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自治基本条例(その7) ~住民投票~

 ずいぶんと間が空いてしまいましたが、練馬区の「自治基本条例」ならぬ「区政推進基本条例」の骨子案を読むシリーズの最後です。
 骨子案では、「区民投票」が正式に位置づけられました。こんな規定です。

9 区民投票
① 区長は、区の存立に係ることなど区に重大な影響を及ぼす事項に関し、事案ごとに、別に条例で定めるところにより、区民投票を実施することができる。
② 投票に付すべき事項、投票の手続、投票の資格要件その他区民投票の実施に関し必要な事項は、別の条例で定める。

 区民(住民)投票を条例上に位置付けたということ自体が貴重だと誰か言うでしょうか。しかし、中身を見ると、本当に条例に書いてよかったんだろうか?と真剣に悩む内容です。何よりこの骨子案たと、区民投票ができるのは「区の存立に係ることなど」でしかありません。区の存立というのは、例えば区が合併するとかなくなるとか、そうしたことです。骨子案が区民投票を認めるのは、「区」に重大な影響を及ぼすことであって、「区民の権利」や「区民の生活」に重大な影響を及ぼすこと、ではないのです。
 これは、区民投票やそれを発議・提案する区長の権限・責任を定義し補強したものとはとうてい読めません。むしろ、区民投票を実施できる場合をきわめてせまく制限するものです。もともと、区長は区民投票も含めた条例提案権を法律上、持っています。わざわざ条例に書かなくても、また、必ずしも「存立に係ること」でなくても、議会の同意さえあれば「区民投票を実施できる」からです。こんな条文を置いたら、あれこれの重大政策に関する住民投票を区長が発議しようとすれば、それだけで「区政推進条例」違反に問われかねません。
 区民投票を条例上で位置付けるのであれば、その意義や投票結果を尊重する区長の責務を置くとか、区民投票の手続きや方法をとくに定めるとか、そうしたことをこそ書くべきです。あるいは、かくかくしかじかの場合は区民投票を実施しなければならない、「できる」ではなく「すべき」と言うべきです。そうでなければ、わざわざ条例で区民投票の項を起こす意味はないでしょう。区民投票のような直接民主主義的な手法に対する反感、無理解が透けて見えるような骨子案です。ここもやっぱり、要訂正、です。

 「区政推進条例」骨子案は、名称も、個々の条文も、全体として区政をどこへ、どのように「推進」していこうとしているのかさっぱり伝わらないものになってしまっています。「自治」を遠ざけ、見ないようにしようという姿勢がそうしてしまったのでしょうか。さびしいかぎりです。練馬区と練馬区民はこの程度の自治意識しかなかったのかと、言われてしまいそうです。このままでよいのでしょうか…。
 明日の特別委員会では、「区政推進基本条例」の素案が示される予定です。(シリーズ完)

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