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「子ども手当」余話 その1

 余話、というにはちょっと重い話です。

 来週から、「子ども手当」の支給が始まります。今年度は一人あたり月額13,000円、当初の約束の半分ですが、それでもなかなかの額です。ところが、この「子ども手当」の“家計効果”、額面通りには受け取れません。
 まず第一に、「子ども手当」の財源に充てるということで、年少扶養控除が廃止されます。「財源になる」というくらいですから、当然ですが増税です。しかも、この増税額が半端ではありません。区の試算では、サラリーマンの夫と専業主婦の妻、それに中学生以下の子どもが2人いる4人家族の場合、増税額は年収300万円で108,500円にもなります(住民税分71,000円、所得税分37,500円)。年収が700万円の場合は、157,000円です。
 さらに、「子ども手当」の創設に合わせて「児童手当」が廃止されます。児童手当の額は、月額で5,000円または1万円。たとえば、3歳未満の子が2人いれば月額で2万円になります。先ほどの年収300万円の世帯に、3歳未満の子が2人いたとします。そうすると、差し引きでは、子ども手当の増で312,000円、増税で108,500円減、児童手当の廃止で240,000円の減…トータルではなんと3万円以上のマイナス!!になってしまうのです。これでは、いったい何のための子ども手当か?とうなってしまいます。
 増税分を考慮すれば、子ども手当の創設に伴う“家計効果”は、実際にはその額面よりはるかに小さいものでしかありません。しかも、まだまだあります。増税つまり課税額が増えると、玉突きのように負担増となるものがいろいろとあります。たとえば国民健康保険料、あるいは保育料もそうです。非課税から課税に代わることで新たに負担が始まるものもたくさんあります。これらも加味すれば、子ども手当はすっかり色あせてしまいます。とりわけ児童手当を受け取っていたような所得の少ない世帯にとっては、その効果はゼロあるいはマイナスにさえなることがあるのです。
 もちろん、予定どおりの“満額”が支払われるようになればこの逆転現象は解消されます。また、児童手当は12歳までなのに対して子ども手当は15歳まで受け取れますし、トータルで見れば、子ども手当が子育て世帯に対する財政支援になることは間違いないでしょう。しかし、本当に“満額”になるかはどうもはっきりしませんし、所得の低い世帯ほど財政支援が実質的に相殺されるというのは何とも納得がいかないことです。
 子ども手当の支給自体は国の制度ですが、玉突きで生ずる保育料などの負担増は区独自の判断と対応が可能な部分です。子どもの貧困、子育てに伴う経済格差が深刻になっている状況を考えれば、ていねいな検証と細やかな配慮が必要です。

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