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教育行政の公平性は大丈夫? ~私立幼稚園団体の現職役員が教育委員に~

 区議会最終日の本会議では、教育委員の人事が議題になりました。教育委員は、法律で、区長が議会の同意を得て任命すると定められています。今回の人事は、4年の任期を終える2人の教育委員の後任を定めるものです。退任となるのは、内藤幸子委員と天沼英雄委員。区長からの提案は、内藤委員は再任、そして天沼委員に代わって新たに安蔵誠市さんを任命するというものです。
 議会の意思は、お二人で大きく分かれました。内藤さんは全会一致で任命に同意することとなりました。他方、安蔵さんは、私たちの会派をはじめ、3会派の議員が反対しました。なぜ私たちは反対したのか?

 安蔵さんという方は、私自身はお名前も初めて聞く方です。もちろん、人となりも存じ上げないし、教育に対してどういう見識をお持ちかも全くわかりません。教育委員の人事は、いつもこんな感じで同意を求められるため、いったい何を根拠に判断したものか途方に暮れることが多く、ここはぜひ同意手続きのあり方は見直していくべきだと思っているのですが、それはともかく、安蔵さんの任命に同意できなかったのは別な理由があったからです。それは、安蔵さんが練馬区私立幼稚園協会の現職の副会長、東京都私立幼稚園連合会の監事という要職についている方だからです。
 毎年9月の議会になると、区内の様々な団体が予算要望に回って見えます。私立幼稚園協会は、いつもしっかりとした要望を持って見える団体の一つです。今年も、保護者負担軽減補助金や教育環境整備補助金などの拡充を求める要望書を持参されました。区立幼稚園の在り方についても、私立幼稚園の意向が強く働いていることは、教育委員会が議会等でも認めているところです。私立幼稚園で作る団体として、同協会がさまざまな要望や主張を持たれ、それを議会や教育委員会に出されることは何の問題もありません。しかし、その協会の現職の役員が、同時に教育委員会の委員となったらどうでしょうか?
 教育委員会は、私立幼稚園にかかわる様々な仕事をしており、その中には補助金のように予算に関すること、「幼小保連携」など教育課程の在り方に関すること、さらには今後、子ども子育て新システムに基づいて新たに始まるこども園に関する事業計画等を定めるのも、教育委員会の仕事です。教育委員会は、私立幼稚園の利害や立場に深くかかわって意思決定を行うべき立場にいます。その教育委員に、私立幼稚園の代表ともいうべき人がいてよいのでしょうか。

 教育委員会に確認したところ、安蔵さんは、教育委員になっても私立幼稚園団体の要職は続けるということです。法律が禁ずる兼業禁止の規定には当たらない、ただ「利益相反」の問題が出る場合は教育委員会の審議から外れてもらう、こんな見解です。驚きました。「利益相反」と言うのは、相反する利益を代表する立場に同一の人物が就くことはできないというルールです。広く区民全体、区の教育全般のために仕事をすべき教育委員に一部の団体の利益を代表する立場の人が就いたとすれば、特に私立幼稚園のように教育行政に深くかかわる団体の場合は、この利益相反の問題がきっとしばしば起きるでしょう。そのたびに教育委員会の審議から外れる? それじゃ、教育委員として仕事にならないのでは?
 教育行政の公平性、中立性を責任をもって担保するという意味でも、今回の人事は受け入れがたいものです。このところ、区政の中から節度やけじめ、広い意味での法令順守精神(コンプライアンス)が失せてきていると強く感じます。松の風文化公園の指定管理者選定もそうでしたが、この教育委員人事も、あまりに思慮が足りないと言わざるを得ません。安蔵さんには、少なくとも私立幼稚園団体の役職は退いたうえで教育委員会の職務に当たって頂きたいと、強く思います。
 議会終了後、会派で直ちに『練馬区教育委員会委員の選任に関する要望書』を区長に提出しました。以下に転載しますので、ご覧下さい。

練馬区長 志村 豊志郎 様

練馬区教育委員会委員の選任に関する要望書

2013年12月13日
生活者ネット・市民の声・ふくしフォーラム
きみがき 圭子、菊地 靖枝、池尻 成二、かとうぎ 桜子、橋本 けいこ

 2013年度第四回定例区議会に、練馬区教育委員会委員任命の同意についての議案が提出されました。
 新たに、選出された候補者の経歴には、毎年、練馬区に予算要望を提出している任意団体「練馬区私立幼稚園協会」の副会長であることが明記されています。
 教育委員会事務局に確認したところ、役職は現職であるとのことでした。また、今後予想される幼稚園に関する議案等については、利害関係者ではないのかと聞いたところ、当事者となる案件については、決定に加わらないとの説明でした。教育委員会の中立性を保つ上でも問題ですし、職務の全うという観点からも疑問です。
 区長におかれましては、このような疑問を払拭するよう適切に対処するとともに、今後同様の人事をおこなわないよう慎重にご判断いただきたく要望いたします。

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