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池尻成二事務所 〒178-0063 練馬区東大泉5-6-9 03-5933-0108 ikesan.office@gmail.com

「8月15日」

 昨日、8月15日。戦没者追悼式典での安倍首相のあいさつ、どう聞きましたか。
 誰の死を悼むのか、なぜ悼むのか、どう悼むのか? 安倍さんは、日本、いや「大日本帝国」のために“命を捧げた”人を、“国のために死んだ”ことをもって、命を差し出すことを迫った国の指導者の側から、悼んでいる。そこには、「国」によって死を強いられた内外の人たちの姿や痛苦の思いの影は薄く、歴史的にも道義的にも避けられたし避けるべきであった数々の死に対する首相としての自責の念や悔恨の情も、ない…。安倍さんって、あの敗戦と戦後の改革の中でこの国が引き受けてきた責任、そして国民がみずからの血肉としてきた価値観の転換を、受け入れていない人なんだな…。向こうは一国の宰相、こちらは一地方議会の一議員。比べるまでもないと言われればその通りですが、しかし、彼我の溝は限りなく深い。改めて感じます。

 その8月15日、私の事務所では“Cafe de いけさん”の3日目でした。事務所の夏休みを使って、少し気楽にお茶でも飲みながら、避暑を兼ねておしゃべりの時間を。そんな思い付きから生まれた企画でしたが、3日間で30人ほどの“お客さん”をお迎えし、盛況でなかなかのヒット企画になりました。店主の私も、おもてなしもそこそこに話の輪に加えてもらいました。
 3日ともDVDを上映したのですが、昨日はNHKで放映された「日本国憲法 誕生」を観ました。憲法9条と天皇制の取り扱いが複雑に絡み合いながら憲法草案が出来上がっていくプロセスはとても興味深いものでしたが、そのなかで当時の内閣法制局の幹部が登場します。法制局といえば、今、長官人事が大きな話題となっていますが、当時の法制局が「憲法改正草案に関する想定問答」と「憲法改正草案逐条説明」という資料を作成しています。私自身、その詳しい内容を見る機会も持てないでいるのですが、岩田行雄さんという方がその一部を紹介してくださっています。9条に関する「逐条説明」の部分を転載させて頂きます。読んでみて、新鮮な感慨に駆られます。あの時こう語った法制局のトップに、今や「集団的自衛権」まで合憲とする人が着こうとしている。そのことの重みを教えてくれるものでもあります。

     ●参照元はこちら➡岩田行雄の憲法便り・日刊憲法新聞

昭和二十一年五月
『憲法改正草案逐条説明』(第一輯の二) 法制局

第二章 戰爭の抛棄


第九條
 我國が、今後民主主義と共に平和主義を以って國是とすることは、前文に於て強く宣言せられて居る所であります。本章は戰爭の抛棄と題して僅か一ヶ條でありますが、力強くこの國是を闡明(せんめい)したものであり、新憲法の最も著しい特徴の一をなすものであります。これにより今後我國はいかなる場合と雖(いえど)も、主権の発動として國際紛爭の解決手段として戰爭、武力の行使に訴えないことを宣言したのであります。
 この様に本條第一項は、國の主権の発動たる戦争と武力の行使とも全面的に禁止したのでありますが、第二項は第一項の実行せられることを二つの面から保障した規定であります。
即ち第二項は前段は陸海空軍その他の戰力は、これを保持してはならないと定めまして、事実上戰爭を不可能ならしめると云う面からこれを保障したものであります。(國内の治安維持のために必要な武力に関する例外規定をも設けて居ないことも亦(また)、この趣旨を徹底したものと言うべきであります。)
次に第二項後段は、法律上戰爭を不能ならしめるという面から第一項の実効を保障したのでありまして、國の交戰権はこれを認めないと云うことを定めたものであります。即ちこれにより我國が事実上他國との間に交戰状態に入ったとしても、國際法上に於ける交戰者たる地位を憲法上認められないことになるのであります。
本條が第二項に於てこの様に二つの面から思い切った保障を設ける事実上いかなる戰爭をも不可能ならしめたと云う点に本條の劃期的な意義が存すると云ふことが出来ます。即ち國策の是としての戰爭の抛棄に関しては夙(つと)に不戰條約の定める所であり、又憲法としても一七九一年のフランス憲法や一九三一年のスペイン憲法に於て同種の規定が見られるのでありますが、それは何れも自衛権の濫用(らんよう)の余地を残し、且ついかなる戰爭も不能ならしめるための保障を欠いて居たのであります。
しかるに我が國は今次敗戰の齎した破局に深く鑑みる所あり、いかなる戰爭をも発生せしめぬという固き決意に立ち、前文に示されて居る様に、我國の安全と生存とをあげて平和を愛する世界の諸國民の公正と信義とに委ねると云う謂はば捨身の体勢に立ったのであります。
これが即ち本條に示された徹底せる平和主義の根本精神とする所でありますが、我が國としては世界各國が将来何時の日か、我國の態度に追随し来たることを期待し、平和國家の先頭に立つことを誇りとするものであります。

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