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減ったのか。減ったと見せたのか? ~保育所「待機児童」問題~

2015年4月には待機児童をゼロにする――この「公約」が果たされなかったことは、間違いのない事実です。それが避けられない結果だったのか、そうでないのかは大いに議論があるところです。これはまた、あらためて。
とまれ、大幅な定員増の結果、待機児童数は487人から176人に減少した。区はこう説明しています。しかし、ここにはいくつものごまかしがあります。本当に減ったのではなく、減ったように見せるごまかしです。
昨年の表の一番上の欄を見ると、「認可保育所へ入れなかった者」とあります。1,073人です。この数字が、かつて「待機児童」の数として扱われていたもの(「旧定義」の数)です。その後、2003年に厚生労働省は待機児童の「定義」を大きく変えました。つまり、
①保育室や保育ママ、認証保育所など国や都の補助を受けている事業の利用者
②利用時間や施設までの距離が希望しているところと大差ない認可保育所があるのに、そこに入らなかった利用者

は待機児童に含まなくてよいということにしたのです。

     ➡待機児童の定義については、こちら(保育園「待機児」の定義って…?)

この「定義」変更で、待機児童は見かけ上、大きく減りました。たとえば昨年度の待機児童数487人はこの「新定義」の数です。最初に出てくる1,073人が「旧定義」の数ですから、半分以下になります。今年4月の数字では、756人に対して375人、やはり半分以下です。
やっぱり(認可)保育所がいい。そう考える親はたくさんいます。保育環境、上の子との関係、保育時間…認証保育所になると保育料負担が全然違いますから、ますますそうなります。ところが、認可保育所に入れずその他の保育サービスを利用すると、その時点で「待機」から外される、つまり保育ニーズから消えてしまうのです。旧定義から新定義への変更は、それ自体、大きな批判を免れることはできませんでした。

ところが今年、厚生労働省はさらに定義を変えてしまいました。いわば「新・新定義」です。大きく変わった点は次の二つです。
①新定義の①について、認可保育所だけでなく認証保育所も含めその他の保育サービスの空きがある場合も待機児童として数えなくとよいこととした
②保育所等に入所できず育児休業を延長した場合も、待機児童に数えなくてよいこととした

例えば、近くに認証保育所は空いているけれど費用負担が大変だから預けられないといった場合も、今年度からは待機児童ではなくなってしまいます。あるいは、職場復帰を考えて保育所を申し込んだけれど空きがなく、結局、育児休業を延長するしかなかったという場合も、待機児童としては認められなくなりました。どう考えても、保育に対するニーズは確実にある人たちです。保育基盤が追い付かなかったから、泣いている人たちです。どうしてこの人たちを、待機から外せるのか。理解できません。
この「新・新定義」で数えた待機児童数が、176人です。「新定義」375人は、さらに半分以下に減りました。いやいや、減ったように見えることになりました。区は、この「新・新定義」をこれからは使っていくと言っています。姑息です。

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