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池尻成二事務所 〒178-0063 練馬区東大泉5-6-9 03-5933-0108 ikesan.office@gmail.com

はずれていたのは蓋(ふた)だけか?

 埼玉県ふじみ野市の市営プールで起こった事故は、事故ではなく事件、過失ではなく犯罪の様相すら示し始めています。実際の管理に当たっていた業者、入札して丸投げした業者、そして市営プールという自覚も責任感もとうの昔に失っていたのではないかと思われる市当局。誰が、ではなく、構造そのものが深く根を張りながら子どもたちの命を脅かしていたのは間違いありません。
 直接の原因は、給水口の蓋が適切に管理されず、はずれ、そして適切に対処されなかったことです。しかし、はずれたのは、蓋だけか。
 違う、と思います。「公(おおやけ)」としての節度やけじめに対する「たが」もまた、はずれてしまっていたのです。
 次々と広がる「委託」や「民営化」。当たり前のように自己目的化される「経費節減」。思慮もなく叫ばれる「民でできることは民で」のスローガン。抜け殻となった「公」の看板の陰で広がる、公共サービスの“液状化”。公務とはなんだったのか。公共とはなんだったのか。公(おおやけ)は何のために存在しているのか。深く反省することも、自戒することも、踏みとどまることもできないししようともしない流行りの風と惰性に、あの蓋は飛ばされてしまったのです。
 業者の管理の実態も、ふじみ野市の対応も、おそらくはあまりにお粗末なものであったとは言えるでしょう。しかし、どの自治体も、決して他人事では済まされないはずです。練馬区もまた、しかり。委託保育園の混乱、夕方以降、カウンター業務の委託会社の契約社員以外は一人の区職員もいないという図書館の危うさ、委託業者や委託施設に広がる死角…。胸に手を当てて、はっとしない、ヒヤッとしない管理職が、どのくらいいるでしょうか。あまりにかわいそうな少女の死。この事件に「他山の石」を見つけるためには、ちょっとした想像力と責任感があれば十分だ。そう思います。

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