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子どもたちをむしばむ「向精神薬」

 先ほどまで、NHKで「“薬漬け”になりたくない ~向精神薬をのむ子ども~」という番組を見ていました(『クローズアップ現代』)。釘づけになりました。発達障害と言われる子どもたちが、学校や地域・家庭で居場所を失っていく中で、医療に、いや服薬につなげられていくケースを、私自身、数多く見聞きしてきました。服薬のすべてを否定するつもりはありませんが、しかし、社会的に解決すべき課題、解決しうる課題を安易に――当事者の思いがどんなに切実で切迫していたとしても、しかし対処としてはやはり安易に「薬」にたよる動きに、私は強い違和感と危惧を感じてきました。
 数年前、「リタリン」という薬がADHD治療薬として子どもたちに処方されている実態が、マスコミなどでも取り上げられたことがありました。そのとき私は、議会でこんな質疑をしました。2007年10月のことです。

◆池尻成二委員 次282ページ、薬物乱用防止活動費補助金について伺います。
 東京都がつくったパンフレットで、「依存性薬物に気をつけよう、若者へのメッセージ」というパンフレットがあるのですが、その中に乱用される薬物の例の一つとしてリタリンという薬が出てきます。医師の処方のもとでのみ使用ができる薬ということで、いわゆる処方薬となっているようなのですけれども、このリタリンという薬、厚生労働省はどういう効能を挙げ、どういう疾患について効果があると認めているか、まず確認をしてください。

◎石神井保健相談所長 リタリンについてのご質問です。日本ではリタリンはうつ病、あるいは睡眠障害の治療薬として使用されております。
◆池尻成二委員 ありがとうございます。事前にいただいた資料を見ますと、このリタリンという薬は非常にいろいろな副作用がある薬でして、これは生活衛生課でつくっていただいた資料でも、「中でもリタリンの副作用として最も恐ろしいのは覚醒剤と同様な薬物中毒を引き起こすことです」と。だからこそ薬物乱用リストにも入っていますし、麻薬および向精神薬の取締法で輸入については厳格な規制がかかっているわけですけれども、このリタリンが最近ADHD、いわゆる注意欠陥多動性障害の子どもたちに対してかなり広く服用をされているという事実があると承知していますけれども、この点、保健所として認識をしていらっしゃいますでしょうか。
◎石神井保健相談所長 リタリンはアメリカではADHDの治療薬として幅広く使われております。日本ではまた保険適用になっておりません。ただ、ADHD患者の治療効果については、ある施設では70%という報告もございます。日本では保険外診療でADHD患者に対して使用されていると思います。
◆池尻成二委員 確かに実態としてはかなり広範に使われているわけですが、直接多動行動を抑えるという意味での効果があるということは、私もよく聞くのですけれども、一方では保険外ということで公に効能としてADHDでの処方が認められているわけでもないわけです。ここにリタリンをつくっている会社の効能書き書があるのですが、「適正使用のお願い」というのが3年前に出ていまして、その中でもともと薬物依存を生ずるおそれがあるので慎重に使っていただきたいと。「しかしながら、まことに残念なことに、本来は承認された効能、効果の範囲外に使用されたり、医療目的外に乱用される事例があります」として、その中で「注意欠陥多動性障害等のいわゆる小児の行動異常に対する本剤の使用は承認されている効能または効果の範囲外」であると。薬として当然かと思いますけれども、これは製薬会社自身がそういうふうに注意書きを出していらっしゃるわけですね。私はADHDのお子さんにこの薬が多用されつつあるということは非常に危惧していまして、1点はやはりこの薬の副作用、特に依存性も含めて副作用が非常に強いということについて、十分に周知をされていないということを私は強く感じています。これは、今後もう少し実態を把握しながらと思っているのです。
 もう1点は、やはり学校の問題があるというふうに思っています。発達障害者支援法が成立しまして、ADHDも含めて発達障害については教育的な支援ということで大きな課題となっているわけですけれども、残念ながら現場では十分な教育的な支援が得られない、あるいは学校関係者も含めて、時には周囲の無理解の中で多動を抑えるために薬に頼らざるを得ない、私はそういう空気がかなりあるように思います。
 この点、教育委員会に伺いたいのですけれども、このADHDに対するリタリンの服用、その課題なりリスクなりも含めて現場への周知というのでしょうか、どの程度おやりになっているか、あるいは課題として認識していただいているかどうかをお聞かせください。

◎庶務課長 ただいま、リタリンという薬についてご指摘があったことでございますけれども、教育委員会といたしましては、障害のあるすべての児童生徒あるいは保護者を対象として就学相談というのを行っております。就学相談の中で、当然その就学相談委員会のメンバーとして医師が入っているわけでございます。あるいは就学指導委員会というもう一つの組織もありますけれども、そこには精神科医の参加をいただいております。こういう就学相談の中で、親御さんの方から保護者の方から医師の方に相談があれば、それに対しては医師の適切な指導がされるだろうということで、基本的には就学相談の面接の中でお子さんの状態をお伺いし、あるいは服薬をしているかどうかというようなことをお伺いし、お一人ひとりのお子さんの状態に合わせて適切な学校における教育、支援ができるような、そういうような体制を教育委員会としてはとっているところでございます。
◆池尻成二委員 余りこれに時間はとれないですが、今の課長の答弁は非常に実はおかしいところがありまして、というのは、リタリンというのは6歳まで禁忌なのですね。つまり就学相談の段階で薬を使っている方は基本的にいないのですよ。就学してから薬を使う方が非常に多い。ですから、就学相談で対応しているということは、私は非常にご説明としては不十分かと思いますが、この件はまた引き続き取り上げていきたいと思います。

 質疑時間が限られる中で詰めは甘い質疑ですが、私の問題意識は基本的に出ていると思います。そして、このとき問うた事態は、いまだに決して改善されてはいない。
いや、むしろ厳しくなっているかもしれない。そう感じさせるテレビ報道でした。
 幼い子どもたちへの向精神薬投薬について、「精神科医療の早期介入問題」として問う活動も広がっているようです。機会があれば、お話を聞いてみたいものです。

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