7月1日、安倍内閣は「集団的自衛権」の行使容認に道を開く閣議決定を行いました。戦後日本のありようが、大きく音を立てて崩れようとしている。たくさんの人がそう感じた一日。しかし、当の安倍首相は閣議後の記者会見で「変わっていない」と繰り返しました。
今回の新3要件も、今までの3要件と基本的な考え方はほとんど同じと言ってよく、表現もほとんど変わっていない。憲法解釈の基本的な考え方は変わらない。従って、憲法の規範性を何ら変更するものではなく、新3要件は憲法上の明確な歯止めとなっている。
➡朝日新聞「安倍首相の会見要旨」
「ほとんど」と逃げを残しながら、しかし「変わっていない」と繰り返すこの発言は、真実か?
「3要件」というのは、「自衛権の発動」つまり軍事力の行使が憲法上、許されるとされる条件のことです。これまで数十年にわたって維持されてきた旧来の「3要件」に代えて新しい「3要件」を再定義することは、今回の閣議決定の核心であり最大の眼目でした。新「3要件」はどのようなものか?
①我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において、
②これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないときに、
③必要最小限度の実力を行使することは、従来の政府見解の基本的な論理に基づく自衛のための措置として、憲法上許容されると考えるべきであると判断するに至った。
➡2014.7.1閣議決定全文は朝日新聞デジタルのこちらから
これに対して、旧来の「3要件」を改めて確認しておくと…
自衛権発動の要件
憲法第9条の下において認められる自衛権の発動としての武力の行使については、政府は、従来から、
①わが国に対する急迫不正の侵害があること
②この場合にこれを排除するために他に適当な手段がないこと
③必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと
という三要件に該当する場合に限られると解しています。
➡防衛省ホームページ「憲法と自衛権」より
二つの「3要件」をよく読み比べてみます。確かに、似ています。語彙は「ほとんど」変わっていないと言ってもよいほどです。しかし、中身は決定的に違います。(続く)
コメント