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環境劣化は確実 ~外環の2説明会から(続)~

 「騒音」についての記事の続きです。
 ここで紹介した二つのグラフ、東京都はこれを材料に「環境基準は守られる」つまり環境への影響は心配しなくてよいと、こう言っているのですが、とんでもありません。よく見ていきます。
 このグラフには、環境基準として昼間70dB、夜間65dBという数字が示されています。昼間というのは午前6時から午後22時までですから実はなかば夜まで入り込んでいるのですが、それはともかくこの70-65という数字はどこから来たものなのか?
 騒音に関する環境基準は、「生活環境を保全し、人の健康の保護に資する上で維持されることが望ましい基準」として環境基本法に基づいて国が定めています。それによると、地域に応じた基本的な基準値とは別に「道路に面する地域」については緩和された基準が設けられていて、さらに「幹線交通を担う道路に近接する空間」ではもう一段緩和された基準が「特例」として置かれています。この「特例」基準が、昼70-夜65dBというものなのです。

     ➡東京都「騒音に係る環境基準

 どんな道路が「幹線交通を担う道路」なのか? これについては、9日の説明会でも質問が出ていましたが、環境省は「高速自動車国道、一般国道、都道府県道及び市町村道(市町村道にあっては4車線以上の区間に限る)等」と定義しています。国道はともかく、都道も車線数に限らず「幹線交通を担う」というこの定義、ずいぶん幅広いものですが、とにかくこの定義にしたがえば都道となるであろう外環の2も「幹線交通を担う道路」ということになります。だから、70-65dBというわけです。
 しかし、そうだとすると前回の記事で紹介した二つのグラフが意味するものは「外環の2ができた場合、沿道の騒音は『幹線交通を担う道路』に特例として認められた基準はほぼ達成できますよ」ということ、ただそれだけです。では、今の地域の騒音基準と比べてどうなのか? いやいや、今の地域の騒音の実態と比べたらどうなのか?
 私も地域の皆さんも、道路ができたら環境がどうなるか?を気にしているのです。それに対して、道路に認められた特別な基準は満たしますよというだけでは、何の答えにもなりません。ちなみに、外環の2が整備される予定の地域は、大半は住居専用地域です。住居専用地域の一般環境基準は、昼55dB夜45dBです。これに照らせば、都が示したグラフのすべての地点でこの基準を超える値となっています。もっと言うと、住居専用地域の中でも2車線以上の道路(「幹線交通を担う道路」を除く)に面している場合の緩和された基準ですら、60dB-55dBです。この数字すらほとんどの地点で上回ってしまいます。
 外環の2が通る地域は、練馬区内でも特に良好な住環境、自然環境を残した地域です。日常的な騒音の実態は、55dB-45dBの基準をずっと下回っているのではないかと思います。道路ができれば、確実に、しかも深刻に騒音環境が悪化する。これが都の示した資料が教えていることなのです。

 騒音の問題は、一つの例でしかありません。つまり、外環の2に伴って地域の環境が確実に悪化していくことの一例。そして、この環境悪化の実相を東京都が故意にか無自覚にか、ごまかし見えなくしている一例です。道路整備で生活の基盤を奪われ、立ち退かざるを得ない人たちも大変ですが、道路沿道を中心にして残された人たちもまた、大変です。

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