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関越高架下「活用」計画に、反対討論

 今日14日は、区議会第3回定例会の最終日でした。最終日はいつも本会議が開かれ、議案の議決があります。議案のうち、会派間で意見が大きく割れたものについては、最終日の本会議で改めて討論と採決が行われます。今日は決算、補正予算、そして関越高架下「活用」計画をめぐる陳情が採決となり、私が討論に立ちました。討論の全文を以下に転載します。ここで触れたいくつかの論点については、また機会を見つけて触れてみたいと思います。いずれにしても、この「活用」計画、ほんとうにお粗末であり、こうした計画にしがみつく区政を見ていると情けなくなります。

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 生活者ネット・市民の声・ふくしフォーラムを代表して、委員長報告に反対し、関越高架下活用計画の撤回・見直しを求める立場から討論を行います。
 私たちは、区が取りまとめた関越自動車道高架下活用計画に反対です。なぜ反対するのか。
 第一に、計画に盛り込まれた具体的な用途、とりわけ高齢者センターやリサイクルセンターなどの区民施設にとって、高架下がふさわしい場所とはとうてい言えないからです。


 高架下は、おおむね20数mおきに設置された橋脚によって区画が分割されています。ところが、活用計画に盛り込まれた施設のうち、高齢者センターやリサイクルセンターは3つもの区画をまたいで作られることになっています。他自治体の活用事例に照らしても、異例です。
 3つの区画に渡るセンターを端から端まで行こうと思えば、おそらくは80m以上も歩かなければなりません。たとえば豊玉の高齢者センターであれば、受付から目的の部屋まで、あるいはある階から別の階まで、エレベーターも使えばすぐに移動できるのに、ここ高架下の高齢者センターではずっと歩いて移動するしかない。高齢の方、あるいは体が不自由な方にとって、なんと配慮欠いた構造でしょうか。
 しかも、いったいどうやって区画を3つもつなぐのか? それぞれの区画を分かつ6本の橋脚の間は、もっとも広いところでも3.75mしかありません。国が定めた「高架下占用許可基準」では、「(占用物件の)壁体は、原則として橋脚から1.5m以上空けること」とされています。この基準を守るならば、橋脚と橋脚の間で占用できるのは最大でも75cm幅しかありません。こんなに狭い幅で、どうやって廊下を通すというのでしょうか。
 都や区の条例がバリアフリーのために求める廊下幅の最低基準は内法で1.4mです。狭い橋脚の間を通ってこの基準を満たす廊下を設置することは、不可能です。区は、条例違反の廊下を作るつもりか。それとも、利用者にいちいち屋外に出て渡り廊下で隣の建物へ移れというのか。もしそうだとしたら、これはもう、ブラックジョークの世界です。
 活用計画が思い描く建物は、あまりに利用者のことを無視し、さらには法令にすら触れかねないしろものです。それだけではありません。区は高架下の騒音、大気等の環境調査を行い、環境基準を満たして問題ないと言います。しかし、たとえば騒音です。測定された値は高速道路沿いのエリアに特別に許された基準こそなんとか満たしているものの、住居専用地域の基準は大幅に超過しているのです。
 さらに、3月11日の大震災以降、私たちが最も緊急かつ最優先で配慮しなければならない防災という点からも、高架下は大いに問題を抱えています。NEXCOの発表によれば、あの地震によって橋脚構造を支える支承の損傷が5か所、ジョイント部の損傷は56か所も発生しています。近傍の関越道でも跨道橋階段の損傷で12kmに渡って、また外環道では遮音壁パネルの落下によって0.9kmに渡って交通の支障となる被害が発生しているのです。区は、落橋や橋脚の倒壊といった致命的な事故はなかったという認識で済ませようとしていますが、現に発生したこれらの事故は許容範囲だとでも言うのでしょうか。とんでもない話です。
 区民が求めているのは、身の危険を感じ、高速道路の騒音を我慢しながら利用するセンターではありません。落ち着いた住環境、大泉らしい閑静な町並みの中で、背筋を伸ばし、耳を澄まし、思い切り息を吸い込めるセンターです。高架下に区民施設を押し込めようという計画は、発想そのものからして区民の思いや感覚と決定的にずれています。

 高架下活用計画に私たちが反対する第二の理由は、この計画があまりに住民合意をないがしろにしているからです。
 区は、この間、活用計画に反対する声は「一部」でしかないと繰り返し語ってきました。しかし、陳情に寄せられた署名は、活用計画の推進を求めるものが2,785、これに対して見直しや撤回を求めるものは6,264筆に上ります。議会に寄せられた声でみるかぎり、区の計画を支持する声のほうがむしろ少数であるのです。計画の見直し・撤回を求める声が多数であること、少なくとも区民世論が深く、決定的に割れていることは明らかです。とりわけ当該地近隣の住民の間で根強い反発と疑問があることは重大です。高架下活用は区民全体の課題であると同時に、すぐれて地域性の高い問題、関越道沿線のまちづくりをどう進めるかという問題でもあります。関越道という巨大高速道路が出現して以来、沿道は環境の悪化に苦しんできました。そうした住民の皆さんの思いに寄り添うこと抜きに、真剣な住民合意などあり得ません。

 内容としても、また進め方から見ても、区の活用計画は重大な欠陥、瑕疵を負っています。こうした計画をもとに高架下の占用が認められるとしたら、今度は道路管理者としての国の判断がきびしく問われることになるでしょう。あらためて活用計画の見直しを強く訴えるとともに、国や関係機関が区議会での審議経過や区民合意の状況を公正かつ慎重に見極めることを期待し、討論とします。

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