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後期高齢者医療保険料

 後期高齢者医療の保険料について、政府が追加的な軽減策(びぼう策)を検討しています。均等割軽減幅の拡大に加え、所得割の一部についての軽減もテーマにあがっているとか。この機会に、あらためて後期高齢者医療制度の保険料設定の仕組みについて少し考えてみました。

 後期高齢者医療保険料を考える際の鍵のひとつが「所得係数」です。これは、各広域連合の所得水準を一定の計算式で数値化したものですが、たとえば東京では1.72、他方、青森では0.59です。3倍以上も開きがあります。
 この所得係数によって、二つのことが決まります。
①保険料は、全国どこでも、均等割と所得割からなっています。しかし、均等割と所得割それぞれが占める割合は、実は各自治体でバラバラです。この割合を決めるのが「所得係数」です。具体的には、均等割を1とした場合に、所得割=所得係数となります。つまり、東京では均等割:所得割=1:1.72と所得割が63%に達するのに対して、青森では1:0.59で37%となります。これは、一見して、青森のように所得係数の低い自治体の場合は均等割の比重が高く、したがって保険料の逆累進性がきつく、均等割のみの階層を中心とした負担が大きな問題となるということです。保険料の6割以上が均等割賦課というのは、低所得者にはとても過酷な設計です。他方、東京などの場合は所得割の比重が高いために“応能性”がいくらか強まり、均等割層の保険料負担感が緩和されるように見えますが、ここでもうひとつの問題が出てきます。
②所得係数は、所得割と均等割の按分率を決めるだけでなく、国から交付される調整交付金の各広域連合への配分率も決めます。この調整交付金は全体の給付費の8.3%と、高齢者保険料とほとんど等しいくらいの大きなウェイトを占めるものなのですが、この調整交付金が実際にいくら配分されるかは各広域連合の所得係数に応じて決まります。たとえば、東京の場合は交付率は58%にしかりません。つまり、平均的な交付額の半分しか来ないのです。他方、青森の場合はおそらく10%近くになっていると思われます。
 調整交付金の制度自体は広域連合ごとの所得格差を全国的に補正するというある意味で正当な意義を持っているのですが、ここでまた問題が出てきます。つまり、東京のような大都市部では一部の高額所得者の存在が所得係数を大きく引き上げているにもかかわらず、この高額所得者は賦課限度額を超えた負担をしないために、交付金が削減されたツケを中間所得層(所得割も負担する階層)が引き受けなければならないということです。中間といっても、ほとんどが年金階層ですから、要するに金持ちが潤っているツケをサラリーマンOBが払わされるということになってしまいます。
 後期高齢者医療の保険料負担の問題は、基本的には二重に表れていると思われます。ひとつは、所得係数が押しなべて低い地方部を中心として、均等割世帯の過重負担として。もうひとつは、所得係数の高い都市部での所得割の過重負担として。この過重負担は、ひとつは国費など公費の投入を抑制しようという制度設計自体によって、そしてもうひとつはこの「所得係数」の仕組みを介して、以前の国保に比べても一層深刻になっています。

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