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「ねりっこクラブ」に反対討論

区議会最終日。本会議で討論・採決となった議案のうち「ねりっこクラブ条例」について、私が反対討論に立ちました。放課後の子どもたちの居場所にかかわる二つの事業、「ひろば事業」と「学童保育事業」をどう調整、連携、整理するかという長年の懸案対する、前川区政の一つの答えとなる条例です。
自民党と公明党が賛成討論に、そして私と共産党が反対討論に立ちました。自民党の賛成討論は、「(ねりっこクラブを)一定、評価する」という、与党第一会派としては異例のトーンのものでした。まずは、私の討論の全文を転載します。

市民の声ねりまを代表し、議案65号 練馬区ねりっこクラブ条例に反対の立場から、討論を行います。

私たちがこの議案に反対する最大の理由は、それが、学童クラブ事業の基盤、安定性、質を大きく後退させるものであるからです。

今年4月、学童クラブの「待機児童」は271人に上り、昨年に比べて97人、5割以上も増えてしまいました。学童クラブの「待機児童」問題が、ふたたび区政喫緊の課題として顕在化してきたのです。
ねりっこクラブは、区も認める通り、この学童クラブの待機児童対策として導入されようとしています。これまで、学童クラブは設置条例に基づいて専用の建物あるいは区画を持ち、おおむね40人程度の定員の縛りの中で運営されてきました。
しかし、ねりっこクラブでは、専用の建物等がなくとも、学校施設を時間を限って借りることで学童クラブの場所を確保する仕組みが導入されます。特別教室などをいわばタイムシェアさせてもらい、それを事業面積に参入することによって定員を拡大しようというのです。
深刻化していくに違いない学童クラブの待機児童対策がこうしたものでしかないことに、私たちは深く失望しています。学校施設は、その本来の用途と目的を持っています。特別教室にせよ図書室にせよ、学校は学校で日常的に利用しています。本当に調整は可能なのか。安定的な利用は可能なのか。
そもそも、余裕教室など探そうにも探せない学校が数多くあります。「ひろば」事業のための部屋を確保するのにさえ大変な苦労をしてきた学校がたくさんあります。そんな中で、果たして有効で無理のないタイムシェアは可能なのか?
たとえタイムシェアできる場所が見つかったとしても、それは、専用のクラブ室と近接しているわけでも何でもありません。安全管理は大丈夫か。一体的な保育は可能なのか。職員体制はどうするのか。
区は、ねりっこクラブへの移行を通して、各学童クラブの定員を増やそうとしています。60人、70人という大型学童クラブが常態になるでしょう。子どもたちは増え、さらに、6年生まで受け入れるようになれば、子どもたちのニーズも課題もますます多様化していくでしょう。そのうえ保育の場所をタイムシェアに依存したとすれば、学童クラブの質を維持していくことは困難であると言わざるを得ません。
区の担当者は、最低限、事務室等が専用で確保できれば、保育にかかるスペースがすべてタイムシェアということもありうると説明します。こうなると、もう学童クラブは根無し草です。そして、根無し草でも安定的な運営が可能になるほど、学童クラブ事業は甘くはあません。
私たちがねりっこクラブ条例に反対するもう一つの理由、それは学校応援団の問題です。学童クラブとともに、ねりっこクラブ事業のもう一つの柱になるのが放課後等居場所づくり事業、いわゆるひろば事業です。これまでこのひろば事業は、学校応援団が担うことを自明の前提として進められてきました。学校応援団の設置を進める過程では、学校関係者、地域の皆さんに、本当にたくさんの無理を聞いてもらいました。その学校応援団をひろば事業の運営主体から外していく。それが、このねりっこクラブ条例です。大きな転換、教育委員会のきわめて大きな路線転換です。
地域の保護者や関係者の善意と献身に多くを頼る学校応援団が担い手となる限り、長期休業中などの事業に大きな無理があることは当初から明らかでした。それにもかかわらず、教育委員会は応援団によるひろば事業を強引に進めてきました。その大義は、区民との協働であり、地域の力を生かした学校運営でした。それなのに今、教育委員会は誠実かつ責任ある総括を何ら示すことなく、ひろば事業を学童クラブの委託事業者にゆだねる道へと大きく舵を取りました。応援団は、個々のメンバーはともかく、組織としてはねりっこクラブの運営の担い手ではありません。振り回された応援団の皆さんは、いったいどう受け止めているでしょうか。
ねりっこクラブを導入する前にやるべきことが、少なくとも2つあります。一つは、この新しい事業のために65の学校のどの施設を使えるのか、そしてそれによってどれほどの定員が増えるのか、どんなクラブ運営が可能なのかを明確にすることです。2つ目は、地域との協働で子どもたちの放課後を支えようとしてきたこれまでのひろば事業を、その理念そのものも含めてしっかりと検証・総括し、応援団の皆さんの前に責任をもって提示することです。
この2つが果たされない限り、私たちは、ねりっこクラブの導入に賛成することはできません。明確なけじめと真剣な総括のない転換は、いつもその場限りの安易で中途半端な道に通じています。条例案の撤回を求め、討論とします。

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