に対する効果は、実はとても限定的なものでしかないかもしれない。同じ財源と同じ努力をもっと違った形で投入すれば、はるかに効果的な「緑」施策や「防災」対策が可能かもしれない。こういう反省が、全くなされていないのです。

 「意見を聴く会」では、「緑」についても質問が出されました。都のパンフレットでは、外環の2を整備すれば「約1~4haの公共の緑が確保され、石神井公園を中心とした緑のネットワークが掲載され」ると書いてあります。質問した方は、こう聞きました。「道路ができることで失われる緑はどのくらいなのですか?」と。答えは、次のようなものでした。

 あり方の区間の3kmにおきまして例えば40mの幅員で行った場合、約1.5haの緑が今ございます。40mの幅員全部用地買収させていただくとなると1.5haの緑がなくなるということになりますが、街路樹とか植樹…緑地帯の整備におきまして、40mの場合4haくらい増えますのでそういった意味では、緑は結果的には増えるということでございます。その他、18m、22mの案もお示しさせていただきましたが、失われる緑の量と創出される緑の量につきましてはだいたいトントンという形でございます。

 外環の2を作れば、わずか3kmの区間だけで1.5haもの緑が失われる。もし道路が18mや22mの案で整備された場合は、道路に付随して新たに生まれる「緑」は、失われる緑とやっと「トントン」でしかない…。なんだ、道路が「緑」に貢献するなんて、嘘じゃない!?
 しかも、ここで言われている「トントン」はあくまで緑の面積についての話です。18mや22m幅員の案だと、緑は街路樹と低木の植栽の薄いラインとして残るだけです。幅員40mにすれば、確かに幅10数mの緑地帯ができそうですが、この緑地帯は、両側を1万台とも2万台ともいわれる車が通る道路に挟まれています。鳥やその他の生き物は、寄り付くでしょうか。騒音や事故の危険と間近な空間で、「石神井公園を中心とした緑のネットワーク」などと言えるのか? どの案にしても、緑の「量」は何とか維持しあるいは増やすことができたとしても、「質」は決定的に失われます。

 パンフレットも書いていますが、練馬の緑、とりわけ民有地の緑は急速に失われつつあります。農地もそうですが、開発志向の強い区政のもとで、特に樹林などのまとまったみどりの消失は深刻です。こうした緑が失われていくことを前提に、その代償として大きな道路をつくるという発想は、あまりに貧しく矮小です。今は、民有地の樹林に都市計画をかけて公園にする、あるいは農地をそのまま公園として整備することも可能になってきています。むしろこうした方向にこそ、財源を投入すべきです。
 外環の2が通る石神井・石神井台地域は、もともと緑豊かな場所です。この地域の「環境」について口にするならば、まずこの現にある緑をどう残すかに知恵を絞ることこそ、都や区に求められていることでしょう。それにしても、都のパンフレットは、道路に伴って新たにできる緑の面積はしっかり書いておきながら、道路に伴って失われる緑について全く触れていません。ちょっとひどいんじゃありませんか?

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