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池尻成二事務所 〒178-0063 練馬区東大泉5-6-9 03-5933-0108 ikesan.office@gmail.com

貫井子ども家庭支援センターの“怪”

 不思議なこと、変なこと、驚かされることが、またまた出てきました。「貫井子ども家庭支援センター」の話です。
 12月4日の健康福祉委員会で、貫井に建設予定の民間マンションの1階を借りてこのセンターを開設するという唐突な報告がありました。何しろ、長期計画でも中期計画でも、子ども家庭支援センターは4ヶ所整備(すでに開設している練馬、光が丘、関、設計中の大泉)となっており、今回の貫井センターは、場所はもちろん、そもそも整備すること自体が行政計画に位置づけられていないものです。途中で計画を見直して箇所数を増やすとか、特にこの地域に優先的に整備する必要があるとか、そんな話は少なくとも議会ではこれまでただの一度も出ていませんでした。どう考えても唐突と言わざるを得ません。
 もちろん、この種の施設の必要性はこれからも高まるでしょうし、広い区内に4ヶ所でよいのかという議論は当然、出てきます。箇所数を増やすこと自体は、方向性としては十分に理解できるところです。しかし、5ヶ所目以降が必要であったとしても、まずは行政計画の見直しや区全域を見渡しての整備場所の選定等の手順を経ることが大原則であり、当然のルールです。しかし、理事者の説明は「位置づけはこれから考える」(事業本部長)などという無責任極まりないもの。児童福祉法が改正されたからということをことさら強調する説明もありましたが、これも何とも強引な理屈付けです。改正は、別に支援センターだけを念頭に置いたものではないし、改正を受けて区の行政計画全体をどう見直していくかという基本的な議論から始めるのが当たりまえです。
 計画的に施設の整備を進めていく、透明性や公平性を配慮し、説明責任を全うしていく…行政執行上のこうした最低限の原則、ルールがあからさまに曲げられようとしています。もちろん、よほどの緊急性・必要性があれば、それもまた容認できる場合もあるでしょう。しかし、ルールや原則を曲げてまで整備を急ぐ緊急性・必要性がどこにあったのか、委員会の質疑を聞いていても、納得できる説明はないのです。
 「適地を確保できることになりましたので…」といった説明もありました。篤志家の方から好条件で施設提供の申し出でもあったのなら、何とかそれを形にしたいと思うのも理解できますが、しかし、これも変な話です。なぜなら、11月当初の段階で当該のマンション計画に関する住民説明会はすでに終了していたのですが、その計画にはこのセンターの整備は全く含まれていなかったのです。つまり、施主さんから施設提供の申し出があったということは事実としてなく、このマンションのこの1階を借りるということは区のほうから働きかけた――おそらくはかなり強く働きかけたからこそ動いた話であることは明らかです。では、区はなぜ、このマンション、この地域にねらいを定めたのか。
 委員会では、あっと驚くような答弁もありました。
 「富士見ランドの跡地を区が確保できずに児童施設が少なくなってしまう。少しでもサービスを低下させないという考え方の中から地主さんに要望した」(子育て支援課長)
 今回、マンションが建設される土地は、区が長年、地主さんからお借りして富士見ランドという民間遊び場としてきました。この民間遊び場が開発でなくなることになり、これについては近隣の皆さんから議会陳情が出されたり、議会の中でも後手に回った区の対応を厳しく指摘する意見が出されたりもしてきました。
 児童遊園が縮小されることは残念であり、存続のために区が最善の努力をしていなかったとすれば、それはそれでしっかり責任を取ってもらいたい。しかし、児童遊園がなくなるから、代わりに支援センターを作るなどという説明は、まさに噴飯ものです。支援センターは児童遊園の代替施設ではありませんし、支援センターを、しかもみずからの行政計画すら反古にして作ることがどうして「サービス水準の維持」になるのか、さっぱりわかりません。
 いろいろな施設整備や事業を、つじつま合わせの手段、まるで交渉事や駆け引きの材料のようにもてあそぶこうしたやり方は、本当に恥ずかしく、情けない。これでは、行政の道理などあったものではありません。「無理が通れば道理が引っ込む」という言葉がありますが、道理を押しつぶすほどの「無理」をだれかが迫ったのでしょうか?
 長期計画は、区長みずからまとめたものです。当然、計画の修正を意味する今回の話も、区長はちゃんと了解しているのでしょう。しかし、よかったのでしょうか…行政の一貫性、行政の主体性と責任能力、さらには首長の権威をみずから傷つけているように思えてなりません。

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