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基本構想と長期計画

 区の新しい基本構想と長期計画の「素案」が公表されました。基本構想は、「その地域における総合的かつ計画的な行政の運営を図るため」(地方自治法)に定めることが義務付けられており、議会の議決が必要です。一方、長期計画は、その名の通り「長期」にわたる行政計画で、一般的には様々な行政計画の上位に立つ基本計画、総合計画として位置づけられます。長期計画は、当然、基本構想を踏まえ、その実現を目的としたものでなければなりません。
 練馬区には、今も基本構想がありますが、制定からすでに30年経っています。30年の間に、この基本構想は、顧みられることが年々少なくなり、事実上、反古同然の扱いを受けてきました。そのこと自身、私には大変不本意なのですが、ともかく、いまや時代の課題・要請に対応できていないということで、基本構想の30年ぶりの改定が動き出したのです。
 他方、長期計画は、かつては10年を単位として作られてきたのですが、現在の志村区長になって、初めて5年の長期計画(2006-2010)が策定されました。5年で「長期」と呼べるのかという議論もあったし、10年単位の分野別の行政計画がさまざまに出てきている中で、私もそう思ったものです。しかし、「経済情勢が激動する現在では、財政推計は5年が限度」(長期計画策定方針2004.11.18)という理由で、こうなりました。今回の新しい長期計画も、計画期間は5年です。もっとも、財政推計はとうとう3年単位になってしまって、ではなぜ5年計画なのか、推計期間と一致しなくてよいのなら、「基本構想」と合わせて10年でもいいのでは? などとも思ってしまいますが、それはともかく、基本構想と長期計画を同時に改定・策定することになり、練馬区の行政の在り方としては大きな節目を迎えることは間違いありません。

 で、「素案」です。細かいことまで言い出せば、言いたいことは無数に出てきます。ただ、基本的なところで、強い違和感を感じたことが二つあります。
 ひとつは、時代の危機感、区民が抱える閉塞感や不安感がなかなか伝わってこないということです。<人とみどりが輝く創造都市・ふるさと都市>というのがふたつの「素案」を貫くテーマなのですが、どうも違う…もちろん、輝きたいし輝いてほしい。もちろん、創造的でありたいし、あるいはふるさととして根を張りたい練馬であってほしい。しかし、そうした思いも、一人ひとりの暮らしが抱えている困難や多かれ少なかれ誰もが感じている生きにくさと正面から向かい合うことがなければ、ただの気休めや上滑りのイメージに終わりかねません。そして、まさにこの「向かい合い方」が見えてこないのです。
 もうひとつは、練馬区--行政エリアあるいは圏域としてのそれではなく、行政組織としての練馬区が何をやろうとしているのか、どんな役割を果たそうとしているのかがよく見えません。「区政経営の基本姿勢」という項には、①区民主体、地域コミュニティ重視、②区民と区との協働、③持続可能な区政経営とあるだけ。「区民主体」も「協働」もよいけれど、ではいったい「区」は何をするのか。コミュニティや「協働」の中で、区の果たすべき役割、負うべき責任は何なのか。そこが、わからない…。
 「公(おおやけ)」の復権・再生、「公」の力による社会の底支え抜きに、この疲弊した社会状況を乗り越えられるとは、私には思えません。いや、実は、現在の社会的困難の少なくない部分は、この間の政治、練馬区政も含めた政治がみずから呼び寄せ広げてきたものでさえあります。そうだとすれば、真摯な総括と反省から、私たちはスタートすべきではないのか。でも、基本構想も長期計画も、この点はとってもあいまいなのです。

 一読しての印象です。もっと奥が深いのかもしれないし、よくよく吟味してみようとは思います。しかし、「ちょっと違う…」、この印象はぬぐい難いものがあります。

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