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前収入役、外郭団体の理事長に

 6月に退任したばかりの前収入役が、区の外郭団体の一つで区立特別養護老人ホームなどを運営する社会福祉事業団の理事長に就任しました。事業団は、この人事に伴って、理事長職に対して新たに報酬を支給することとし、週1日の勤務に対して月額16万円という報酬規定を定めました。
 ほんの2ヶ月前とはいえ、すでに退職された方の人事です。外郭団体とはいえ、区からは独立した団体の人事です。それでも、あえてこの人事を問いたい、問わなければならないと私は思います。事業団は、なぜ区の最高幹部の一人だった人を理事長に招いたのか。前収入役は、ご自身のつい昨日までの仕事、権限、責任と深く関わっている団体のトップに着くことに、ためらいも、疑念も感じられなかったのか。そして、練馬区は、四役まで勤めた人の身の処し方について、考えるところ、口を挟むところはなかったのか。
 
 今、練馬区は「行政改革プラン」や「委託化・民営化」計画に基づいて、大規模かつ広範に、区の業務を民間にゆだねようとしています。業務委託や「指定管理」という形で、民間の事業者がさまざまな形で区の事業の担い手として名乗りを上げ、区の仕事を獲得しようと動いています。放っておけば、利権や癒着がいくらでも生まれかねない動きであり、だからこそ区も、委託などの手続きの「透明性・公正さ」を強く意識してきたのです。
 ところが、区の四役まで勤めた人が、退職した直後に、特定の事業者に、しかも最高責任者として“天下る”……ご本人の思いや事業団の意図がたとえどんなにやましいところなく、大義あるものであったとしても、人はそこに癒着の影を見、“政治力”や“区とのパイプ”に頼ろうとする事業団の底意を探ろうとするでしょう。そうした疑いを許すということだけでも致命的だからこそ、今、区だけでなく国を挙げて退職後の公務員の身の処し方について大きな議論をしているのではなかったでしょうか。
 それにしても、解せないのは社会福祉事業団の態度です。介護保険が始まって事業団も自立しなければならない、補助金もなくす、職員派遣もやめると区から突き放され、それでも歯を食いしばって、自分達の努力と自分たちの仕事ぶりをこそみてほしいと頑張ってきたはずなのに、なぜここに来て、区前収入役に頼らなければならないのでしょう?しかも、月額16万円という報酬は決して安いものではありません。事業団本部の人件費は、いうまでもなく、現場の努力の中から捻出されるもの。現場に対して血も汗もしぼるように求めてきた事業団本部が新たに有給の役員職を置くということは、それ自体とても重く、苦い選択であるはずです。

 前収入役は、退任にあたって区議会本会議でわざわざ発言の機会を求め、とくに区の財政管理に取り組まれたご苦労を披瀝された上で、区への思いを立派に語られました。それだけになおさら、区にとっての大局的な利害や節度をどこかで見失ったとしか思えない今回の人事はますます後味の悪いものであると、私は感じています。
 

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