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区長会の“闇” ~消える「宝くじ交付金」~

 前の記事で、「旅行に行った人たちは自ら説明を拒み続けています」と書きました。そうなのです。区長会は、私が事業報告や収支の詳細を示す資料の提供を求めたのに対して、拒否したのです。
 なぜ拒否したのでしょう。いやいや、なぜ拒否できるのでしょう?
 区長は各区のトップとして「地方公共団体を統轄し、これを代表する」、「地方公共団体の事務を管理し及びこれを執行する」と定められています(地方自治法)。区長がこうした公的な立場で行う行為に関することなら、すべて各区の情報公開や監査の請求の対象となります。しかし、「日中友好交流事業」を実施したのは、区長でははなく「区長会」です。そして、区長会とはあくまで区長たちが作る「任意団体」であり、したがって、法や各区の条例に基づいて情報公開や監査を求めることもできない…こういう仕組みなのです。
 しかし、もし区長会が法や条例に基づかない「任意団体」でしかないなら、なぜ区長会は都からの公金を受け取り、自分たちで使ってしまうことが許されるのでしょうか?

 「日中友好交流事業」は、財団法人・区市町村振興協会からの補助金で実施されています。そして、この補助金は、東京都からの市町村振興宝くじ交付金を原資としています。昨年10月22日のこのブログで書いたように、宝くじは「地方財政資金の調達」を目的として発売され、その収益金は「地方財政の自主財源」に充当されるべきものです。だからこそ東京都が収益金を一元的に管理し、きちんと予算の中で処理をし、そして「市町村振興宝くじ交付金」として交付されることになるのです。

     ➠2012.1.22 「宝くじ」と区長会

 東京都の市町村振興宝くじ交付金交付要綱には、こうあります。

第2条
 交付金は、区市町村における災害対策事業及び緊急な公共施設整備事業等を推進するために、区市町村共通の財源を確保する目的をもって東京都における市町村振興宝くじの収益金を交付するものである。

 「区市町村共通の財源を確保する」――それが、交付金の目的です。それがなぜ、各区の財政に入らないで、任意団体でしかない区長会の、それも中身も経理も不透明な旅行に消えてしまうのでしょうか?
 今年度の東京都予算では、宝くじ収益金は500億円を超え、そのうち23区や市町村に配分される市町村振興宝くじ交付金の額は約68億円。その一部が、実際には各区や各市町村にわたることなく、区長会等で使われてしまっています。「日中友好交流事業」はその象徴というべきものですが、それ以外にも、たとえばオリンピック招致事業として区長会が2012年度受け取った5億円のうち半分以上、2.7億円が民間のNPOである招致委員会に流れています。「地方財政資金」になるはずのものが、です。
 区長会の「日中友好交流事業」は、事業そのものの意味、多額の公費の支出のあり方いずれの面からも大いに問題のあるものですが、同時にそれは「区長会」を被う大きな“闇”を垣間見せてくれてもいます。区長会のあり方を問う。監査請求には、こんな思いも込めています。監査請求書の最後に、私はこう書きました。東京都監査委員の見識に、期待します。

 繰り返し指摘してきたとおり、当該事業の原資となったのは協会からの補助金であり、さらにこの補助金は東京都からの交付金を財源としている。東京都の宝くじ交付金の総額は500億円を超えている。各自治体の財政が厳しさを増す折、地方財政資金の調達、市町村共通の財源確保を趣旨としたこの交付金はきわめて貴重な財源の一つとなっている。この交付金はまた、都が管理し支出する公金である。そして、公金として支出され、地方財政資金の一部として管理されるべきものである以上、それにふさわしい支出の透明性と公正さが求められる。
 監査請求人は、1979年に当時の東京都知事が中国・北京市の責任者と取り交わした「友好都市関係の結成に関する議定書」ならびにそれ以来30年に及ぶ日中交流の積み重ねの努力そのものを否定するものではない。むしろ、日中関係がさまざまな課題と困難に直面している現在こそ、地に足のついた、豊かな交流事業の必要性はいよいよ重要なものとなっていると考える。しかし、各区をはじめとした自治体間の交流として、公費を用いて実施される以上、事業にはそれにふさわしいあり方、透明で公正な執行が強く求められていることもまた、明らかである。むしろ、適正な手続きと会計処理に基づき、都民・区民に開かれた事業として取り組むことこそが、今後の日中間の市民レベル、自治体レベルの交流の成否を握ると考える。こうした立場から監査を求めるものであり、監査委員の厳正な判断を期待するものである。

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