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練馬駅北口区有地の“原点”

 練馬駅の北口、ロータリーの西側に区有地があります。現在は豊玉第二保育園の仮園舎が置かれ、一部車庫になったりしています。面積約4,000㎡、建ぺい率80%で容積率は500%です。
 この土地の「活用」策をめぐる議論が、大きな山場に近づきつつあります。区は、今年3月には、「『練馬の中心核』を形成する拠点の一つとして、にぎわいと活力の醸成をめざ」すことをうたい、具体的には民間資本の主導での高層ビル建設を強く示唆する構想を明らかにしました。そして、この秋には構想に基づく「事業計画(素案)」が示されるとも言われています。
 どんな「活用策」が好ましいのか、ふさわしいのか。議会の議論もだんだんかまびすしくなってきていますし私にも思うところはありますが、まずは、この土地が区有地となった歴史、この土地をめぐるまちづくりの議論の経緯を踏まえようと、あれやこれやと過去の資料をひも解いています。
 この土地は、もともとは鐘紡の工場跡地でした。たとえば、『練馬区史』には、こんな記述があります。

 西武池袋線練馬駅周辺…とりわけ、練馬駅の北側に隣接する土地は、大正年間より鐘紡工場が立地し、工場敷地によって地域が東西に分断され、その西側地域は、工場に東側を塞がれてきたことや、行政の立ち遅れのために、生活環境が劣悪の状況におかれてきた。…
 52年(1977年)1月に至り、㈱ディベロッパー・カネボウから区に対し、(1)現下の厳しい経済情勢の中で開発を進めることは困難である。(2)工場跡地を今後、公共用地として活用されるよう検討されたい。と開発を断念する旨の申し入れがあった。そこで区としては、区議会、地元住民をあげて東京都知事に対し、跡地の開発が周辺整備のために不可欠な拠点であるとの認識に立って、公共用地として取得するよう要請した。
 これに対して東京都は、厳しい財政事情のもとでありながらも跡地の重要性を理解し、都市整備用地(生活環境改善関連)として跡地の4分の3を取得する方針を固め、一方区においても、残り4分の1の土地を全区民が有効に利用できる施設としての区民会館建設用地として取得することとして、52年3月㈱ディベロッパー・カネボウとの間に売買契約を締結した。

 当の区有地を含む練馬駅北口の一帯は、かつては鐘紡の工場があり、1970年に工場が閉鎖されてのち、跡地の利用を巡って様々な動きがありました。そして、この区史にあるような経過をたどって、公共用地となったのです。ここで言う「区民会館」は文化センターとして整備され、他の部分の多くは道路や駅前広場、学校敷地として活用され、最後に残ったのが問題の4,000㎡ということになります。
 北口区有地の「活用」をめぐる議論は、当然、この用地取得の経緯にさかのぼらなければならないはずです。多額の税金を使って目的もなく土地を買うことがあり得ないように、買った目的に即して土地を活用することもまた行政の責務です。そして、この用地が「生活環境改善関連」を目的として購入されたことは、大切な、欠かすことのできない出発点です。(続)

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